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ドリーム小説
最近、周泰の目に入るもの。

「よし、いないなぁ〜」

辺りをキョロキョロと見回し、城の裏手からこっそり出て行くの姿。

「…またか…」

理由は知らないが、ここ最近のは朝から城を抜け出しどこかへ行っている。
別には城からの外出禁止令は出ていないのでこっそりいく必要はないのだが、本人は何故か誰にも見つからないように城を出て行く。

と言ってもこの時点で周泰にはすでに見つかっている。

だが、周泰はが誰にも言わないようなので口を閉じていた。
元々無口な人なわけだし。

今日もは朝から城を抜け出していた。

「周泰、見なかったかしら?」

尚香が甘寧を供に着けを探し回っているらしい。
尚香の背後で面白くなさそうな顔をした甘寧がいる。

「…いえ…」

「そう。もう、最近のは付き合いが悪いわね〜どこでなにをしてるのだか」

尚香は友だちが構ってくれないので少し機嫌が悪いらしい。

「姫さん、俺はもういいだろ?いないもんはしかたねぇだろ」

「興覇!絶対を見つけるのよ」

「なんでだよ、別に…ぐはっ…ひ、姫さん…」

尚香は甘寧の腹に一発蹴りを入れた。
あぁ、お姫様なのに…

「いいから、なんでもよ!周泰!貴方もを探して見つけたら私に報告よ」

「…はぁ…」

「報告は駄目ね。私の所まで引っ張ってらっしゃい!」

「だ、旦那…逆らうと、こうなるから素直に探しに行ってくれ…被害者は俺だけで十分だ」

どうも尚香の蹴りは見事に甘寧のみぞに入ったらしい。
脂汗っぽいのが流れている。

「行くわよ、興覇」

「うぃーす…はぁ…」

尚香に引きずられるように甘寧は去っていく。

「…大変だな…」

少し甘寧を哀れに思ってしまう周泰だった。





「………」

尚香がを探せと命じたのだから仕方ない。
周泰は一度、溜息を吐いて歩き出す。
城の裏手に行けばいいだろう。

城を出てとりあえず人のいると思われる方へ進む。
城の裏手は森だ。
そんなに深い森ではないのですぐに見つかるだろう。

そう言えば、よく孫策を探しに歩き回ったなと周泰は思い出す。

「………」

今は亡き孫策は周泰が最初に仕えた人物。
孫策と出会う事もなければ自分はこの国の武人となることもなかった気がする。

「…雨?…」

頬に冷たいものが落ちてきた。
思わず自分が孫策を思い出し涙が出たのかと思った。
顔を上げればパラパラと振ってる雨が顔に当たる。

「…どうするか…」

このまま引き返せば大して濡れる事もない。
がここら辺にいるとも限らないし。

けれど、なんとなく戻る気がしない。
考えているうちに雨は強くなっていき、周泰を濡らしていく。

周泰はそのまま歩き出した。

「あー!周泰さん、何してるんですか!?」

「…お前…」

少し歩いた所で周泰は声をかけれられた。
が急いで自分の方へ駆けてくる。

「もう!風邪引きますよ、こっち来てください」

に手を引かれついた場所は東屋。
こんな所にこんな場所があったとは。

「あ〜拭く物ないよ、どうしよう」

「…平気だ…」

「周泰さん、何してたんですか?」

「…尚香様にお前を探すように言われた…」

「え、え〜尚香に?あーそれは面倒をおかけしました」

「…いや…」

少し水気の含んだ斗篷を軽く絞る。

「…いつもここにいるのか?…」

「え゛…いつもって?」

「…すまん、お前が出て行くのを知っていた…」

「あはは、なんだ周泰さんにはばれちゃってたのか。別にいいですよ」

はあっさりと言う。
最初から隠れる必要がないようだ。
だが、会話が途切れてしまう。
周泰はそれ以上聞こうとしないし、も話そうとしない。

「………」

「雨、いつになったら止みますかね?」

がポツリと呟く。

「…あぁ…」

雨はそんなに強くはないものの、止む気配はしない。
今の時期、仕方ない事だ。

「…走るか?あまり遅くなると皆に心配をかける…」

特に尚香辺りがが戻らず、今頃喚いているかもしれない。

「え、あ…そうですね。遅くなると困りますね」

「…行くか…」

「あ、あ〜周泰さん先に帰ってください。私は後から行きますから」

「…?何故だ?…」

自分と一緒の所を見られでもしたら困るのだろうか?
自身はなんて答えて良いかわからず、目が泳いでいる。

いつもここへ来ている理由が関係しているらしい。

「…誰か待ってるのか?逢引か?…」

「な!なんでですか!ち、違いますよ」

周泰の口から逢引なんぞ出るとは夢にも思わなかった。

「…冗談だ…」

口元を緩め笑う周泰には思わず目が放せなかった。

(こんな顔もするんだ…)

「…なんだ?…」

「な、なんでもないです」

カーッと顔に熱が帯びてくるのがわかる。
恥ずかしくてしょうがない。

「…ん?…」

「あー!!」

周泰は足に何かが纏わりつくのを感じた。
同時にが大声を出す。

「…犬…」

子犬が周泰の足元にいつの間にかいた。
くるりと丸まった尻尾。
周泰に嬉しそうにじゃれついてくる。

「もう〜いきなり現れて、こいつめ〜」

は子犬を抱き上げる。

「わん!」

子犬はが抱いてくれたのが嬉しいのか尻尾を振っている。

「…その犬は…」

「あ、えへへ。少し前に森で遊んでいたらこの子を見つけて。毎日、この子と遊んでたんです」

捨てられたのか、親犬とはぐれた野犬なのかはわからないが。
は情が打つって子犬と毎日過ごしていたらしい。

「餌は、自分の食事を少しずつ…あの、周泰さん?」

「…何故黙っていた?…」

がこそこそしていたは、食べ物を隠して持っていたかららしい。
だが、子犬が飼いたければ言えばいいのではないだろうか?

「だって、私、居候だし…あまり皆に迷惑かけたくないし」

「…だが、昼間犬と遊んで、夜は帰るのだろう?犬にしてみれば残酷ではないのか?…」

「あ」

餌だけ置いて自分の都合のいい時しか相手にしないのは犬だって嫌だろう。
そう思う気持ちが犬にあるのかは実際はわからない。

「…お前が理由も言わずにふらついている方が、孫権様たちも心配する…」

しょぼんと首をたれる
中途半端な扱いをしたことにショックを受けているようだ。

「ごめんなさい」

「………」

はぎゅっと子犬を抱き締める。

「ごめんね」

「…行くぞ…」

「え!あ、でも…」

子犬を手放す事もできない。
でも、が飼う事もできない。
が言えば孫権は許してくれるとは思うが。

は子犬の顔をじっと見つめる。
じわっと涙が浮かんでくる。

「…連れて来い。俺の屋敷で飼ってやる…」

「周泰さん?」

「…同じ事は言わん…」

周泰は東屋から出て歩き出す。
は慌てて周泰の後を追いかける。

「周泰さん、ありがとう!」

「………」

雨はまだ降っていっていたが、二人と一匹で走って帰った。
ずぶ濡れのを尚香が説教していたが、の顔は終始笑っていた。

「もう!ってば聞いてるの!?」

「うん、聞いてる〜」

周泰の屋敷では、綺麗に洗ってもらった子犬が周泰の膝の上で寝ていた。

「…名前はどうするか…」

自分が子犬を引き取った事で、に甘いなぁ。などと笑ってしまう周泰だった。

「…お前、に似ているな…」

を最初に見たとき、捨てられた子犬のようだと実は思っていた周泰。
周りに馴染めなくておどおどしていて。
でも、今ではしっかりと前を向いて歩いている

もこの子犬に見知らぬ世界へ来てしまった自分と重ねてしまったのだろう。
だから、放っておけなくて。

「周泰さん!」

「…どうした?…」

もう、日も落ち始めているのに周泰の屋敷にがやってきた。
嬉しそうに笑っている。

「あ、膝の上で寝ちゃってるんだ…あはは、可愛い〜」

「…、こいつの名はどうする?…」

「名前ですか?そう言えば考えてなかった…むぅ」

「…夕餉、食べていけ。名はゆっくり考える…」

「はい」

は周泰の隣に腰掛ける。

「周泰さん。またこの子に会いに来てもいいですか?」

「…遠慮する必要がどこにある。こいつはお前の大事な友だちだろう…」

「はい、友だちです」

それから、暇があると周泰の屋敷を訪れるの姿が見られるようになった。
周泰との仲も一段と親しくなったとか。





***おまけ***

「いいなぁ、。私も可愛い犬欲しいわ」

「尚香、もういるじゃん」

「飼ってないわよ、犬なんて」

「つんつん頭のちょっと落ち着きのない犬がいつも側にいるじゃん」

「……興覇のこと?」

「なんだかんだ言って、尚香に一番懐いてる可愛いわんこだね」

「………」

などと、言っていたのは甘寧に内緒。








アンケ結果からだったそうなw
03/07/05
13/03/05再UP