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ホントノキモチ
「あ〜早く帰ってこないかなぁ〜」 皆でお茶を飲んでいる時に、がポツリと呟いた。 「、どうしたの?」 大喬が心配そうに覗き込む。 「え、なに?」 「あはは、でかい独り言だね、ってば」 小喬が笑う。 は自分が口に出していた事に気づいていないようだった。 「早く帰ってこないかなって言ってたけど?それって、討伐隊の事?」 「え!あ、あははは。いやぁ〜そのねぇ〜」 は鼻を掻く。 「えっとぉ〜今回の討伐隊には孫権様と呂蒙さんが行ってるんだよね」 ね?と小喬が大喬に訊ね、大喬は頷く。 「あ、あと。周泰さん!」 話をそらそうと思っていた時に、その名を言われての頬が少しだけ赤く染まった。 それを見逃さなかった小喬。 「へぇ〜周泰さんの帰りを待ってるんだ、ってば」 「え、別にそんな事ないよ?周泰さんだけじゃなくて、孫権様も呂蒙さんもみんな無事に帰ってくればって思うし」 「あと少しの辛抱だよ、もうすぐ帰ってくるよ?そしたらどうするの?」 「だ、だから!どうもしないし。なんでもないってば」 「小喬、お止めなさい。をからかって」 「だって〜ってばすぐに周泰さんの名前に反応して面白いんだよ?この前もね」 「小喬」 「はぁ〜い」 「ごめさない、。小喬ってば」 「あ、いいよ。あはは」 普通は小喬が謝るものだが、大喬に謝れてしまいちょっと焦る。 チラっと横目で小喬を見ると全然悪びれてる様子もなく、むしろまだ何か言いたそうにしている。 これはヤバイと思ったは少し意地悪をしてみたくなった。 「そう言えばさ、さっき周瑜さんの執務室にめっちゃ綺麗な人が沢山の荷物持って入って行ったよ」 「えぇ!!誰それ!」 「そりゃあ、将来もっと綺麗になりそうな、私と年の変わらない人だったなぁ。あの荷物何かなぁ?」 「嘘、、からかってるでしょ?」 「いやぁ、別に。だってここに来る時見かけたもん。周瑜さんに何の用事かなぁ…執務室で二人っきりでね」 「周瑜さま〜!!浮気なんかしたら許さないんだから〜」 小喬はバッと立ち上がり周瑜の執務室に向けて猛ダッシュして行った。 恐ろしい事にその勢いはすごく、椅子が勢いで倒れた時の音がこれまた酷かった。 「いってらっしゃーい」 ニコニコ笑顔で手を振る。 大喬は呆然している。 この話が本当に浮気話に発展したら、血の雨を見そうで怖いとさえ思っている。 「、本当に周瑜様の所にそんな綺麗な人が?」 「ん?うん。周瑜さんが招き入れてましたよ〜めっちゃ美人で将来有望な陸遜君を」 「え?陸遜殿?」 「そうそう。陸遜がね書簡なんかを沢山抱えてね、周瑜さんの執務室に入るのを見たの」 「〜駄目じゃないの」 「嘘は言ってないよ?同じ年頃の人、美人さんとは言ったけど別に『女性』だなんて言ってないし」 「でも浮気がとか」 「あれは小喬が勝手に言っただけじゃん。小喬ってば人のことをまだからかう気みたいだったからね」 「後でどうなっても知らないわよ?」 「嘘は言ってないでしょ?」 しょうがないねと言う顔で茶を啜る大喬。 小喬がいないために辺りは静かになっている。 は卓に肘をついてぼーっとしはじめる。 大喬は元々詮索をするのを好む子ではないので、静かな時間が流れる。 不快感はない、ゆったりとした時間。 ふとが口を開く。 「あのさぁ、大喬」 「なに?」 「私ってそんなにわかりやすいかな?」 「どうかしら。私は普通だと思うけど…さっき小喬が言った事?」 「うん、周泰さんの名前に反応しちゃうってこと」 やはり彼に名前が出ると、自然と顔が笑っているし、頬は赤い。 小喬の言う通りなのかもと大喬は思うが。 「別に良いと思うけど。は周泰殿を慕ってるのね」 やんわりと笑う大喬に、は思わず頷いてしまう。 「あ、えっと…」 「うふふ。誰にも言わないから大丈夫よ」 大喬とも年が変わらぬのにこの落ち着きの良さには安堵してしまう。 尚香や小喬がはじけすぎなのかもしれないが。 大喬がの気持ちもわかるとかすかに呟いたのがには聞こえた。 「傍に居られるだけで嬉しく思うし、中々会えない時には寂しくてみたいに口に出して呟くこともあるわ」 「大喬も?」 「ほら、孫策様はお忙しいから。私は小喬みたくはっきり言えないから」 「あれははっきりしすぎ。少し落ち着けっての」 「もう、ってば。でも小喬のそういう所羨ましいとも思うのよ」 「ふーん」 「あ、私のことはどうでもいいわね」 「大喬と恋愛話できて私は嬉しいけど?」 「私もそうかも…小喬や尚香お姉さまにはあまり言えないし」 「逆に身内だと言いにくいって事もあるか」 「ねぇ、は周泰殿のどこに惹かれたの?ほら、周泰殿はあまり傍に人を寄せ付けないような感じがするから」 気分を悪くしたらごめんねと、大喬は付け加える。 でもはそうは感じなかった。 「あのね、周泰さんって本当に優しいんだよ。無口だってのと見た目で怖そうって言われちゃうけどね」 「ふーん、そうなの」 「例えばね、隣で歩いてるとね、自然と歩調をあわせてくれるし。ちゃんと目を見て話してくれるし」 は本当に嬉しそうに周泰の話をするなぁと大喬は微笑ましく思う。 「早く帰ってくるといいわね。」 「うん。早く会いたいよ」 二人でのんびり話していたが、小喬がにからかわれたと怒って帰ってきたので、また騒がしい時間がやってきたのだった。 *** 翌日にも討伐隊は戻っていた。 皆無事に戻っていた事で城の者は安堵する。 は周泰に会いたいと思っていたから、周泰を探しまわる。 「どこかなぁ…孫権様や呂蒙さんはいたのに」 「、何か探し物か?」 甘寧がに声をかけてきた。 「甘寧、周泰さんがどこにいるか知らない?」 「あー?周泰の旦那?さっき若殿と一緒だったけど」 「えー、私が見たときいなかったよ〜」 「おかしいなぁ、普通にいたけどな」 「ま、いっか。探してみるありがとうね」 「おう」 甘寧と別れて再び周泰を探すよ。 会う人に尋ねるが、皆甘寧と同じような答えばかりだった。 「なんで、私だけ会えないわけ?」 じっとしていた方が会える確立が高いのだろうか? それとも 「はっ!私避けられてるとか…」 そんな考えが浮かんでしまう。 実は普段はそうでもないのだが、周泰が戦場から戻ってきた時になると、」彼は決まってに近づこうとしなかった。 出迎えに行っても、が声をかけない限り。 「あ…なんか…そうなのかな…」 実は嫌々で自分に付き合ってるとか。 すべてが自分の都合のいい思い込みでしかなかったのだろうか。 「周泰さんに嫌われたぁ〜」 思わず、その場にしゃがみこんでしまう。 大勢の人間の前で自分といるのが嫌だとか。 一緒に並ぶなら大人な女性の方がいいとか。 結局私は子どもですよとか。 一人ぶつぶつ言う。 その場を通る人間が思わず避けてしまうほどだ。 ずっと会いたいと思っていたのに。 やっと会えると思っていたのに。 「痛いよぉ」 一人で浮かれていたのかと思うと、ものすごく恥ずかしくて胸に痛みが出てくる。 その痛みはどんどん大きくなって、自然と涙が零れてきた。 そこへ当の本人である周泰が通りかかろうとしていた。 だが、の姿を見て一瞬引き換えそうかと反転しようとする。 がしゃがみこんだまま動いてないので不審に思い近づく。 「…?…」 ずっと聞きたかった声が頭上がする。 の肩がびくりと動いた。 「…どうした?具合でも悪いのか?…」 「………」 は自分が完璧に嫌われたと思っているので顔を上げることができない。 周泰の方がそれが余計に可笑しいとおもい始める。 「……」 「な、なんでもないです」 少し涙声になっている。 「…泣いてるのか?どうした?…」 「なんでも…」 周泰はを立たせようとの腕をつかむが、それを振り払われてしまう。 「…俺が嫌いか?…」 やり場が無くなった手を見ながら周泰が言った。 その言葉では顔を上げる。 「違います!周泰さんのほうが私のこと嫌いなんじゃないですか!」 「…なぜだ?…」 ぼろぼろ涙を流している。 周泰は理由がわからない。 「だ、だって。周泰さん私のこと避けてる」 「…それは…」 「私嫌われてるみたいだから」 そうか、避けていた事を気づかれたかと周泰は息を吐いた。 「…すまん…」 周泰はそう言っての腕をつかみ立たせる。 『すまん』なんて言うものだから、は本当なのだとショックを受けてさらに泣き出してしまった。 「…泣くな…そういう意味じゃない…」 周泰はを抱きしめる。 「…俺は戦で大勢の人間を斬った…」 ポツリポツリと話し始める周泰。 「…だから、血の臭いが染み付いてる…そんな俺にお前を近づかせたくないから…」 「だから、私のこと避けてたのですか?」 「…あぁ…俺なんかに触れたら、お前が穢れると思ったから…」 「………」 「…だから…」 周泰は腕の力を緩めから離れようとした。 だが、の方がギュッと力を入れて周泰に抱きついた。 「……」 「私のこと気遣ってくれたんだ、周泰さんは。でも周泰さんが思うほどそんな血の臭いなんてしないです」 「…そうか…」 「周泰さんの匂い嫌いじゃないです、私…あ、なんか変態みたい」 「…ふっ…」 「あー周泰さん笑った!ひどいです〜」 さっきまで泣いた顔はどこへ行ったのやら。 いつの間にか、の顔は晴れ晴れしていた。 結局は周泰が自分のことを大事にしてくれたんだなと喜ぶだった。 「周泰さん、周泰さんがいなかった間にですね」 「…あぁ、話、聞こう…」 その後は二人仲良く過ごしたようで…。 この二人…付き合っていないそうだよ。
03/10/07
13/03/06再UP
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