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伝えたい気持ち
「私、趙雲さんが好きなんです!これ受け取ってください!」 「あはは、ご冗談でしょ?」 「うっそーーーーー!!」 ハッと目が覚めた。 趙雲に振られる夢を見て心臓がバクバク言っている。 時計を見ると、朝の5時。 「朝見る夢は…正夢?うえぇ…最悪かも」 再び枕に顔を埋める。 かなりショックらしい。 「どうしようかなぁ…チョコレート」 二月十四日はバレンタイン。 三国時代には関係ないのだが、は自分の住む世界と、三国時代を行き来する事ができる。 あ、が言う蜀への入り口はの部屋にある。 まぁ、どんなものかと言うならば、どこぞのネコ型ロボットが机から出入りするような簡単なものだと思って欲しい。 なので、世間一般ではバレンタインで盛り上がっている。 友人たちの会話もそればっかり。 手作りに挑戦するだの、あそこの店のチョコがいいだの。 そんなことばっかり。 「は誰かにあげるの?」 「え?まぁ…あげたい人はいるけど」 「誰?誰?4組の渋沢君?8組の三上君かな?あー1組の手塚君とか!」 「え?違うよ…と、年上の人かな?」 嘘は言っていないものの、曖昧な答えしか出てこない。 確かに年上だが、相手はそんなイベントなど知らないのである。 「も頑張って渡すのよ!」 「う、うん。頑張るね」 乾いた笑いを浮かべる。 それから、現在に至ると。 今日は火曜日だけど、祝日で学校が休みなため、蜀へと訪れてみる。 出迎えてくれたのは、の好きな人。 趙雲。 「こんにちは、殿。今日は高校とやらはお休みなのですか?」 「う、うん…休みなんです…休み…」 「どうかしましたか?」 趙雲はの態度に首を傾げる。 「な、なんでもないですよ」 慌てて笑顔を作る。 正直、あの夢が気になって仕方ないのだ。 (くぅ〜せっかく趙雲さんが心配してくれてるのにぃ) 「ご気分が優れないなら、何か薬でも用意しましょうか?」 「い、いえ、元気ですよ。大丈夫です」 「そうですか、あなたが元気ないと心配してしまいますよ」 安堵のため息を吐く趙雲。 その笑顔がとても素敵で、の心臓はドキドキしてしまう。 (趙雲さんから見れば、子どもだろうし…妹みたいなものかな?やっぱり) そうは思ってため息を吐くのだった。 結局、この日はあまり長く居ることなく、は帰ったのだった。 *** 十四日 当日。 この日は学校はもちろん平日である。 チョコを渡すとしても、家に帰ってからで夕方になってしまう。 期末試験の前なので、学校をサボるわけにいかないので、我慢して待つ。 は誰でも簡単に出来るからと、パヴェ・ド・ショコラに挑戦してみた。 ラッピングもちゃんとして、それだけじゃなくて指編みで肩掛けも作った。 男性にショール・肩掛けとは似合わないかとも思ったが、 趙雲が夜遅くまで執務室で仕事をしていることがあると、以前馬超から聞いた。 だから、風邪を引かないようにと思ったのだ。 ちなみに、棒編みでなくて、指編みなのはが編み物に関しては素人でやったことがなかったからだ。 それで友だちに教わりながら作ったのである。 「、ショールできた?」 「うん、できた」 「チョコは?」 「作った」 「じゃあ…」 「うん、渡すの」 「頑張れ!」 「おう!」 友だちの声援を背に受け学校を出る。 強気に行こう!とは決めるが、家に近づくにつれ、蜀への入り口へ近づくにつれ足取りが重くなる。 「…やばい…夢の通りになったら…」 扉を開けば、蜀へはあっという間に行けてしまう。 でも足が動かない。 「振られたら、きっと趙雲さん気を使うよね…あの人優しいから…」 嫌われたくない、今のままでも十分。 そう思う。 別にバレンタインだからと言って無理に告白はしなくてもいい。 元々、あの時代には関係のないイベントなのだから。 でも…。 自分が用意した贈り物を見て…。 「せめて渡すだけでもいいよね。せっかく頑張ったんだし」 は扉を開け、蜀へと向った。 あれこれ、悩んでいたので、辺りは真っ暗である。 ほとんどの人が屋敷へと戻っているのだろう。 今ここにいるのは最小限の兵士たちのみだ。 「…どうしようかな…」 これには困った。 は趙雲の私邸が何処にあるのか知らないのだ。 基本的にいつも、城で遊んでいたのだから。 たまに城下へ行ったとしても一人ではなく誰かと一緒なのだ。 腕時計を見ると、すでに10時過ぎ。 これは流石に誰かに尋ねると言う時間ではない。 運良く教えてもらったところで、この時間に訪ねるわけには行かない。 二月の風は冷たく段々との体温を奪っていく。 「せめて、今日中に渡したかったけど…自分が悩んでいたのが悪いんだよね…」 はぁっと冷たくなった手に息を吹きかける。 ふと、ちらちらと目に付く白いもの。 「げっ、雪だぁ…これはやばいかも」 このまま外に居れば、凍死してしまう。 急がなくてはと考える。 「そうだ、執務室にでも置いていこうかな…あ、でもこの時間に入れてくれないだろうな。城内には」 もう、完璧に道は断たれたと言った感じである。 仕方ないので、帰ることにした。 「うじうじしてた、自分が悪いんだけどさ…」 来た道を戻ろうとする。 すると…。 「殿!」 趙雲が息を弾ませ走ってくるではないか。 趙雲の姿を見た時、は力が抜けてしまう。 「何してるんですか!こんな遅くに」 「なんで居るんですか?趙雲さん」 答えになっていない。 明らかに趙雲は怒っているようである。 「女性が遅くにふらふらする時間ではありませんよ」 「………」 「上から、貴女の姿を見た時、驚きましたよ。風邪でも引いたらどうするのですか」 ふと腕時計に目をやると、時刻は11時39分。 1時間以上も外に居たことになる。 「いったい何をしていたのですか!」 「間に合ったぁ〜」 趙雲の説教など聞いておらず、は安堵する。 趙雲はそんなに脱力してしまう。 「殿?」 「あ、あはは。ごめんなさい、あの趙雲さんこれ」 「なんですか?」 は趙雲に綺麗にラッピングされた袋を渡す。 趙雲は不思議そうにそれを見ている。 「今日は私のトコではバレンタインって言って…好きな人にチョコを渡す日なんです」 「好きな人…ですか?」 はそう言ったものの、夢のように振られたくなかったから慌てて義理チョコの説明をしようとした。 どうせなら義理チョコでもいいやと。 趙雲に嫌われたくないから、気持ちを隠してしまおうと。 「で、でもね、本命以外にも義理チョコってのがあって、え!」 が言い終わらないうちに趙雲はを抱きしめた。 「こんなに冷たくなって何してるんですか」 「え、えっと」 「雪まで降ってるのに」 「そ、そうですね」 「ありがとうございます。嬉しいです」 「え…ちょ、趙雲さん?」 は趙雲の腕の中に居るので、趙雲の顔が見えない。 「私流に解釈してもいいってことですよね?殿」 「…はい」 「せめて私から言わせてください」 趙雲は一旦、を放す。 そして真っ直ぐに見て。 「貴女が好きです。殿」 そう、の一番好きな笑顔で言った。 は趙雲からの告白に嬉しさがこみ上げてくる。 と同時に、今まで平気だったのに急に身体が震えてきた。 緊張が一気に解けてしまったらしい。 「殿、大丈夫ですか!?」 「う、うん。なんか嬉しいのと安心したのが急に…」 「さ、温かいものでも用意しますよ」 趙雲は明かりの点いた一角、趙雲の執務室へとを連れて行った。 そこで温かいお茶をもらい、二人でが作ったチョコを食べた。 「甘いですね。でも美味しいですよ」 は笑顔の趙雲見て自分も笑顔になるのだった。 趙雲は趙雲なりに先日のに元気がないのを気にしていたらしい。 そして、書簡を整理していたら、こんな時間になってしまい、ふと外を見たらが立っているので急いで降りてきたのだ。 「あまり心配させないで下さいよ」 「はい」 「元気に笑う貴女が好きなんですから、殿」 アンケからのバレンタイン夢でした。
03/02/14
13/03/09再UP
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