ドリーム小説
最近は元気がない。
どうかしたのか?と訊ねても「なんでもない」と笑って返す。
でも、すぐその後に沈んだ顔をするのを知っている。

なんでもなくないじゃないか。
お前の性格だ。
きっと心配をかけたくないとか、迷惑をかけたくないとか。
そんな風に思って「なんでもない」って笑うんだ。

バカじゃないのか。
今更だ、そんな事…
すでに無理して笑っている事を知っているんだ。
心配はしまくったし、迷惑なんて思ってもいないし。

そりゃあ…から見たら、拙者は頼ってもらえるような男ではないかもしれない。
拙者以上に頼れる方が沢山、君の周りにいる。
劉備殿、父上、張飛殿は家族としてずっとそばにいたから比べられなくてもわかる。
にとって、殿は特別な方だ。
今回のだって、大方殿に心配をかけたくないとか、そんな理由なのだろうな。
けど、拙者が気付くくらいだ、殿もすでにお見通しのはずだ。
が自分から話してくれるのを待っているんだ。

殿とは別ににとってもう一人特別な方がいる。
趙雲殿だ。
拙者も武人として父上と同じくらい尊敬をしている。
趙雲殿も気づいているような気はするし、拙者が何をせずともきっと先にに声をかけるだろう。

でも、なにができるかわからないが、少しでもに元気になってもらいたい。
元気になってくれるならば何でもする。
大人しいはつまらない。
元気いっぱいなのが、なのだ。



「平ちゃん?」

「ひまわり。好きだろう?」



何をどうすればが元気になるのかとない知恵絞って考えた。
どうすれば喜ぶのかと。
女性を喜ばすにはどうすればいいのですか?と恥かしいと思いつつ馬超殿に聞いてみた。
趙雲殿にもお尋ねしようか考えたが、あの方はあの方でを喜ばす方法を知っている。
ちょっと癪だし、馬超殿に頼んでしまった。
いや、というより…自分でもっと考えるべきだろうが。
この辺、拙者はまだまだ未熟だと思い知らされる。

馬超殿は拙者がそんな質問をするのが意外だったのか、面食らったような顔をするが。
自信たっぷりに答えてくれた。

「花でも贈って、愛の言葉でも囁きゃ喜ぶさ」

と。
いや、花はいいと思うが、あ、あああ…愛の言葉を、さ、さ、囁くなど…
拙者にはできない。
というより、に愛の言葉を囁く理由はないぞ。
馬超殿は勘違いをされている、まったく。
拙者にとっては大事な幼馴染、妹みたいなものだ。
拙者は、ただ元気になってもらいたいだけなんだ。いつもみたいに。

だから、愛の言葉はこの際無視して、花を贈ろうと思った。

の好きな花はなんだっけ?
一緒に散歩をした時や、会話をしたときのことを思い返す。
色々あったはずだ、桜や桃の花は綺麗だとか、百合もいいとか。
けど、それよりも他にあったような…。

あぁ、ひまわりだ。
ひまわりが好きだと言っていた。
ちょうどいい、今一番咲いているではないか。
そう思って、ひまわりを探しに行ったんだ。



畑一面がひまわりだった場所を見つけた。
持ち主に頼んで数本わけてもらおうと思ったがやめた。
見事な光景だったから。数本といえども引っこ抜いてしまうのが勿体ない。

だから、連れてきた、を。
この光景を見せたくて。

「すごい、一面向日葵だらけ…青い空がバックで素敵だね」

笑ってくれた。
すぐさま沈み込むようなことはなく。
喜んでくれた。
それが嬉しい。安堵してしまう。

「でも平ちゃん…どうして?」

「そ、それは…ずっと元気がないのを気になっていた。聞いてもなんでもないと言うだけで…」

「あ…ごめん」

「拙者では頼りにならぬかもしれぬが、悩みを話してくれればそれなりになんでもする。頑張る…のだが…」

頼ってもらえないのは結構堪える。

「ありがとう、平ちゃん。それとごめんね、沢山心配してもらって。もう大丈夫だよ」

「本当か?無理をしていないか?」

「うん。平気。平ちゃんのおかげで元気出た。向日葵見れてすごく嬉しい」

良かった。
作ったような、無理をした笑みじゃないから。
それを向けられたのが、本当に嬉しいと思える。
本当は殿も心配をしているぞ。とチクリと説教でもしてやろうかと思ったけどやめだ。
きっと殿はが元気になれば、余計な事は言わないで笑ってを迎えるんだ。

「平ちゃん、ハチみたい」

「はぁ?」

「向日葵畑、探してくれたんでしょ?蜜をつけて仲間に知らせてくれただよね」

「蜜など、拙者は……あ」

当初、ひまわりを貰って帰ろうとしたから。
畑に足を踏み入れた際に背丈のあるひまわりの花粉を髪につけてしまったようだ。

「こっちだよー。おいでーって私を連れてきてくれて…あ。あはは、平ちゃん可愛い」

「な、なんだと!?」

「ジッとしてて。平ちゃんの頭に蝶々がとまったんだよ」

たまたまなのか、花粉に気付いたのか知らぬが、蝶が羽を休めてしまった。

「蜜をつけていなくても、平ちゃんからは向日葵っぽい感じが出てるけど」

「?」

「平ちゃん見てると、向日葵みたいだって思うもの」

花に例えらえても、拙者は困るのだが…。
その困惑を感じ取ったのか、はまた笑う。

「陽の光を沢山浴びた、向日葵みたいに、平ちゃんからは太陽の匂いがしそうかな?」

「そ、そうか?」

「うん。そう。私、向日葵大好き。もちろん平ちゃんも大好きだけどね」

う…。
を元気付けようと思ったのに。
なんだか拙者の方が良い思いをしてしまったような気がする。
思わず俯いてしまったから蝶が飛んで行ってしまった。

「そ、そろそろ行くか」

「うん」

「花の蜜も良いが、それでは拙者たちの腹は膨れん。何か食べよう」

少し恥かしいがの手を取る。

「うんと甘いもの食べよう」

しっかりと握り返してくれた。
それだけで、やっぱり自分の方がいい思いをしてしまったような気がした。
は拙者をひまわりみたいだと言うが、拙者から見れば。
の方が充分ひまわりのように見える。
拙者もひまわりは大好きだから。

大事な幼馴染がいつまでも笑っていられるよう、拙者はなんでもする。
いつかは幼馴染よりも特別な人のもとへ行ってしまうだろうが。
その時までは妹のようなを守るのだ。
そばにはいない、父上の分も拙者が…。





【はこび屋は花粉を……。】









平ちゃんです。趙雲夢の「花と龍と…」の設定です。
09/10/09
12/11/04再UP