姫と不安なある日。




ドリーム小説
最近の姫様の健康状態は良かった。
一時、熱を出して寝込んでいたものの、最近では寝込む事も少なくなり。
よく、城内や城下で歩いている姿が見られる。

その隣にはいつも、長身で無口な騎士様が一緒にいる。

それが姫と騎士様の日常。





「最近、元気いーじゃねーか、

「はい、策兄様。元気いっぱいです」

が城内を散策中に長兄孫策と出会った。
孫策は鍛錬所にて、兵士相手に手合わせしていたらしい。
疲れきって、倒れている兵士がなんとも言えない。
兄はケロッとしているし。

「元気でいるってのはいーもんだぜ」

「いつも策兄様たちに心配ばかりかけてごめんなさい」

「いいってことよ。お前が元気ならいいさ」

くしゃっと、の頭を撫でる孫策。
孫策に頭を撫でられるのは好きだ。
亡き父を思い出す。
孫策は兄であり父親代わりでもあるのだ。

「そう言えば、策兄様。幼平は一緒ではありませんの?」

「あ?幼平?」

「はい、いつもご一緒ではないですか、最近姿を見ないのですが」

幼平=周泰は孫策の護衛を任されている。
なので、普段は彼と一緒にいることが多い。

「いつも一緒なのはお前だろ?」

「わ、私は」

「あいつは休暇中だ」

「え?休暇中?」

「あぁ…(ってこいつには黙ってろって言われたんだよなぁ)」

孫策は数回頭を掻く。

「知りませんでした、幼平ってば黙って休暇とるなんて」

「いいじゃねーか。たまには休ませてやれよ」

「そうですけど」

休暇を取ったなら、遊びに行きたいと思ってしまう。
何よりも、に黙ってってのが彼女は面白くないらしい。

「なに膨れた面してるんだよ」

「別に」

(本当のこと、教えてやりたいけど、権が駄目だって言うしなぁ)

実は周泰は表向きは休暇扱いになっているが、実は病欠だった。
単純に風邪なのだが。
珍しく熱を出してしまったので、休んでいるのだが、これがに知れたら心配させてしまうだろうし、もしかしたら見舞いに来るかもしれない。
なので、黙っていてくれと周泰が次兄孫権に頼んだのだ。

で、孫権が兄にこう言う訳だからと。

でも休暇中って理由にしないで、どこぞに偵察の任だとか遠征に行ったってことにすればいいのに。
と孫策は思ったのだが、軍のほとんどが動いてないので、遠征に行ったッてことはできないと考えたらしい。

(別にいいじゃねーか、見舞いぐらいよ…あ、にうつったらマズイってことか?)

普通の体力の持ち主ならば、ちょっと見舞いに言ったぐらいじゃうつりはしないだろうが
元々からだが弱いなので可能性は高い。

(ま、しょうがねーか)

「策兄様」

「ん?」

「何か隠してませんか?」

「は?隠すってなんだよ」

「先ほど、権兄様にも尋ねたのですが、幼平は休暇中の一点張りでなにか怪しいのですけど」

「休暇は休暇だろ?休暇としかこっちは聞いてないんだ、答えようがねぇよ」

「ですけど、何か可笑しいです〜」

うわ、鋭い。
女の勘か?

「…なんも可笑しくねーよ」

孫策は軽くの額を指で弾いた。
その場は渋々引き下がっただったが、結局バレたのである。

どっかの熱血武将さんが、ポロリと漏らしたらしい…。



***



周泰が仕事を休んで3日目。
熱も大分下がって良くなりかけた頃…。

「あ、あの幼平様…」

「…なんだ?…」

寝ているだけの生活に飽きてきた周泰の元に、使用人の一人が何かを言いにくそうに切り出した。

「お、お客様がいらしているのですが…」

「…客?…」

「はい…その…様がお一人でいらしているのですが…」

「…な!…」

ばれたのか!
姫に内緒で療養していたのに、あっさりばれたのか。
周泰は一人で来たと言う姫を追い返すこともできないので、夜着に薄手の着物を着て部屋を出る。

接待室に通されていた
現れた周泰の顔を見て微笑む。

「幼平!起きてて平気なの?」

「…姫…お一人で来られたと言うのは本当ですか?…」

「えぇ。大丈夫よ、道に迷わず来れたのよ?」

「…はぁ…」

今頃、城では大騒ぎだろうなと、後のことを考えると頭痛がしてきた。
周泰の様子を見て、が彼の背中を押す。

「幼平。寝てなきゃ駄目よ。顔色が悪いわ。ほら、早く」

「…い、いえ。平気ですから…」

「駄目よ」

顔色が悪くなったのは誰のせいだ、誰の。

無理やり接待室から寝室へと押し返される。
そして、そのまま寝台へと押し込むように寝かされる周泰。
どことなくの目が輝いているのは気のせいだろうか?

「安心して休んでね、幼平。私がしっかり看病するから」

「…は?…」

「私があなたの看病をするの。任せてちょうだい!」

パンと自分の胸を力強く叩く
見舞いに来たのではなく、看病をしに来たと。

「…いえ、そのようなことあなたがなさる必要はないですから…それに、看病されるような病状でもありませんので…」

「いいから、寝てて幼平」

聞いちゃいねぇ…。

ふぅ、と溜め息を吐いて仕方なく横になる。
看病と言っても、側にいるだけなら大丈夫だろう。

にしても、人の気も知らないでと、周泰は愚痴りたくなる。
自分の風邪がもしにでもうつったらどうするのだと。
の場合、完治するのに自分の何倍もかかるというのに。

は寝台の側に椅子を持ってきて腰を下ろしている。
自分が彼女を下から見上げるのは初めてだと周泰は気づいた。
ふと、もれるの笑い。

「…どうかしましたか?…」

「あ、ううん。なんか初めてだなぁって。いつもは逆なのにね」

も同じことを思ったらしい。

「なんか嬉しいの。自分でも何かしてあげれることってあるんだなって思うと」

勝手に押しかけちゃったけどね、とは小さく舌を出す。

正直な話、後のことを考えると頭痛はするが、大切な人が側にいてくれるのは嬉しい。
たかが風邪なのだが、どこか気落ちしていたらしい。
全快したならば、孫策と孫権に怒られてしまうかもしれないが、黙って受け入れよう。

今は、姫と離れたくないから…。





「…手…」

「なに、幼平?」

少し顔を逸らしながら、周泰が呟いた。

「…手を握っても宜しいですか?…」

「手?いいわよ、はい」

周泰の左手をは両手で包み込むように握ってくれた。

「幼平の手は大きいわね」

「…あなたの手が小さいのです、…」

「そうかな?」

軽くだけど、周泰がギュッと握り返してくれる。
にはそれだけでなんか嬉しく感じる。

病で倒れた時、自分もいつも寂しい思いをしていた。
子どもの頃は、我が侭言うまいと思って我慢してひとりで寝ていた。
それは大人になればなるほど我慢していく事になる。

身体も弱くて、政治はわからないし、武術もできない。
兄たちと違って、なんの役にも立たない自分。

でも、今は大切な人のそばにいれることが嬉しい。

こんな自分でも役に立てれるんだなって。
もっと言うなら、一番何かしてあげたい人の役に立てれると言う事が嬉しい。

熱のせいか、周泰の手は少し熱い。
いつも触れる彼の手は体温が低く冷たく感じていた。

「………」

「…?…」

「幼平、寝てもいいのよ?私はどこにも行かないから」

「………」

「安心して寝ててちょうだい」

「…早く治しますから…」

「うん」

「…あなたの隣に立ちますから…」

「うん」

周泰はゆっくりと身体を起こす。

「幼平、寝ててっば」

だが、周泰はまっすぐにを見る。
握られたままの左手。
空いている右手でそっとの頬に触れる。

「…だから、泣かないでください…」

「あ」

気がつかなかった。
自分が泣いているなんて。

「ご、ごめんなさい。なんで、泣くのかしら、私ってば」

安心して寝ててくれと言ったのは自分なのに、看病している相手に慰めてもらうとは恥ずかしい。
これでは、いつまでたっても周泰に心配ばかりかけてしまう。

「…また、散歩しましょう……」

「うん」

周泰はの身体を寄せて軽く抱きしめた。





数日のうちに周泰の風邪は完治した。
心配していたこと、へうつしてはいないかの点が大丈夫だった。
に風邪はうつることなく彼女は元気だった。



そして、はしゃぐ姫様を注意しながらも彼女のそばにいる騎士様の姿が、城下で見られたのだった。







リクでした。でもって、いつもと逆パターンでした。
04/08/06
12/09/02再UP