ドリーム小説
私には好きな人がいます。
最初の印象はすまし顔がちょっと気に入らなくて、同時に皮肉めいた言動にも腹がたった。
でも過ごす時間が何故か多くて、良く一緒に遊んだりしているうちに好きになっていたのだね。

最近の私は少し…と言うかかなり苛々が溜まっているのでどうにかしたいのですよ。
そう、好きな人に対してさ。

、行きます!





その日はとても天気が良いとは言えなかった。
今にも雨が降りそうな空。
どんよりした雲が広がっている。

はそんな天気を背にして廊下を歩いていた。
朝から、と言うか以前から考えていた事を決行しようとしていたから表情が硬い。
でも空を眺めるとやっぱ止めようかなと言う気持ちにはなる。

(止めたら多分…また悩むだろうしなぁ…)

こう言うのは勢いだろうって思っている。
そりゃ雰囲気なども大事だろうが、今のには雰囲気よりも勢いを重視したいのだ。

「おーっす、

そんなに声をかけたのが甘寧だ。
は思わず息を吐いた。

「あん?なんだ、

「いや、ちょっと甘寧で安心したから」

甘寧に会ったから残念だと言うのではなく、甘寧で良かったと言うべきなのだ。

「なんだそりゃ」

「あーわからなくていいの。とりあえず、おはよ、甘寧」

「おう」

少し眉を顰めた甘寧だったがすぐにいつもの顔に戻る。

「ね、甘寧。今日の私を見てどう思う?」

「は?なんだよ、いきなり…今日のお前って別にどこもかわらねーぞ」

「本当?顔とか変じゃない?髪とか服装とか」

「いや、別に」

甘寧に詰め寄る
甘寧は数歩後ろに下がってしまう。

「…ならば良し!」

にこーっと笑う

「意味わからねーよ」

「わからなくて結構!よし、やるぞ!」

一人で気合を入れているに唖然とする甘寧。
でも、少ししてからなんとなくわかった様子。

「そっか、じゃあ頑張れ」

の頭を一撫でして甘寧は去っていく。
その後姿を見ては甘寧に小さくありがとうと礼を言った。



***



目的のために進むだが、全くその目当ての人に会わない。
他の人には普通に会えるのだが。
まさか今日は休みで出仕していないとか?

「え?いいえ、来てますよ。僕は先ほど会いましたし」

「えー嘘、私全然会わないよ」

陸遜にも甘寧に聞いたのと同じことを言った。
そしたら彼は笑顔で

「うん、は可愛いよ」

などと照れもせずに言った。
その後に今の話だったのだが。

「あ、でも。用事があるならば早めにした方が良いよ」

「なんで?」

「明日からいないから」

「へ…」

これは焦る。
明日からしばらく会えない。
なんでも戦が近いうちに起きそうだと。
相手が曹魏だか蜀漢だかどことは知らないが。

は走る。
さっきまではのんびり歩いて探していたが。

鍛錬所。
庭園。
執務室。
いつも一緒にいそうな人たちの執務室。
休憩所。
食堂。

どこに行っても見つからない。
会えない。
屋敷に行くべきか?
でも城には来ていると言う。

じゃあ書庫か!

そう思って言ってみるも、いたのは呂蒙だった。

「どうした、殿」

は陸遜から聞いたことを呂蒙にも聞いた。

「あぁ、回避できれば良いのだがな、向こうが兵を進めて陣を引いているそうだ」

だから、こちらも兵を出すのだ。

「あぁ、あいつには甘寧と一緒に先発隊として出てもらうことになったからな」

それがどうかしたかと訊ねられてもはなんでもないと首を横に振った。

「…あと、行ってない場所は厩舎と武器庫と…」

残りいくつかをあげて探すもやっぱり見つからなくて。
時間だけはどんどん過ぎる。
そして空は暗くなり雨が降り出した。

「今日は駄目なのかな…」

降ってくる雨を見ながらは呟く。



***



日も暮れた。
でも雨の所為で一層暗くなっただけ。
いつもみたいなオレンジ色の夕日は見えない。

探しても探しても見つからなかった。
会えなかった。
そして明日になったら行ってしまうんだ。

がしようと思っていたこと。
いつも軽口言い合っているあの人に思いッきって告白してしまうこと。
別にいつでもいいし、しなくても良いことだ。
告白した所で伝わるのも受け入れられる確率なんて低いに決まっている。

振られて次の日から辛いとかそんなことは考えないでいる。
その時はその時だ。
今までの関係が壊れようが、今言わねばと言う気持ちが強かった。

だから、なぜ?
そうは思うが、見ているのが嫌だったから。
ここの城には綺麗な可愛い姫様や女性兵士さんに女官さんたちが大勢いる。
たまに仲の良さそうな姿を見て、いつもからかわれっぱなしの自分とは違うなって嫉妬してしまう。
もうそんな自分は単に醜くなっていくだけだから。

だから。
もう苛々やモヤモヤを解放したかった。

失敗なんてどうでもいいのだ。

でも当分お預けになりそうで。
当分この気持ちは晴れそうになくて。

………。

「まだ時間はある!最後まで諦めるな、私!」

は拳を握る。
部屋を飛び出し、探しに走る。
完全に日は沈んだのだろう、もう廊下には明かりが灯されている。

もう屋敷に帰ってしまったかもしれない。
だったら追いかけるまでだ。

だけど、ここに来て運が回ってきた。
いたのだ。
前方を歩いている。
は止まることなく突っ込むと言うのが正しいかもしれない、目的に向かってさらに足を速める。

「凌統君!」

「え?おわっ!」

は勢い良く凌統の背中に抱きついた…いやぶつかった。

「い、痛い…」

…それはこっちの台詞だっての…なに、いったい…」

は鼻を摩り、凌統は背中を摩っている。

「あ、あのね、凌統君」

「ん?」

先ほどまでは言うぞ、言うぞと気合を込めていたのに。
いざ本人を目の前にすると中々言えない。

「き、今日一日何してたのよ!探したのに見つからないし」

違う言葉が出てきた。
むしろ文句に近い。

「何してたって、別に?いつもと変わらないけど?」

「嘘。私すっごい探したのに」

「なんで?俺に用事?」

「…よ、用事と言えば、用事なんだけど…」

「じゃその用事聞こうか。何?」

何と言われてすぐには言葉が出ない。
うん、じゃあ言うね、私は凌統君が好きです。…なんて言えるわけがない。

は唇を噛む。
凌統は早くしろと言わんばかりの目で見る。

「………」

、何?」

「………」

勢いだって思ったじゃないか。
結果なんてどうでもいいと。
とりあえずは、自分を変えるんだって。

「あ、あのね」

「ん?」

「…私は凌統君が好きなの!…それだけ!」

はそれだけ言うと走って逃げた。
取り残された凌統。

「え…それだけって…なんだよ…俺の返事はどうでもいいわけ?」

一日それを言うために自分を探しまわったらしいに凌統は軽く笑んでしまう。
それにさっきの顔。
顔中真っ赤で、少し泣きそうで。
いつも気が強めなはどこに行ったと。

「明日から俺いないんだけどねぇ…言い逃げ?まったく…」

凌統は後頭部を掻く。

「まっ、しょうがないか。帰ってからゆっくり聞かせるのも良いでしょ」

明日早いからきっとには会えないだろうし。
さっさと面倒な戦を終わらせて返事してやろうじゃないの。

続きは戦が終わったら。





さっきまで振って雨はいつの間にか止んでいた。
雲の隙間から月の光が照らし出されていた。

の中では月を見ながら気持ちがすっきりしたと思っていたが。
振られもしないで逃げてしまったのだから、少しだけしこりが残る。

「明日、もう一回会えるかな?」

せめて笑って見送りたいものだ。








一体、彼は何をしていたのだろうね?
05/10/21
13/03/12再UP