|
「、冬休みどうする?実家帰るんだろ?いつ頃だ?」 寮の同室である一護に聞かれた。 聞かれたは考えもせずに即答する。 「帰るなら正月明け。年内は帰る気はない」 二人は教室にいた。 テストも終わり、さっきも話に出たとおり、冬休み直前で大体の授業は終わっている。 「はぁ?なんでだよ。もう親父さんたちとのわだかまり消えたんだろ?」 夏休みだって帰ったじゃないか。一護は不思議そうに首を傾げる。 6回生になる直前。今までずっと悩んでいたこと、積もり積もってせき止めていた思いがあったが。 今は解消されて、いい家族関係を築いているはずだ。 「帰ったけど…いいだろ、別に」 「また親父さんが悲しむぞ」 「今までだって帰らなかったこともあるんだ、問題ない」 そうだろうか?あそこんちの親子愛は度が過ぎるほどだ。 今頃家族総出で息子の出迎え準備をしているに違いないと一護は思う。 「そういうお前はどうするんだ?」 「俺?俺も別に予定はないけど。あ、正月に浮竹さんに挨拶はしに行くけど」 「シロさんかぁ…俺も挨拶しに行かないとな」 一緒に行こうか。などとそんな話をしながら教室を出た。 いくつになっても浮竹からみれば自分は子どもなんだろうな。 そう言う事を思い出す。毎年毎年お年玉をもらってしまうのだ。 「俺と君は友だちだよ」 などと言いながらも。 友だちならお年玉など渡すことはないだろうに。 だけど、現金なものでくれると言うのだからと素直に毎年もらってしまう自分が居る。 「なぁ。さっきの話だけどさ。なんで帰るつもりないんだ?」 帰らない。のではなく、年内は帰らない。そう言っているのだ、は。 「なんでって…あ」 校門を出たところで見慣れた子どもたちがぴょんぴょんと跳ねている。 「「ー!!」」 その子どもたちの後ろを死覇装姿の女性が笑顔で控えていた。 「はぁ……汚ねぇぞ、修兵…」 は盛大に溜め息を吐いた。 死覇装姿の女性と子どもたちがの前にやってくる。 「君。待っていたわよ」 子どもたち、真萩と撫子の母親であり、にとっても義母でもある。 「姉ちゃん…なんで待っているのかな?」 「電話よりも直接聞いた方が早いと思って。いつ帰ってくるの?」 弟妹たちもが帰ってくるのが待遠しいとそわそわしている。 「しょ…正月明けくらいに…」 「ダメよ。クリスマスも正月もうちでやるって決めたんだから」 学院は明後日までだ。 だから終わったらそのまま帰って来い。そう言いたいのだろう。 「クリスマスはともかく、お正月は家に居ないとダメよ?」 「………明後日帰る」 端からそう決められていたのだろう、の返事には満足そうに頷いた。 「良かったわね。もうすぐお兄ちゃん帰ってくるわよ」 「「わーい!」」 待ってるわよ。とは手を振り弟妹たちを連れて帰っていった。 「本当、修兵の奴汚ねぇよ…姉ちゃん使ってよー」 浮竹にも頭は上がらないが、にも上がらない。 上がらないと言うより、面と向かって言われたら無下にできない。それがだ。 修兵自身が言ってもきっと反発するのが目に見えるから。 「まぁいいじゃん。少し早めに帰省するってだけだろ?」 「かもしれないけど、この時期帰るのは面倒だから嫌なんだよ」 「なんで?」 「……大掃除があるだろ」 ほとんど居もしない家を、自分が掃除に借り出されると思うと嫌なのだ。 それにの性格上手を抜いて掃除などできやしない。 そんな理由。 【一緒に笑って泣いて怒って。】 「クリスマスプレゼントねぇ」 共働きの両親に変わって弟妹達の面倒を見ていた。 もうすぐクリスマスだと弟妹たちは騒いでいる。 「おとうさんに、サンタさんからのプレゼントは何がいいかきめておきなさいって」 去年は可愛い小物入れを貰ったとか。撫子も今年は何をお願いしようかと迷っているらしい。 「へぇ…お父さんに言われたのか…可愛げのある子どもでよかったな、本当」 昼食時、今日は具沢山のおにぎりと野菜たっぷりの味噌汁にした。 が帰宅すると、日中の家事はに変わって自然とするようになっていた。 今までしてきたことだし、もそれが苦に思わない。 弟妹たちの扱いも最近慣れてきた。 「は?はサンタさんになにをおねがいするの?」 「俺ぇ?俺はもうそんな年じゃないから、サンタさんは来ないよ」 「「えー」」 寧ろサンタさんの正体を知っているのでなんとも言えない。 思えば、昔はよく聞かれたものだ。 「クリスマスプレゼントは何が欲しいんだ?サンタってのがいるらしいぞ」 などと。 残念ながらリアリストまでは行かないが、サンタクロースの正体を知ってしまっているには。 苦笑しかでないイベントだった。 自分でも可愛げのない子どもだとわかっていたからだ。 流石に真萩と撫子はその正体を疑うことはないようだ。 (死神がサンタクロースってなんだかなー…大体あれって現世のイベントだろ?) 現世との文化レベルが違う尸魂界では、独自の文化が築かれているものの。 現世へ派遣された死神たちが、何かしらその文化に影響されて情報や品を持ち帰ることが多々あった。 イベントの類は特にそうだ。 クリスマス、バレンタイン。本当様々な。 「でも、もお願いしたらきっとサンタさんプレゼントくれるよー」 うわぁ。そのサンタさんの喜ぶ顔が眼に浮かぶ。 「俺はいいって。言ったろ?子どもじゃないんだからさ。大人にはサンタは来ないの」 「えー」 「ほら、いいから。早く食べろ。手が止まってる」 喋るのに夢中になりすぎだ。 「ー。おみそしるににんじんはいってる…」 撫子はニンジンが嫌いなようだ。 「あぁ。入っているけど、それが何?残すなよ」 「………」 撫子は口を尖らせる。頑として食べたくないのだろう。 自分は好き嫌いなんか考えずに食べてきたから、この感覚はよくわからない。 食べないと、空腹で倒れてしまうからだ。 食べられると言うのがどんなに幸せだっただろうか。 真萩のほうを見ると、真萩はしっかり食べている。双子でも好き嫌いは違うという事だろうか? 「真萩は食ってるじゃん。よし、萩。今夜の夕食、萩の好きなもの作ってやるぞ」 こういうやり方は逆効果になるだろうか?子育てに関してはよくわからない。 けど、は子どもたちに甘い部分があるから、自分までも甘くなるつもりはない。 案の定、真萩は喜び、撫子は項垂れ頬を膨らましている。 「萩ね、萩。ハンバーグがいい!はっぱがはいってるハンバーグ!!」 好きなものと言われて喜び手を上げて言う真萩。 「はっぱ?・・・あぁ、大葉か。そうだな、それにすっか」 だが撫子が反対する。 「いーやー!あれ、歯とかにひっかかるからいや!」 「双子でも、本当食の好みは別なんだな。男女の違いか?」 のん気にそんなことを口にしてしまう。 「だけど、萩は好き嫌いしないで食ったからな。今晩は萩の好きなもので決まり」 「む……ぅ…のバカ…」 キュッと小さな手を膝の上で握る撫子。 「あぁ?バカって…お前ねぇ」 俺が悪いのか?と上から目線で呆れた顔をする。 「はぁ…嫌なら食わなくていい」 食べなくてもいいという言葉に撫子は笑みを浮かべて喜んでしまう。 キライなニンジンを食べずに済むと思って。 だけど、の顔は呆れるとは反して不機嫌になっている。 食べたものを片づけるその背中に撫子は声をかけられなかった。 *** 「ー!お前はサンタさんに何が欲しいか決まっているか?」 今日は少々帰宅が遅くなった修兵と。 九番隊で忘年会があったようで機嫌よくに絡んでくる。 は鬱陶しいと肩に回された腕を振り切る。 「サンタさんって年じゃねぇよ。それにサンタさんは修兵だろ?」 「あ!バカ、バラすな!もしチビたちに聞かれていたらどうする?子どもの夢を壊しちゃだめだ」 大真面目な修兵には溜め息が出る。 死神がサンタクロースって本当になんだよと、ツッコミをいれたいがあえて口に出さない。 今はそんな話はどうでもいいのだ。 「君。ごめんね、遅くなっちゃって」 がお茶を淹れてくれた。帰宅早々にそんなことをさせてしまったのは少々申し訳ない。 「いいよ。これと言ってなんもしてないから」 「お前、には素直だよな…」 「羨ましいか、修兵」 照れることもなく、逆に鼻で笑う。 「あぁ羨ましいぞ。お父さんの前でももっと素直になれっての」 「阿呆」 即答のに修兵は肩を落とす。 は二人の様子にくすくすと笑うも、相変わらずの発言を繰り返した。 「そんな事言っても、君がお父さんのこと大好きなのは変わりませんよ?」 「姉ちゃん!」 「昔からずっとそうでしたからね」 今度こそ顔を赤くするに、にやにや笑う修兵。 立場が一気に逆転したようだ。 「まぁ。がお父さん大好きなのはいいとして…「よくねぇよ!!」 修兵はが淹れてくれたお茶を飲み一呼吸置く。 「で?何があった?苛々して」 いつもと変わりない。そうには見えていたのに、修兵にはの精神状態がいつもと違うことに気づいたようだ。 正確には朝と違う微妙な霊圧の変化。だろうか。 「別に…」 「お前はすぐに溜め込んで隠す癖があるからな。はっきり言えよ。聞いてやるって言ってんだから」 もう長いことの父親をやっているのだ。そのくらいお見通しだ。 義父とはいえ、腐ってもの父なのだ修兵は。 「あ。もしかして食べていないおかずのこと?」 が思い出したように言う。 帰宅後、お茶を淹れようと台所へ行ったとき、一人分の食事がポツンと残っていた。 冷め切っているハンバーグが。 作りすぎたとは思えないし、今日の夕食はいらないと修兵とは最初から伝えていたこともある。 「おかず?」 の顔がむくれる。 「撫子がメシいらねぇって拗ねてんだよ」 「あら」 「真萩は?」 「萩は食ったよ。昼飯を残さず食べたから萩の好きなもの作ってやるって言ったんだよ」 は昼間の出来事を二人に話す。 撫子のニンジン嫌いは相当なもののようで、も手こずっているそうだ。 「なぁ。俺が悪いわけ?好き嫌いするなって言っただけじゃん」 過去の暮らしや、流魂街での暮らしを思えばそんなこと言っていられないと思うのだ。 霊力のない人々はまだいいかもしれない。 けど霊力に目覚めた人にしてみると食事と言うのは貴重で大事なものなのだ。 野菜一つ作るのだって手間隙かけて大変なのに。 「俺は飢えるほどではなかったけど、あれって結構気持ち的にも辛いんだ…不自由なく食えるってすごいことだろ?」 「そういや、お前は嫌いなものなかったよな」 「ないよ。食べ物を粗末にするのが一番嫌いだ」 修兵は頬を指でかき苦笑する。と違って修兵は嫌いな食べ物がある。 だが運良く子ども達の前でそれを食す機会がないので、知られていない。 「だったらよ。そう言って教えてやればいいだろ?撫子はまだ小さいからそういう事知らないんだ」 きっと瀞霊廷の外のことなど知らないだろうから。 はキョトンと目を大きく見開く。 「親の私たちがそうするべきなのもわかるけど。そうね、お兄ちゃんだもん君は」 も修兵と口をそろえて言う。 は見開いた目も元に戻り少し考え込む。 「なんか…言いくるめられた気がする」 「んな事ねぇよ。後輩の指導は上手に出来るんだ、妹にだってできるだろう?」 まぁ仕方ないだろう。それが兄の役目ならばと。 はそう思うことにした。 ただ、納得はする。何故なのかというのを教えてあげなければ、怒ったままなど相手にだって伝わらない。 「それで?、決まったか?サンタさんからのプレゼントは」 まだ言うのか、この親父は・・・。 「そうだな。クリスマスプレゼントより、俺はお年玉の方が欲しい」 「相変わらず可愛くねぇな、お前は」 「修兵の息子だからじゃね?」 もう寝ると言っては部屋に戻っていく。 「こういう時だけ、俺の息子だって言いはるよな、あいつは」 「でも嬉しいんじゃありませんか?」 渋る修兵には楽しそうに笑った。 これは始めての兄弟喧嘩というものだったのだろうか? 再会した当初可愛げのない、他人の振りをしてしまったが。 あれとは違うと思った。 結果、クリスマス前にはいつも通りに戻り、弟妹たちを叱る時、ちゃんと理由を教えるようになった。 「ー!ニンジンちゃんとたべたんだから、ケーキはナコの好きなものつくってー」 「ナコずるいー。ぼくはスキキライしないんだから、ぼくにもケーキつくってー!」 両側から引っ張られる。 「鬱陶しい!まとわりつくな!」 「「ねーー」」 「わかった。作る。撫子のも萩のも作るから離れろ!」 作るといわれて、離れるどころか、弟妹たちは喜んでに抱きつくのだった。 6回生冬のあたりで、撫子ちゃんがどちらかと言えばメインに近いですね。
08/12/29UP
12/07/16再UP
|