いつものこと。




ドリーム小説
それはいつもの光景。
そう言われると、当人たちは困った顔をするだろう。
いや“たち”と言うより彼は。

「従兄上!また逃げようとしましたね!今日中に終わらせていただきたい仕事があると、今朝お話したばかりでしょう!」

「逃げてなんかいねーよ。ちょっと身体を動かそうかなぁと」

「鍛錬所か、遠乗りにでも行こうとしていたのでしょう」

「まぁな」

「逃げようとしたのではありませんか!」

「ちょっとだけだ」

「従兄上のちょっとは長すぎます。せめて仕事を終えてからにしてください」

「お前がやっておけ」

「従兄上!」

国の将軍でもある馬超が執務から逃げようとする。
それを彼の補佐役でもある従兄弟の馬岱が追いかける。
一日一回は見られる光景…

結果は馬超が逃げ切ったり、馬岱が捕縛完了し執務をさせたりなのだが。

「はいはい、また後でなぁ〜」

残念。
今日は馬超が逃げ切ったようだ。

「あ、従兄上〜」

あの人はこの後の苦労を何度も身に沁みているはずなのに、なんで後回しにするんだろう。
馬岱は肩を落としそう思った。

そりゃあ、机上で筆を握っての執務なんかより、戦場で槍を振るい駆けている姿の方が
何倍も生き生きとして素敵だとは思うのだが。
最低限のことはしましょうよ、兄上…

「岱君。独り言?」

「あ、殿。これはお恥ずかしい所を」

「いやぁ、いつもの事だし」

「はぁ、それがお恥ずかしいことなのですが」

馬岱は今日もに“いつもの事”を見られたと思うと情けなくなる。
城の中で『従兄上!』などと声をあげてしまっているわけだし。

「面白いけどね、中々」

「そんなこと言わないでくださいよ。こっちはいつも必死なのですから」

「あ〜ごめん」

と言う割にはは笑っている。

「馬超が逃げちゃったってことはさ、岱君は今暇なの?」

「暇…私には私の執務があるのですよ?一応」

「あぁ、そうか。なんか岱君の仕事って馬超のお守りって感じがするからついね」

「勘弁してください」

「本当大変だね、朝から晩まで馬超のお守り」

「従兄上が聞いたら怒りますよ?」

「本当のことだよ」

馬岱は微苦笑する。
住まいも彼とは一緒だから、確かに朝から晩まで顔をあわせることは多いが。

「岱君のプライベートな時間ないでしょ、それじゃあ」

「どんな時間ですか?」

「個人の時間」

「はぁ…別にそんなことはないと思いますよ」

四六時中、馬超にべったりってわけでもないし。
そこそこ自分の好きなことはできているはずだ。

「だって、好きな子がいても馬超のお守りでそんな暇なさそうだよ?」

「好きな子ですか…」

には24時間の馬岱の生活のサイクルがどのようなものかはわからないが
彼女の中では馬岱の1日のほとんどが馬超に使われてるというイメージがあるらしい。

「馬超のお守り、岱君個人の執務。日中ほとんどそれでしょ?」

「従兄上が真面目に執務をしてくれれば、多少はその個人の時間が増えると?」

「そう!」

馬岱は力強く頷くを見てクスクスと笑った。
その顔を見ては少し顔を赤くし馬岱を軽く睨む。

「酷い、岱君。私は岱君のこと考えてあげたんだよ〜」

「あ、あぁ申し訳ありません。殿が思うほど私は忙しい人間でもないですよ?」

「そうかなぁ?」

「それに従兄上だって、結局後で執務をしなければならないので、逃げてばかりもいられないのですよ」

「そうなんだけど」

馬超一人の執務ではない。
趙雲たちの執務に影響する事だってあるのだから。

「岱君、余裕ありありだね」

「そうですか?殿も言ったではありませんか“いつもの事”だって」

「あ…」

「なので、従兄上が逃げてしまった後のこともちゃんとこなしているのです、私は」

「尊敬します、それは」

は大げさに拍手までする。

殿はここで話をしていると言うことは、今、暇なのですか?」

いつもならば、趙雲や姜維たちなどと一緒にいるし。
彼女は馬超と似ていて、あちこちに出歩きまわっている事のほうが多い。

「うん、暇〜」

「では、よろしければお茶でもご用意しますよ?従兄上の執務室でよければなのですが」

「いいの?行く〜」

「はい、参りましょうか」

馬岱がにっこり笑って歩き出すのでもその隣を並んで歩く。



馬超の執務室にて、お茶を出してもらい、のんびりと頂く
馬岱も急ぎの用はないのか、それとも馬超待ちなのかの向かいで、同じようにのんびり茶を啜っている。

「はぁ、美味しい」

「それは良かった」

お茶だけでなくお菓子まで出してもらったし。

「ね、殿」

「ん?」

「先ほど言いましたよね。私には好きな子との時間もないように見えるって」

「あ〜言ったね。言ったけど、なに?」

「ちゃんとこうして、一緒にお茶を飲めてますよ、私は。なのでご心配なく」

と馬岱は笑んで再び茶を啜った。
は一瞬動きが止まる。

「た、岱君?それはど、どう言うことかな?」

「さぁ?どう言うことなのでしょうかね?」

明確に答える気はないのか、馬岱はニコニコ笑んでいるだけである。

「岱君?」

「何だかんだいって、毎日会話も交わしますしね」

「そ、そうなんだ…???」

自分のことを言っているのか、別の誰かの事を言っているのか、の頭は混乱する。

「あ、あのさ。岱君の好きな子って〜」

「あ、そろそろ従兄上が戻ってきますね。従兄上の分もお茶を用意しておきましょうか」

「ずるい!はぐらかした〜」

「あはは、ほら、戻ってきましたよ」

馬岱が席を立つと、馬超が本当に戻ってきた。

「なんだ、いたのか」

「いちゃまずいわけ?」

「誰もんな事言ってねーよ、阿呆」

馬超は軽くの頭を叩く。

「つーか、馬超。もっとゆっくり帰ってこいっての」

「はぁ?」

「まだ、ちゃんとした事聞けてないのにぃ」

は邪魔が入ったとブツブツ文句を言い始める。

「な、なんだ?どうしたんだは?」

馬超は馬岱に訊ねるが

「さぁ?どうしたのでしょうね、殿は」

と笑っているのだった。



馬超が執務を始めるとの事なのでは邪魔にならないように帰ることにした。
執務室を出る際に馬岱に

殿。またいつでもいらしてくださいね。今度はもっとゆっくりお茶を楽しみましょう」

っていつもの笑顔で言われた。
はぐらかされっぱなしで悔しい気もするが、次にその真意をちゃんと聞き出してやると
は決めたので、素直に返事をしたのだった。

「また来るよ。次こそちゃんと聞かせてよね、岱君」







当然ですが、これも無双6発売前なので馬岱君は可愛い系です。
本当可愛い系で観たかった…。
05/03/19
12/11/04再UP