てるてる坊主




ドリーム小説
珍しくうとうとしてしまった。
予定していたものが雨で延びてしまったせいだ。
やることが急になくなり、どうして良いかわからなかった。





何か読もうかと思い、数冊見繕うが内容がちっともはいってこない。
それどころか眠気に襲われ意識が遠のいた。

「きょうも雨だね」

「ああ」

「ひーちゃん、雨すき?」

「好きとか嫌いとか考えたことない」

自分よりも幼い少女と外を眺めていた。
尊敬する人の養女である子。夏侯惇の娘
妹みたいな感じがして気づけば一緒にいることが多くなった。
実の妹なんて何人もいるのに。

「わたしは雨好きだよ。雨がふると父様がおうちにいる時間ふえるし」

「そうか」

自分の父親もこの子の父親だったら良かったのに。
彼の子だったら、自分の道がまた違ったものになっただろうなと思った。
だが、慌てて首を横に振る。

(何を馬鹿なことを)

思ったところでどうしようもないことだ。

「でも雨ばっかりだとお外で遊べないね」

「お前は小父上と一緒ならばいいのだろ?」

「うん。いっぱいお話してくれるし。でも雨ばかりだとひーちゃんと外で遊べないよ」

「………」

「あ、そうだ!てるてる坊主つくろう」

「てるてる坊主?なんだそれは」

「あのね。てるてる坊主にね晴れにしてくださいってお願いするの」

いまいち何をいっているのかわからなかったが、とりあえず素直にいうことを聞こう。
駄々をこねられて泣かれてはこちらが困る。

「でね。つるしておけばいいんだよ」

の一生懸命な説明でてるてる坊主とやらを作ってはみたが。

「怖い………なんだ、これ」

くるくると丸めた布に白い布を更にかぶせ、紐で括る。
軒の下にいわれたとおりつるすが奇妙な光景に見える。

「人が首吊りをしているようにしか見えん……こんなんで晴れるのか?」

「なるよーそしたら明日は外で遊ぼうね」

「……別にいいが」

だが、翌日も雨だった。
しかもどしゃぶりで。
そんな天気にぷくーと餅のように頬を膨らませ泣きそうになっている

「仕方ないだろう、この時期はいつも雨だ」

「だって、だって」

ちゃんとてるてる坊主を作ったのに。

「……ん?」

昨日つるしたてるてる坊主を見れば、頭が下に向いている。

「あーだめだよ、これじゃあ雨になっちゃう」

「?」

「てるてる坊主を反対にすると雨になるんだよー」

泣きそうだった顔が一転して晴れている。

「ならば作り直しか」

重心が下に行かないようにとせっせと作り直す。
何故、自分が素直にこんなことをしているのだろうか。
父に仕える重臣たちが見たら変な顔をして笑い馬鹿にされそうだ。

「これでいいか?」

「うん」

だか、きっと自分も雨にはうんざりしていたから外に出たかったのだろう。
素直にてるてる坊主を作ったのだから。





「おーい子桓」

身体を揺さぶられる。

「………なんだ」

幼女のではなく、女性へと成長しているが目に映る。

「珍しいね、子桓が昼寝なんて」

いつの間にか机案に伏して寝ていた。夢を見ていたようだ。幼い頃のとのことを。
恥ずかしいところを見られたと無言のまま身体を起こす。

「よっぽど疲れているんだね。ちゃんと休んでいる?」

「一応」

「そういうときは」

「甘い菓子などいらんぞ」

「あらら、ばれちゃった」

最近昔の夢ばかり見る。
泣いてばかりいたはいつの間にか周囲でも評判の娘となった。
自分の前では相変わらずなのだが。
だから兄妹みたいな関係が続いているのだろう。少なくとも曹丕の中では。

「父様も甘いもの食べてくれないんだよね…でも沢山あるし…」

お菓子が入った箱を見つめ軽く息を吐く。

「遼様に持っていこうかな。遼様は好きだし」

「………」

なんか面白くなかった。

「食う」

「は?」

「少し小腹が好いた。だから少しだけなら食ってやってもいい」

「ふーん。少しだけ?」

「お前もここで食っていけばいいだろ。早く茶でも淹れろ」

ガラッと態度を変えた曹丕には苦笑しつつも茶の用意をはじめる。

甘いものは苦手だが、少しばかり癇に障ったから
我慢して食ってやる。

ただ、あの言葉はいただけない。

「遼様は好きだし」

それは張遼が菓子を好きだからか?張遼を好きだからか?
兄のようにしていた自分。
妹だと思っていた少女。
最近、それが変わりつつある。

(簡単にはくれてやらぬ)

相手が誰であろうと。
だからパクリと甘い菓子に食いついた。



「んー?」

卓子を挟んで座ったに曹丕は唐突に話し出す。

「雨が止まん。おかげで予定が滞っている」

「らしいねぇ。父様も溜め息ばかりだよ」

くすくすと笑う

「お前はそれでも嬉しいのだろう?小父上が一緒ならば」

「だね。でも子桓ともゆっくり話ができて嬉しいけど?」

「……そうか」

「子桓は忙しいからね、最近。だから疲れて寝ちゃったんでしょ?」

「別にそういうわけではない」

「暇だねー、子桓」

「たまにはいいのではないか?」

「うん。そうだね。あ、雨ばかりで嫌なんでしょ?てるてる坊主作ろうか」

もう子どもではないのだから、と曹丕には断られそうだとは言う。
だけど。

「逆さにならぬようしっかり作れ」

曹丕は否とは言わなかった。それどころかしっかり作れと口にしてしまった。

「もう大丈夫ですーじゃあ早速作ろうっと」

いそいそと席を立ち、勝手に室内を物色し材料となるものを探し出す。
鼻歌交じりで作り出す
曹丕は卓子に片肘をついてそれを眺めている。

「頭。大きく作りすぎるなよ」

昔は吊るせばいつも頭が下がっていた。

「わかっていますよー」

「それで雨が止めばいいんだがな」

外に視線を向ければ止む気配など一向に見せないどんよりとした厚い雲が見える。
だがはうきうきとした気分でてるてる坊主を作っている。

「大丈夫。さんお手製のてるてる坊主は効き目バッチリなんですよー」

「そうだったか?」

含みある笑みを零してしまう。

「そうだよ。覚えていない?子桓と初めててるてる坊主を作った次の日、見事に晴れたじゃない」

「…覚えていない」

晴れたんだよーとは言う。
一緒に作ったことまでは思い出したが、その翌日のことは…。

「だから、明日も晴れるよ。晴れたらどこかでかけようよ。あー泥だらけになるようなことはしたくないけど」

「………」

晴れたら、どこかに…。

「でーきた。今回はちゃんと顔もついているからね」

曹丕は席を立ちに手を差し出す。

「貸せ。しょうがないから私が吊るしてやる」

「ありがと」

背が低かったあの頃。
曹丕は面倒臭そうな顔をしながらもてるてる坊主を吊るしてあげた。
今は簡単にてるてる坊主を吊るしている。
には大きくなった背中が見えるだろうか。

「明日晴れたら付き合ってやる。しょうがないからな」

背を向けたまま曹丕は言った。
吊るされたてるてる坊主が少しだけ揺れていた。








元ネタが拍手小話からで、珍しい曹丕視点でした。
06/12/01
13/02/17再UP