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従兄弟同士
「はぁ…」 今日は何をしようかな。 星彩は暇かな〜?とか。 姜維を誘って街に買い物に行こうかな。とか。 が今日の予定を考えながら歩いていると、肩を落とし溜め息をついている馬岱がいた。 「岱君。どうしたの?」 は彼に近づき声をかける。 馬岱は少し慌てるも笑みを浮かべる。 「おはようございます、殿。今日はどちらへお出でですか?」 「……いや、岱君」 「はい、なんでしょう?」 「なんか悩み事でもあるように私には見えたのですが?」 に言われても馬岱は気のせいだと否定する。 「気のせいじゃないよ〜何かあったの?言って、岱君」 いつも笑顔の馬岱に悩み事があるのかと思うと心配してしまう。 馬岱は慌てて両手と首を横に振る。 「い、いえ。本当に何もないのです」 「嘘。絶対岱君隠しているもの」 がずいっと馬岱に迫る。 「あ、あの、殿」 聞くまでは逃がさないと言うような迫り具合なのだが、は力を緩め俯いてしまう。 「まぁ、私なんかに話しても何も役に立たないから解決しないだろうけど」 「え、そ、そのようなことは」 「岱君が心配だもん」 「あ、あ〜………」 馬岱は軽くこめかみを指で掻く。 「ありがとうございます、殿。私などには勿体無いお言葉です」 が顔をあげるといつもの優しい笑顔の馬岱。 「勿体無いって、そんなことないよ…岱君が元気ないと心配になるし」 「でも嬉しいです」 「じゃあ、話してくれる?」 「えっと…話すようなことでもないと思うのですが…」 「話してくれるまで逃がさないからね」 「はぁ、本当にたいしたことではないのですが」 それでも馬岱はに悩みを話してくれるらしい。 は馬岱の隣へと並び立つ。 「実は…昨夜従兄上と喧嘩をしてしまいまして…」 「馬超と?いつもの事じゃないの?」 「私と従兄上は喧嘩などほとんどしませんよ?」 「そっか、あれは喧嘩じゃないのか」 が見るいつもの光景。 仕事を何かとサボる馬超に馬岱が叱りつけるも、馬超は煩いと一蹴する。 喧嘩とは違うようだ。 「馬超と喧嘩して落ち込んだの?」 「…少し」 とは言うもののかなり落ち込んでいるように見える。 「私がつい口煩く言ってしまうのがいけないのですよね」 「えーでも、あれは馬超も悪いと私は思う」 「いえ、本当に私が悪いのです……あ、従兄上…」 廊下を馬超が一人で歩いてくる。 怒っていると言うのは本当なのだろう。 表情が硬く、近寄るなと言う空気をかもし出している。 馬超は馬岱を見もせずに素通りしていく。 「うわ、機嫌悪〜って言うか何、あの態度は」 隣にいたにも声もかけずに去っていく。 馬超がまだ怒っているとわかると馬岱は再び肩を落としシュンと俯いてしまう。 「岱君…」 「あ、あは…申し訳ありません。私もそろそろ執務がありますので戻らないと…」 馬岱の仕事は馬超の補佐。 今の状態で仕事など出来るのだろうか?」 「岱君。今日のお仕事は私の遊び相手!決まり」 「は、はい?」 「行こう!今日一日私に付き合って」 は馬岱の手を引き走り出す。 「え?え?殿!?」 「馬超なんて放っておこう。たまにはいいって」 はニッと笑う。 馬岱を元気にさせてあげたくて。 *** 「ほらほら、馬岱君。気持ちいいよ〜」 「あ、危ないですよ。殿」 「平気だよ〜」 二人は川原にやってきた。 は暑いと言って川へと足を踏み入れる。 小さい川のようで水嵩は膝下くらいだ。 「岱君もおいでよ」 「私はいいですよ」 「つまらんぞー」 は馬岱の方へ水を蹴る。 「わ、殿。濡れてしまいます」 「濡れちゃえ〜」 バシャバシャと水を蹴る。 本当に楽しそうで、馬岱も頬を緩めてしまう。 「うわっ」 馬岱の顔に見事に命中。 「あ、ありゃ〜」 「……殿、お覚悟を」 「え!?」 馬岱も自棄になったのか、覚悟を決めたのかと同じように川へと足を踏み入れに向かって水をすくい放った。 「わ、冷たい」 「あはは、お返しです」 「私だって負けないよ、うりゃ!」 「そう簡単には捕まりませんからね」 上手く水をかわす馬岱。 しばらくは二人で遊んでいたが、途中から遊びにきた子どもたちも加わりいっそう賑やかになるのだった。 「はぁ、疲れた」 「私もこのようなことは久しぶりです」 「楽しかったね」 「はい」 大人になるとこのようにして遊ぶ事など無くなるから馬岱にとっては本当に久しぶりの感覚だった。 草の上に二人して寝転ぶ。 風は吹いてとても気持ちいい。 「従兄上のことをすっかり忘れてしまったなぁ」 「いいじゃん、たまには。岱君はいつも馬超の事ばかりだもの」 「あは、あ〜否定できません」 「でもさ。大人になってからも喧嘩できるのって羨ましいな」 「え?」 は身体を起こして膝を抱える。 先ほどの水遊びと一緒。 大人になると友だちと喧嘩になりそうになっても、無視を決め込んだりして 反論する事も思いっきりぶつかる事などないのだ。 馬超と馬岱。 二人が言い合えるのは良い事だと思う。 「喧嘩の原因って何?」 「たいしたことではないです。つい口煩く私が言ってしまったので」 「それは岱君が馬超のことを思ってのことでしょ?」 「本来は言える立場ではないのに…私は」 「そうかな?岱君だから言えるんじゃないかな?」 馬超に対して注意、忠告をする人間は他にもいる。 趙雲は友としてよく馬超にお小言を言う事がある。 そんな趙雲でも私事の事では言えないこともある。 「私だからですか…」 「と言うより、馬超はもっと岱君に感謝すべきなのよ。岱君がいなくちゃ何も出来ないのに」 「そ、そのようなことありませんよ」 「ううん。そうだね。あの人お姫さんだから」 育ちや周りの接し方を見てそう思うのか? 「は?」 「お姫様。岱君がいないと飢え死にしちゃうね」 「従兄上が…姫?…ふっ、ふふふっあはは」 「お姫様はお勉強が嫌でいつも逃げ出しちゃう。ソレを追いかける教育係の岱君」 ほーら、ぴったりだ。とは自信たっぷりに言う。 そんなの隣で馬岱は急にそわそわし始める。 は馬岱が何を考えているのかわかっている。 「たーい君。馬超が心配?仕事やんないで遊んでいるとか、何も出来ずに困っているとか?」 「あ、従兄上はそこまで子どもではない…と思いますが…」 「でも心配なんでしょ?」 「す、少し」 頬を少し赤くして照れ笑いする馬岱をは微笑ましく思う。 (岱君可愛いなぁ〜姜維とは違う可愛さがあるな) 二人の方が年上で男性なのだが、何故だか可愛いいと思ってしまう。 (でも最近の姜維は反抗的だから可愛さ減るな…いや、その反抗的なトコも可愛いのかな?) なんだかどうでもいいことまで考えてしまった。 は立ち上がり軽く伸びをする。 「さて、そろそろ帰ろうか、岱君」 「え、今日一日って約束では」 「約束って言うより私が一方的に連れまわしただけだしね」 「そんな風には思っておりませんよ」 「お姫様が心配でしょうからね、早く戻って仕事手伝ってあげてよ」 「殿」 馬岱も立ち上がる。 「喧嘩しっぱなしってのは岱君、嫌でしょ?大好きな従兄上と仲直りしたいでしょ?」 「はい」 否定せずにはっきり頷いた馬岱には苦笑してしまう。 大好きな従兄上には私はまだまだ敵わないのかなと。 二人が城へ戻ろうとすると、いつの間にか馬超が立っている。 偉そうに腕を組んで。 「あれ〜馬超何しているのかな?岱君探しにきたの?」 「ち、違う。俺は単に散歩しているだけだ」 「そうかな?」 が口の端をあげてニヤッと笑う。 「仕事が捗らないから気晴らしに散歩に出ただけだ」 「あ〜岱君がいないから何も出来なくて、岱君を探しにきたのね。流石お姫様」 「ち、違う。散歩だ、散歩!」 カーッと顔を赤くした馬超。 大笑いする。 「従兄上。今、戻りますから。仕事しましょうね」 馬岱が笑むので馬超は応じる。 「お、おぅ」 「馬超も可愛いなぁ」 「な、なんだよ、!」 「従兄上は照れ屋なのですよ、殿」 「だろうね」 は二人より少し前を一人で歩く。 喧嘩していたという二人に気を使って。 「…岱」 「はい」 「その……昨夜は悪かったな」 まっすぐ前を見ながら呟く馬超。 馬岱にはちゃんと聞こえていたので、首を横に振る。 「私も余計な口出しをしてしまったので」 「んな事ねーよ」 馬岱の髪をくしゃりと軽く撫でる馬超。 「お前がいるから、俺は後ろも見ずに進めるんだよ。いつも悪ぃな」 「従兄上…」 後ろの二人がちゃんと仲直りしたようなでも笑んでしまう。 さっきと違って茶化すと馬超がへそを曲げそうなので余計な事は言わないで、そのまま二人とは別方向へと足を向ける。 当初の予定より多少ずれたが、これから星彩のところにでも行ってみようかと思って。 「殿!」 馬岱が走って追いかけてきた。 「ん?なに、岱君」 「あ、あの。今日はありがとうございました」 「私は何もしていないよ?」 「殿が連れ出してくれたから、いつまでも悩むことなく従兄上と仲直りできましたし」 「岱君が素直だったからじゃないの?私は何もしていないよ」 「でも」 「ほら、馬超を待たせると逃げられちゃうよ?」 いつもだとそうなのだが。 「あの、殿」 「ん?」 「今度、私の非番の日で良ければ、今日の穴埋めをさせてください」 「え、い、いいよ。別に穴埋めってほどでもないし」 「私が…」 馬岱は少し恥ずかしそうにしながら言う。 「私がもう少しあなたと一緒にいたいなと…思ったので…」 は一瞬呆けるもすぐさま顔が赤くなる。 後ろの方で馬超が早くしろと急かすので馬岱は慌てて彼の元へ走り出す。 「殿、楽しみにしていますからね」 と言葉を残して。 は返事をちゃんとできなかったのが、両手で頬を軽く覆い摩った。 赤くなった顔はいまだ戻らず。 でも悪い気持ちはまったくなくて口元は緩みっぱなしだ。 「岱君の非番っていつだろ」 も早くその日が来ないかと、心弾ませ歩き出すのだった。 当然無双6発売前なので、可愛い系の馬岱君です。
二人の喧嘩は人参が食べられないとかそんなくだらないものだと思いますw
05/08/08
12/11/04再UP
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