姫と二人の舎弟。




ドリーム小説
「水賊?…幼平が?」

「そーっすよ、知らなかったんすか?姫様」

「知らなかったわ。だって、幼平が策兄様の配下になった頃、私小さかったのよ?」

「へぇ…そんな頃から知っている子を幼平殿は…」

「公績殿、誤解していないかしら?」

「お前むっつりだもんなぁ」

「な!お前に言われたくないっての、甘寧!」

和やかな午後の一時とでも言えば良いのだろうか?
最近では寝込むことがなくなった孫呉の末姫
今日は兄配下の凌統、甘寧とお話していた。

凌統と甘寧。
この二人少し前までは顔を合わせば喧嘩ばかりしていた間柄だったが、最近は一緒にいることが多かった。
ようは丸くなったってことだ。

甘寧が元水賊だと言う話をしてくれた。
そして周泰もそうだと言うことには驚いたのだ。

「だからつーわけでもないっすけどね、旦那とは結構気が合うんすよね」

孫呉に降った時も最初に仲良くなったのは周泰だと言う。

「そうなの、知らなかったわ」

「まぁ、今は孫呉に仕える身ですからいーんじゃないですか?」

「そうだけど…うーん…」

「姫様?」

「え、なんすか?出自がどうのって気にするとか言うんじゃねーでしょうね?」

そんな事になったら、余計な事を言ってしまった俺はどうすれば良いのだと甘寧は焦る。
周泰の立場などが悪くなったら困るじゃないか。
でもは両手を振って違うと答える。

「まさか、そんなことないわ」

「ならいーっすけど」

「じゃあ何を気になさっているのですか?」

「えー…そのね…」

は少し頬を赤く染める。
手元をもじもじさせながら。
そんな顔をされると可愛いじゃないかと普通に野郎二人は思ってしまうのだが。

「私、案外幼平のことを知らないなぁって思ったの」

「そうですか?」

「そうなのよ」

凌統と甘寧は顔を見合わせる。

「別にいいんじゃないっすか?」

「そうですよ。何も不都合などないでしょ?」

「そうだけど…ねぇ、二人は幼平の事どのくらい知っているのかしら」

と聞かれても…。
甘寧は頭を掻き凌統は顎に手をかけ考え込む。

「旦那は…戦場じゃすげー頼りになる奴っすよ?苦戦している時に背中任せて安心できるしよ」

「へぇ、そいつは知らなかったな」

「な、なんだよ。お前だってそう思うだろ?」

「まぁね」

凌統が少し拗ねたようにには見えた。
以前は敵対していたが、今では信頼しきっているのだろう。
でも戦場でアイツの方が頼りになると言われて凌統には少し面白くないのかもしれない。

「あ、酒。幼平殿は結構飲みますよ」

「だな。何せ若殿と飲んでも平然としてるし」

「権兄様と?」

普段は大人しい兄なのに、酒が入ると人が変わる。
飲む量も半端じゃないのだが、最後には寝てしまう。
その時に唯一残っているのが周泰らしい。

「甘いものとか結構平気で食うよなぁ」

「そう。顔色変えずに一人で餡子が入った菓子とか食ってるし」

「俺は甘いものあんま好かないから見てて胸焼けする」

「アンタのことはどうでもいっての」

「結構お人好しな面もあるよなぁ」

二人は自分たちが見る周泰の姿ってのを教えてくれる。
そう頼んだのはなのだが、なんとなく落ち込んでしまう。

「あ、あれ。姫様?」

「私…本当に幼平のこと知らないのね…」

「「………」」

落ち込ませてしまった?
再び顔を見合わせる二人。
急に小声になる。

「おい、どーすんだよ!こんなの旦那にバレたらやばいぞ」

「言われなくてもわかってるっての」

「…幼平と出会ってもう何年になるんだっけ…はぁ」

ヤバイ。
本当にヤバイ。
周泰に姫を落ち込ませたって知ったら後が怖い。

「あ、あの〜気にする事ないですよ。むしろ知らなくてもいいことかも」

凌統が声をかけてもの目は寂しそうだった。

「………」

二人ともどうしたら良いのかわからず言葉も出なかった。

だが、突然。

「よし!二人とも着いてきてちょうだい」

「は?」

「どこにっすか?」

は拳を握ったかと思うと立ち上がった。

「今日一日の幼平を観察します」

「か、観察って」

「確かに私は幼平のこと知らないけど、その分知ることができるわ。ついでに普段何をしているのかが見たいわ。二人とも手伝ってちょうだい」

「「………」」

いつからこんな性格になったのだろうか?
どことなくすでに嫁いでしまったもう一人の姫が思いだされる。

「孫家の血なんだろうなぁ」

「あ、俺もそう思った」

「ほら!行くわよ、二人とも〜」

俺らの返答は無視ですかと思いつつも。
病弱だった姫が元気ですごしているならば良いかと思い二人は付き合うことにした。
そして姫の後を追った。



***



「と、普段は殿の護衛ってことだけど、内政の時間は鍛錬してますね」

午前中は己を鍛えているらしい。
三人は上から鍛錬場が見える呂蒙の執務室にいた。

「お前たち…それに姫様まで…」

「悪いな、おっさん。姫様の頼みなんでよ」

周泰にばれないように隠れて上から見ている
呂蒙の声など耳に入っていない様子だ。

「自分の鍛錬も怠らないけど、下の者たちをあーやって指導もしているんですよ」

「幼平の指導は厳しいのかしら?」

「どうでしょうかね?あの馬鹿よりは良いと思いますよ」

と甘寧を指差す凌統。
甘寧は呂蒙と談笑しているから気付かない。
気付いたら煩いのだが。

「そうなの?興覇殿は厳しそうには見えないわ」

「厳しいわけじゃなくて、加減を知らないんですよ、自分基準で考えるから」

「まぁ」

「あ、姫様。伏せて」

「?」

言われたとおりに頭を隠す
凌統は手を振っている。

「公績殿?」

「幼平殿ってカンがいいですからね…こっち見てますよ」

「あら、もう見つかってしまったかしら?」

「大丈夫のようですよ」

そして数分後に周泰が移動したので三人も移動した。
ちゃんと呂蒙に礼を言って。

「次はどこかしら?」

「時間的に昼餉っすよ」

「普段、どこで食べているの?」

「休憩所で俺らなんかと大勢で食いますよ」

あそこは食堂も兼用しているから。
でも流石にそこにを連れて行けば周泰に見つかる。

「と、姫様も部屋に戻らないと」

彼女は自分の部屋でいつも食しているから。
でもはこのまま周泰観察を実行するのだという。

「でも腹空かないっすか?…ちょっと待っててくださいね」

甘寧は一人で休憩所のほうに向かっていく。

「お待ちどうさまっす〜はい、姫様」

戻ってきた甘寧の手にはおにぎりがあった。

「アンタね、姫様にここで食えって言うのかよ」

「いいのよ、公績殿。ありがとう興覇殿。美味しく頂きますわ」

「あ、場所移動しましょうや。向こうからなら旦那にもばれないっすよ」

と甘寧が言う場所に移動する。
ちょうど茂みになっている部分だ。
凌統は少しこめかみが引きつる。

「本当に…アンタは…」

「いーじゃんか。旦那を観察するには最適だろ?」

「俺らは良くても姫様…いつのまにそんなに図太く…いえ逞しくなったのですか…」

は平気でおにぎりを頬張っている。
着物の裾が地に付いているし。
昔はこんな姫じゃなかったのになぁと凌統は幼い頃を思いださずにはいられなかった。

「あら子義殿とご一緒のようね」

「あと、周りにいるのが旦那の護衛兵たちっすよ」

「あらあら、幼平でも結構笑うのね。なんかいいもの見ちゃったわ」

「…いつもどんな幼平殿を見ているのですか、姫様…」

自分と一緒の時だって笑うでしょうがと思う。

「鍛錬所でもそうだったけど、幼平は下の者にも好かれているのようね」

「そうですね。無口ってことで最初は敬遠されがちですがね」

「わかるわ、それ!私も最初そうだったの〜幼平ったら何も言わないでしょ?怒ってるのかなとか思ったの」

おかげで少しばかり打ち解けるのに時間がかかった。
ようやくって頃には彼は孫権の護衛になってしまった。

「実際付き合ってみないとわからないっすよね」

「そうよね。公績殿もそう思うでしょ?」

「え?あ〜まぁそうですね」

が笑うので凌統は照れながら前髪を掻き揚げる。

「良かったわ。二人が仲良くなってくれて」

「「………」」

などと笑っているといつのまにか周泰の姿は消えていた。
休憩時間が終わったのだろう。
一緒にいた太史慈たちの姿もない。
たちもすでに食べ終えていたので次へと移動する。

「と思ったのですが、午後の幼平殿の予定って俺知らないんですよね」

「俺も」

「そうなの?」

三人渡り廊下で立ち尽くしてしまう。

「姫様と一緒じゃないんすか?この時間って」

「そうですよ、幼平殿を共に連れて城下に行ってますよね」

「あら」

は首を傾げる。
毎日ではないが当たり前になっていて気がつかなったようだ。

「ッてことはここらで終了にしましょうや」

「そうだよな…姫様、部屋に戻られた方がいいですよ」

「そうね、そうしようかしら?…でも夕方になったらまた手伝ってくれる?」

本当に一日追いかける気らしい。
そこまでしなくても半日だけで結構わかったのではないかと思うのだが。

「姫様、それはまた別の日にでもしましょうや」

「えー今日がいい」

「あのですねぇ」

こんな所で駄々こねていると周泰にバレますよと凌統は言いたかったのだが、別の者の声に遮られた。

「凌統!甘寧!」

二人が振り返ると周瑜と陸遜が駆けて来る。

「どうしたんすか?都督殿」

「あぁ、実は…姫様」

「こんにちは公瑾様。どうかなさったのですか?」

午前中の内政を終えた後に孫策が昼を食べにいった。
だが午後の内政の時間になっても戻ってこない。
部屋に向かうと、

『あとは権に任せる』

の一言だけ書かれた紙が置いてあったので今、探している最中とのことだ。

「見かけませんでしたか?孫策を」

「いいえ。でも内政は権兄様中心ではなったのですか?」

「そうですが、アレでも一応君主なので…孫権様ご自身も忙しいのですよ」

「まぁ」

「とりあえず、二人にも探して欲しい。では、行くぞ陸遜」

「はい」

周瑜は陸遜を連れて忙しなく駆けて行く。
なんとなくソレを見送る三人だったが、凌統が納得したような声を出す。

「あぁ。じゃあ幼平殿もいないわけですよ。多分殿を探しに外に出てますね」

「んじゃ、行くか。俺らも」

探せと言われたわけだし。
孫策の事だ、暢気に散歩でもしているのだろう。
凌統と甘寧は歩き出すが、当然のようにも後に続いた。

「「姫様」」

「私も一緒に行くわ。幼平観察の続きよ」

「危ないですよ」

「平気よ。お二人が一緒ですもの」

「そりゃあ…姫様を危険な目に遭わす様なことしませんが」

「ね?早く行きましょう」

楽しげに歩くに足取りが重くなる二人だった。



孫策探しと周泰観察は城を出た辺りであっさり終了した。

「なんだ、。どうした?」

「策兄様…もう見つかったのですね」

「…姫…どこへ行かれるおつもりだったのですか?…」

「お二人と一緒に策兄様探しに」

うわっ。正直に言わないでくれと二人は慌てる。
に言われて視線を二人に移す周泰。

(お〜怖ぇ。睨んでやがる)

(何?俺らが悪いわけ?まったく幼平殿は姫様のこととなると人が変わるよなぁ)

孫策だけがよくわからない様子だ。

「さぁて、それじゃあ行くとしましょうか、殿」

「そうっすよね、都督殿がお待ちっすよ」

孫策の脇を固める凌統に甘寧。

「あ?なんだよ、お前ら」

「さ、行きましょうや」

「姫様、俺らはこれで〜」

「はい、お二人ともありがとうございました」

は笑顔で手を振り三人を見送った。
その姿が消えたところで周泰が溜め息をついた。

「…。何をしていたか聞いても宜しいか?…」

「あら、何って?」

「…ずっと俺の様子を見ていたようでしたが?…」

「………」

「…わからないとでもお思いですか?…」

「んもう!幼平の馬鹿。それじゃあ面白くないわ」

は軽く頬を膨らませる。
凌統と甘寧のみならば周泰の様子を伺っていたのを気付かないでいたかもしれない。
向こうも気配などに敏感だし。
でもは違う。
半日、ずっと視線を送り続けていたらわかると言うもの。

それにいつも一緒にいた人だし。

「…着物を汚してまで…あとで叱られても俺は知りませんから…」

「結構楽しかったのよ。お二人が色々教えてくれたから」

「……」

それでも一応とは理由を話した。
話している間中、は嬉しくてしょうがないらしい。
手振りをつけて説明する姿はまだ子どもと言っても可笑しくない。
それでもそんな彼女が愛しく思えるようで周泰の目は優しい。

「…別に俺などを観察しても楽しくないと思いますが?…」

「楽しかったわ、私の知らない幼平の姿が見れたし」

「…俺は少し面白くなかった…」

ぼそりと呟く周泰。

「?」

そしてある方向を一睨みしてからに向かう。

「…。どこかへ行きますか?…時間はまだありますから…」

「えぇ、行きたいわ。ね、幼平まだ聞いてほしい事あるのよ」

「…歩きながら聞きますから…」

「じゃあ行きましょう、幼平」

「…はい…」

笑顔で周泰の腕をとり歩き出す
きっとこの後の時間、二人は楽しくすごすのだろう。






「…知らなくていいことだよな、確かに…」

「だよな。…旦那の奴すげー睨んでんだもん」

柱の影から凌統と甘寧が顔を出す。

「覘いてたのバレてたな、確実に」

「まぁな。姫様はあーゆーとこ気付いてないようだから、別にいいけど」

「だよなぁ…旦那って結構」

二人は呆れた顔をした。

「「ヤキモチ妬きだよな」」








これもリクでした。でもって、無双4へと舞台が移ったので凌統君も登場となりました。
周泰君は無意識で姫が好きでしょうがないみたいですね。
そして相変わらず策だけは気づいていないようだ。
05/11/07
12/09/02再UP