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今日、実家に帰った。 用事があって呼ばれた。とかではなく。 なんとなく、帰った。 暇だったこともあるから。 たまにはそんな日もあるんじゃないだろうか? 【抱き上げてくれるその腕が。】 久しぶりの非番。 隊舎にいてもすることがなかった。 鍛錬でも積めばいいのだろうが、生憎そんな気分にはなれなかった。 誰かを誘って遊びにでも。と言う気にもならなかった。 そしたら自然と実家へと向かっていた。 「ただいま」 不在かな?と少々心配であったが、玄関に鍵はかかっておらず。 一歩中へ入れば、弟妹達が出迎えてくれた。 「おかえりー。!」 「お土産は?お土産!」 の両手を取って、中へ招き入れる弟妹たち。 自分よりも土産が重要なのか?と小さく笑ってしまう。 「土産なんてねーよ」 「「えー」」 「ちょっとよっただけだからさ」 家の中は静かだった。 子供達で留守番をしていたようだ。 「二人は?」 「おとーさんはおしごと!」 「おかーさんはおとなりさん!」 回覧板でも回しに行ったのだろうか? そうか、修兵は仕事か。 まぁ予想通りというか、普通そうだろう。 単純に自分は非番なだけで、とそれが重なっただけのようだ。 自分が住んでいた頃とは広さも中身も違う家ではあるが、は知ってたるなんとやらで。 台所で茶を淹れ始める。 「、今日はどうしたの?」 「んー別に…暇だったから。邪魔なら帰るけど」 「じゃまじゃないよ!!ずっとうちにいればいいんだから!!」 寧ろ一緒に暮らしたいと弟妹たちは思ってくれているらしい。 この子たちが生まれた頃の自分は酷く捻くれていた。 なんでもない顔をしつつも、修兵との間に距離を作って寄り付きもしなかった。 数年ぶりに帰ったとき、成長していたこの子たちではあったが、幼い子の目から見て。 に懐こうとはしなかった。 にも責任はある。自分の周りをうろちょろする二人とも距離を取ったから。 それでも、修兵とも、とも話して、きっかけはズルをしたが、弟妹たちとも打ち解けた。 それ以来は逆に懐かれている。 ただ霊術院を卒業後、実家には戻らず住まいを隊舎へと移してしまったので。 弟妹達と会う時間は以前と変わらないものだ。 修兵やに頼みごとされて帰宅することが増えたくらいだろうか? だから、今日何気なく帰宅したことは珍しかった。 「、あそぼう!ね、あそぼう!」 さっきまでもずっと二人で遊んでいたらしい。 それもいいが、今茶を淹れたばかり。いま少しだけのんびりさせて欲しい。 「見ててやるから二人で遊んでろ」 後で一緒に遊ぼうと、それで納得したのか。 弟妹たちは庭で遊び始める。 「あら。君。お帰りなさい」 そこへが戻ってきた。 「お隣で頂いたのよ。君食べる?」 羊羹を貰ったそうだ。はが返事をする前に切り分けてくると台所へ行ってしまう。 が何気に帰っていたこがどうやらは嬉しいらしい。 「はい、食べて」 「ありがとう」 「今日はお休み?」 「うん」 羊羹を食べながら何てことない会話を進める。 最近の仕事の事など。 からすれば、は大先輩になるのだ。 隊によって細かい仕事は変わるが先輩からの教えとなれば、聞いて損はない。 修兵から言われると、照れもあるから悪態ついてしまいがちだが。 「私としては、君が怪我をしないでいてくれたらいいわ」 「そんなことも言ってられないと思うけどなぁ」 多少の怪我ぐらいとは思ってしまう。 けど、家族とすれば怪我はして欲しくないのだろう。 「あ。今日の夕飯は何にしようか?君の好きなものがいいかな?」 「別に俺に気を使わなくていいよ」 「気なんて使ってないわよ。君が帰ってくると嬉しいんだもの」 はりきるには小さく笑う。 家族ッてそんなものなのかなと。 でも、自分も誰かの為に準備するのも、食べて喜んでもらえるのは嫌じゃない。 面倒かと思う、その日の献立を考えるのは好きだった。 「その分、あの子達のこと見ていて欲しいんだけど、いいかな?」 「いいよ。それくらい」 の負担が減るのならば、お安い御用だ。は子守を引き受けた。 *** 庭で遊んでいる弟妹。 は縁側に腰を下ろし見ている。 二人しかいないのに、鬼ごっこをして上手く遊んでいるなぁと感心してしまう。 くるくる同じ所を回ってよく目が回らないものだ。 「つーかまえた!今度はがおに!」 鬼ごっこに参加していないのだが、真萩が座っているに抱きつくように飛び込んだ。 「え?俺?いいよ、お前らだけでやってろよ」 「もやるのー」 じゃないと離れないぞ、と言わんばかりである。 「疲れるーお前なー」 は真萩をひょいと持ち上げる。 「あはは、おもしろい!もっと!」 何か違う遊びに発展してしまったようだ。 は庭に出て、そのまま真萩を高く持ち上げる。 「あんま我がまま言うと、落とすぞ」 わざとらしく、フっと力を抜いてみせる。 怖がることなく、真萩は喜んでいる。 「萩いいな!ナコも!やる!」 次は自分だと撫子にもせがまれる。 仕方ない、公平にしないと喧嘩になるだろうと、撫子も持ち上げる。 一方にすればもう一方もとせがむ。 は交代で相手をするが、しばらくすると流石に腕が疲れてきた。 「けど…よっと…まだガキだよな…お前ら」 「?」 撫子を抱き上げている時にふと思った。 一人一人の体重はまだ軽い方だ。 長い事抱えていれば重く感じるのは仕方ない。 「ー萩も。萩も抱っこしてー」 真萩がの袴を引っ張る。 「は?」 「おとーさんは萩も抱っこしてくれるよー」 「…二人いっぺんに?」 「「うん」」 「嘘だぁ。二人は無理だろう、絶対、無理だ」 修兵は二人をいっぺんに抱えると言う。 言われても、子どもが言う戯言じゃないのか?とは信じない。 でも二人は嘘じゃないと言いはる。 「うそじゃないよー。おとーさんできるよー。はできないの?」 「あ…」 カチンと来た。修兵にできて自分にできないと思われたのがちょっと癇に障った。 「にゃろう。やってやろうじゃんか。来い、真萩」 まんまと乗せられたようにも思うが、はあえて乗る。 すでに右腕で撫子を抱えている。 というより両手で抱えていたのだが、さらに真萩を抱えるのか…。 「げ…」 左腕一本で真萩を抱え込もうとするが、思った以上に力が入らない。 「…嘘だろ…」 修兵は二人をいっぺんに持ち上げられるのか。 「って〜…うぉりゃ!」 負けるものかと意地で真萩も持ち上げる。 「「たかい、たかい!」」 「ちょ…あまりはしゃぐな…バランスとれ、ねぇ…」 ふらつく体。 小さい二人とはいえ、重いものは重い。 修兵は二人を本当に抱えられるのか? が思うに、そんなことができるのは七番隊隊長狛村ならばとなんとなく思う。 体も人より大きい彼ならばと。 「うわっ!」 後ろに倒れこむかと思えば、何かがを支えてくれた。 「お前、なーにやってんだ?」 呆れた声が頭の上から降ってきた。 「「おとーさん!!」」 弟妹は父親の帰宅に喜び、器用にから乗り換える。 「ただいま」 「「おかえりなさーい!」」 難なく二人を抱える修兵。 (マジで…) それに比べて自分は何だ。子ども二人抱えられないとは。 軽いショックを受ける。 父親との差を見せ付けられたような気がする。 思い返せば、腕立て伏せをしていた時に、弟妹が上から乗ってきたことがあった。 あの時も自分は重みに耐えられず潰れたような覚えがある。 (鬼道とか剣術とかじゃなくて、今の俺に足りないものって筋力か!?) きっとそうに違いない。 よし、隊舎に戻って今一度鍛えなおそう。 誰か相手をしてくれるものはいないだろうか? 一護辺りを引っ張ってくるのもいいし、恋次に師事してもらうものいいような気がする。 そういえば、八番隊だかに異様に筋肉自慢をしていた者がいなかっただろうか? 「?」 修兵に呼ばれてはたと気付く。 「あ。俺、帰る」 「おい、待て待て待て。人の顔を見て帰るってなんだよ。軽くへこむじゃねぇか」 「いや、用事できたし」 の作る夕飯には後ろ髪を引かれる思いだが、今こうしようと思い立つとそっちへ気が向いてしまうようだ。 「お帰りなさいませ」 庭先での声に気づいたのか、が顔を出す。 玄関からではなく庭に一番へ向かった旦那様には、相変わらず息子が一番かと笑ってしまう。 「おう、ただいま。、いいから帰るなよ」 「君?」 も縁側から降りてくる。 「もうすぐ夕飯できるわよ?」 「え?あー……姉ちゃん」 「?」 逡巡してからはの向かいに立つ。 「ちょっとごめんね」 「君?え!?」 はを持ち抱える。 「……って。重い……」 を持ち抱えるも、すぐに下ろしてしまう。 「ちょ、ちょっと!君!私そんなに重いの!?嘘でしょ!」 が両膝を着いてしまっているので、は余計に焦る。 「俺、こんなに力ねぇの?…ヤバクね?」 「。重いのか?」 「修兵さん!」 だが忘れてはいないだろうか? は散々弟妹達を抱えて遊んでいたのだ。両腕が疲れきっていることを。 *** 夕飯を食べながら、先ほどの出来事を話した。 本当はバカにされるのが嫌で内緒にしたかったのだが、修兵がしつこく聞いてくるから仕方なく話す。 それに自分の「重い」発言をが気にしていたからだ。 だが案の定修兵に笑われたのは言うまでもない。 隊舎に帰ろうかとも思ったが、そのまま家で寝て出勤すればいいだろうと言われた。 弟妹と遊んで疲れた事もあったし、はそうする事にした。 弟妹がと風呂に入っている間、修兵と居間でなんとなく過ごしていた。 (…そういや、修兵って昔から俺のことも軽く持ち上げていたよな…) 弟妹たちより、もっと大きな自分をだ。 何かあればヒョイと持ち上げる。 重いとか言われた事もない。 (シロさんも軽く持ち上げてくれたけど) 大喧嘩をした時、泣いた自分をもち抱えてくれた修兵。 かじりついて泣いてしまったものだが、恥かしくもあり嬉しかったのを覚えている。 風邪で寝込めば、四番隊隊舎まで背負ってもくれたし。 何よりも。 『出て来い。ずっとそこにいる気か?いるならやっぱ陽の当たる場所がいいぞ』 『決まりだ。ほら、出ろ』 『か。俺は修兵。檜佐木修兵だ。お前は今日から檜佐木。決まりだ、俺が決めた』 一人ぼっちになってしまったあの時。 修兵だけが自分を見つけてくれ、手を差し伸べてくれた。 来いと言われても、不安があって。 おずおずと手を伸ばしたとき、修兵がしっかりと握ってそのまま抱きかかえてくれた。 (嬉しかったし、何より…結構嫌じゃないんだ) 簡単に自分を抱えた修兵。 腕力があるとかないとかではなく。 そうしてくれる行為が温かくて嬉しかったんだ。 家族って、父親ってそんな存在なのだろうか。 家族を守ってくれる存在。 抱き上げてくれるその腕が、とても力強くて、安心してしまうんだ。 「?」 「別になんでもない」 「なんでもないって…急に笑い出すから気味が悪いじゃねぇか」 あれこれ幼い頃を思い出していたら笑みが零れていたようだ。 「別に…。ただ親父はすげーなーって思っただけだ」 「はぁ?」 いつか自分にも守る家族ができるのだろうか? 今でも守ってもらっているような自分に。 その時は、修兵みたいに力強く、安心してもらえるような父親になれればいいなと思った。 双子ちゃんはチビ息子君より幼い設定です。
パパは力持ちですが、息子君は割と力ないですw
09/08/15
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