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「惇兄!惇兄、あのね!」 が夏侯惇に駆け寄るも彼は素っ気無い 「すまんな。。今忙しい…孟徳!貴様、これはなんだ!」 曹操の姿を見つけると形相を変えて追いかけていく。 「あ…」 忙しいと言われると、それ以上何も言えない。 追いかけることさえもできない。 忙しいのはわかるが、少しは話を聞いて欲しい。 【其れは嫉妬にも似てるね】 「へこむ…すごくへこむ…地面に体がめり込んじゃいそう…」 「な、なんと!それは一大事でござる!!」 徐晃の前ではうっかり冗談も言えないと普段は思うも。 今日ばかりは冗談でもない。 天岩戸ではないが、どこかに閉じこもってしまいたい気分だ。 「しっかりなされよ、殿〜」 めり込む。と言い切っただけある。 は壁に体を預けて傾いている。 徐晃はそんなをゆさゆさ揺らす。 なぜに徐晃かといえば、気分がへこんでいるので徐晃に癒されたいと思ったから。 堅苦しい、真面目な御仁ではあるものの。 基本徐晃は可愛い人だとは思っている。 何事にも一生懸命だけど、たまにからかった時の反応が可愛いなと。 張遼にからかわれた時などそれが顕著にでる。 でもからかわれているのを見て楽しんでいるのではなく。 徐晃からは何か癒しの波動でも出ているのではないかと思うくらい、見ているこっちがほっくりするのだ。 でも、今日はその徐晃の癒しの波動効果は薄いようだ。 「あーあー少しでもいいから、お話したいだけなのに…」 「か、夏侯惇殿は忙しい身でおられるから…で、でも今を我慢すれば」 「我慢すれば寂しくなくなる?」 うんうんと頷く徐晃。 「………」 の反応は悪い。 徐晃にもわかっている。 今まで何度もこういう事があったから。 曹操の右腕と称されるbQとも言えるのが夏侯惇だから。 曹操の下には有能な文官、武官は数多く居る。 居るが、曹操のわがままに応える、対応できるのは夏侯惇だけ。 最後の防波堤でもあるのだ。 今回の忙しさも、曹操のわがままからなのかもしれない。 「いっつも。孟徳、孟徳って…本当惇兄って孟徳バカだもんね…」 「あ、あ〜殿…そういう発言は控えた方が…」 は急に徐晃と向き合った。 「だって本当のことだもん!」 気分は下降気味、その中に怒りが沸々と湧いてきたようだ。 「秤にかけたら、きっと私はストーンって空に飛んでいくんだよ。惇兄は孟徳様が大事だから」 「そんな事ないでござるよ。夏侯惇殿は殿も大事でござるよ」 「大事なのに、放っておかれる。そんなの大事じゃないよ」 「あ〜」 「だいたい!」 は口を開きかけるも顔を俯かせる。 「殿?」 「…ごめんなさい。徐晃さんは悪くないのに…励ましてくれるのに…」 なのに、嫌な気持ちを徐晃にぶつけてしまった。 「気にすることないでござるよ。拙者にはこうして殿の話を聞くことぐらいしかできぬでござる」 本当優しいな、徐晃は。 これが曹丕や張遼相手ならばボロクソに言われるだろうと思った。 言われたくないから徐晃のところに来ているのだが。 「いつもごめんね。ありがとう徐晃さん」 徐晃はかぶりを振る。 「おーい。徐晃殿〜」 そんな二人の下へ夏侯淵がやってきた。 「淵ちゃん」 そうだ。彼も居た。 夏侯惇にもっと近い人。彼も優しいから話を聞いてくれるだろう。 そして一緒になって「ダメだな〜惇兄は」なんて言ってくれるに違いない。 「も一緒に居たのか」 「うん。ちょっと徐晃さんとお話していたの。淵ちゃん、徐晃さんに用事?」 「あぁ。用事って言うか。今から狩りに行くんだ。徐晃殿もどうだ?」 弓の名手である夏侯淵。 趣味でもあるのか、たまに狩りに行く事がある。 「拙者は…」 徐晃は優しい性格でもあるから、動物に弓を向けるのが苦手のようだ。 「も行くだろ?殿がやろうって言い出したんだ。勿論惇兄も行くぞ」 ブチっと今どこか切れた気がした。 惇兄も行く? は歯を食いしばって拳を強く握り締める。 「あ、あ〜殿〜」 堪忍袋の緒が切れた。 徐晃にはそれがわかったようだ。 「忙しいって人には言っておいて、狩りには行くんだ?へーあーそう」 「どうした、?」 夏侯淵はの顔をのぞきこむ。 「お、おいおい」 夏侯淵はが静かに怒っているのがわかった。 「また。孟徳様だし…孟徳、孟徳って…」 上司に同行を命じられれば断れないのはわかる。 わかるが、相手にしてもらえないのを我慢しまくったのに、この仕打ち。 徐晃は今、我慢すればと言ってはくれたが、もう嫌だ。 我慢の限界は超えた。 「もう惇兄なんか知らない!!」 は言い切った。 そして二人に背を向けてどこかに行ってしまう。 「お、おい!〜」 「殿ー!」 二人はを追いかけるも、からは「狩りに行くんでしょ?」と睨まれてしまった。 「早く行かないと孟徳様に叱られますよ」とまで言われてしまって。 その後をそれ以上追いかけることはできなかった。 隻眼である夏侯惇は基本、狩りはしない。 今回も仕方なく付き合っているだけだ。 「惇兄…参加しない方が良かったと、俺は思うぞ?…」 いつもならば張り切る夏侯淵が、どうしたものか覇気がない。 「なんだ?淵」 「惇兄にとって、ってなんだよー。大事な子なんだろ?」 「きゅ、急に何を言い出す、淵!」 いい大人が顔を赤くして慌てている。 いつもならばその辺をツッコミ笑い飛ばすが、今の夏侯淵はそんな気分ではない。 夏侯淵は徐晃から話の経緯を聞いたのだ。 が夏侯惇に相手にしてもらえず寂しがっていると。 「どうなんだよ。惇兄」 真剣に聞いてくる夏侯淵。 夏侯惇はそんな夏侯淵に瞠目しつつも、ややあってから頷いた。 「あぁ。大事だ」 「ならなんで放っておくんだよ。の気持ち考えた事あるか?最近とどんな話したか覚えているか?」 「淵、それは…」 「惇兄にとって、殿が大事なのはわかるぜ?俺だってそうだ。殿に天下を取ってもらいたいからな。けど、ずっとは我慢してんだ。本当は寂しいくせに、そんな姿を惇兄にも見せないでさ」 なんか可哀相だ。夏侯淵がしょんぼりしながら言った。 夏侯惇はそんな従兄弟を見て何も言えなかった。 翌日、は夏侯惇とばったり会った。 夏侯惇の方はを探していたようだが。 「、話が」 そう夏侯惇が切り出しても、は口を閉ざしたままその横を通り抜けた。 「!」 「………」 「待て。俺の話を聞け」 慌てての腕を掴む。 「嫌。惇兄と話すことないもん」 「あ?」 「惇兄とは二度と口を利かない」 話を聞いてもらえないなら、最初から話しかけなければいい。 極端にもはそう考えたのだ。 「惇兄は孟徳様とお話すればいいでしょ」 もう離してと、その手を振り解こうとする。 だが夏侯惇は逆に腕に力を入れる。 はその痛みに顔を歪める。 「馬鹿を言うな」 「馬鹿じゃないもん!惇兄の一番は孟徳様だから、ずっと孟徳様のそばにいればいいじゃん!」 「お前…」 比べる方が間違っている。そう言いたいが、それよりも夏侯惇の口から出たのは別の言葉だった。 「孟徳に妬いているのか?」 「っ!?」 は顔を真っ赤にする。 言われて図星だったようで、改めてそう言われるとなんだか恥かしくて。 「もうヤダ!惇兄の馬鹿、馬鹿!離してよ!!放っておいてよ!!」 泣きそうな顔をして、は直も夏侯惇から逃げようと腕を引っ込ませる。 「放っておけるか。馬鹿が」 の小さな体を夏侯惇は包み込む。 「俺が悪かった。すまん、」 「うるさい!もう知らないって言った!!」 「俺と口を利かないんじゃないのか?」 「っ〜…だ、だって…」 「俺は嫌だぞ。一生お前と話せないなんて…どんな拷問だ」 あのね。惇兄。って話しかけてくれるのが嬉しい。 その話でコロコロと表情が変わるのを見ていると幸せな気分になれる。 それを拒まれるなんて。 自分ではない、別の誰かに向けられるのは嫌だ。 「お前に甘えすぎていたようだな、俺は」 「惇兄…」 「お前の優しさに甘えていた。お前が寂しがっているとわかってあげられなかった」 は夏侯惇の背中に手を回す。 我慢しようと思ったのに、ボロボロと涙が溢れてくる。 「すまん。」 「………」 「だが、孟徳に妬くとは思わなかった」 「……だって、惇兄、いつも孟徳、孟徳って…」 「あれはあいつが毎度毎度くだらない事を言ってだな…あ、いや。とにかく俺はお前も大事だ。 孟徳に天下を取らせる為に、あいつの駒となって動くのが俺だ。だが、俺個人の想いはお前にある」 の手に力が入る。 「うそ…」 「?」 「うそだからね…取り消す。惇兄と口利かない…なんての、やめる」 夏侯惇の口元が緩む。 結局の優しさにつけ込んだことを詫びながら。 「でも…次に放っておけば…どうなるかわからないからね」 「肝に銘じておこう」 自分を包み込んでくれる夏侯惇の温かさに目を閉じる。 あぁは言ったもの。実際夏侯惇と口を利かずに済むわけがない。 きっと実行しても、ものの数分で破棄されるだろう。 それくらい、自分はこの男が好きなのだから。 惇の孟徳スキーは相変わらずって話w
09/07/19
12/11/04再UP
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