春の萌し。




ドリーム小説
「見ているだけじゃ始まらないよ?」





は突然背後から声をかけられ驚いた。
声を出さないように口を手で抑えて。

「よ、頼子さま!脅かさないで下さいよ」

「ごめん〜だってねぇ、ってばぼけ〜っと突っ立てるだもん」

確かにと、は首をすくめてしまう。

頼子は孫家の客人と当初、に紹介された。
は頼子の世話係なのだが、頼子の人懐っこい性格の所為か、自然と仲良くなり、頼子の身の上話を聞いた。

頼子は名前の通り、この国人間ではない。
倭国から来たのだが、異世界の倭国らしい。
しかも戻る方法はわからない。

だが、頼子は落ち込むことなく毎日笑って過ごしている。

いつも元気な頼子がは好きだった。

さて、話を戻そう。

、じーっと見ているくらいなら話しかけてくれば?アイツにさ」

そう言って頼子はアイツと呼ばれた方を指差す。

「頼子さま!別に私は〜」

「どこがいいのかな?あの単純男の」

「単純だなんて、酷いです、頼子さま!根が素直で真っ直ぐな方なんです!」

「そう言う言い方もあるよね」

「あ!その…私は」

「そんな彼が好きなんですって感じかな?

「い、いえ、私は別に…あの」

顔を真っ赤にさせるに頼子は笑う。

可愛い〜」

頼子はにぎゅうっと抱きつく。

「頼子さま〜」

困ったような、けれど嬉しくてくすぐったいような。そんな感じ。
頼子と一緒にいると楽しいのだ。

そんな様子をじっと見ているものが一人。が見ていたアイツである。

「なにやってんだ?お前」

「甘寧」

呆れているのか、その視線は痛い。
しかし頼子はふふんと口の端を上げる。

「羨ましいのかな、甘寧ってば」

「ば、バカ言ってんじゃねーよ」

「顔赤いよ、甘寧」

「ちげーよ」

ぷいっと視線を逸らす甘寧。
頼子は楽しそうに笑っている。

(お二人とも仲が良いのね)

も小さく笑う。
甘寧はの微笑とでも言うのか、その笑顔に見とれてしまう。

「くっ…あ、あははははは!」

「「!?」」

突然笑い出す頼子に驚く二人。
頼子はから離れ、腹を抱えて笑い続ける。

「お、お腹いた〜い〜あはははは」

「よ、頼子さま?」

「頼子、どうしたお前?変なもん食ったのか?」

しかし、頼子の笑いは止まらず、終いには涙まで流している。

「ひぃ〜な、なんか…アンタら最高」

「「はぁ?」」

頼子は一頻り笑った後、びしっと二人に指を指す。

「言ったでしょ?見ているだけじゃ始まらないって。ってなわけで邪魔者は退散します」

頼子は手を振って行ってしまう。
だが、すぐに曲がった廊下から二人の様子を伺う。

(だって、二人ともお互いを見てるだけなんだもんねぇ)

残された二人は顔を真っ赤にさせて突っ立ってる。

「あ、あのよ…」

「は、はい…」



「はい、甘寧様」

「ひ、暇なら散歩でもしねぇか?」

「はい、喜んで」

二人並んで歩き出す。

「…今時の中坊だってもっと進んでるっての…」

ひたすら顔を紅くしている二人に頼子はため息をつく。

「ま、いっか。幸せそうだからね」

頼子も自然と笑顔になる。

(ゆっくり、歩いていってよ、お二人さん♪)


麗らかな春の始まりだった。








03/01/18
13/03/09再UP