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檜佐木家でよく見られる光景。 「ー。あれどこにあるんだ?」 「なんだよ、居間の箪笥の引き出しにあるって言ったろ!」 引き出しか。と修兵は言われたとおりに居間に向かう。 そのあとにが顔を出した。 「引き出しは上から2段目だぞ」 「わかった」 ごそごそと引き出しの中を探り、お目当ての品物が出てくる。 見つかったと修兵は満足そうに頷いた。 「…って、本当できた息子を持って羨ましいっすね、先輩」 居間でくつろいでいた恋次に言われた。 「今のを見ていると、息子って言うより、奥さんみたいだけどね」 同様にお邪魔していたイヅルには苦笑されてしまった。 【貴方が居なければ今頃は。 】 「なー熟年夫婦みたいな会話だよなー」 恋次はゲラゲラと笑う。 九番隊副隊長、隊長代行として隊士たちをまとめあげている修兵。 その指揮能力の高さを褒める声が出ている。 だけど自宅では、息子の尻に敷かれているような状態だ。 「奥さんにも見えるけど、母親って感じもするよなー」 「ダメな息子の世話を焼くお母さん?大変だね、君も」 どっちにしても修兵がダメダメに見えるだけのようだ。 「普通わかるか?あれはどこだ?って聴かれてあれがなんなのかって」 「だから熟年夫婦なみなんだよ。これじゃあ先輩の奥さんになる人も大変だよね」 「息子がすべてわかりきっているからな。息子に嫉妬しそうになるな、嫁さんは」 お茶と茶請けの煎餅を頬張り、檜佐木家の現状を見て好き勝手に言う二人。 「その前に、君に好かれないと、奥さんに選ばれないかもしれないよね」 「あーそうかもしれないな。先輩のことだから、のことを可愛がってくれる人じゃなきゃダメだとか言ってな」 「普段仕事で忙しいような女性なら。逆にこの状況はいいと思うね。君に家事を任せればいいわけだし」 「じゃあ貴族の娘じゃダメだな。普通に死神やってる奴がいいのかもな」 修兵の嫁となるには基準がこうだとか、条件がこうだとか。 二人がそこまで真剣に話す必要性がわからない。 単純に面白がっているようにも思えるが。 だがそうそう好き勝手に言っていると天罰が下るものだろう。 「バカなこと言ってんじゃねぇよ!」 丸めた新聞で二人の後頭部を叩いた修兵。 ちゃぶ台の前にどっかり腰を下ろす。 丸めた新聞を広げてそれを読み始める。 「だって、先輩。傍から見るとそう見えるんすよ、先輩たちって」 「どこがだ」 息子とのやり取りを熟年夫婦。または母子のようだと言われて修兵は面白くない。 「せーんぱい。がいるから、今こうして生活できているんじゃないですか」 「はぁ?一人で暮らしていた頃だってそれなりにやっていたぞ、俺は」 趣味特技と言えるものの一つに料理がある。 ほどレパートリーは少ないかもしれないが、やろうと思えばできるのだ。 「そうだったかもしれないですけど、今ものすごく真実味薄いですよ」 イヅルは苦笑する。 「常に君に家事を任せっきりですからね。先輩は」 「な、なんだよ…っていうかよ。なんか、俺がに世話になりっぱなしみたいに聞こえるぞ」 「「そうじゃないんですか?」」 二人の声がはもる。 それが無性に腹だしく聞こえる。 「逆に俺がいなくちゃ、が困ることだってあるだろうに」 俺はお父さんなんだぞ!と修兵は胸を張る。 「俺がいないと一人じゃ夜は寝られないとか。俺がついていなきゃ路頭に迷うとか」 「………」 「お父さんが大好きでしょうがないって可愛い奴だぞ、は」 そこまで言い切り、二人の顔が引きつった。 「うわ…よくそこまで口にできますね」 「親馬鹿にもほどがありますよ」 「なんだとっ!」 再び新聞は丸められて二人は叩かれる。 「最初から順調ってわけじゃなかったんだぞ、俺達も」 「え、そうなんですか?」 「おう。俺のこと人見知りしていっつも、部屋の隅で膝抱えていてよー」 少しずつ打ち解けようと努力した結果なのだ。 恋次とイヅルに紹介された時にはすでに、いつもニコニコ笑顔のだったと記憶している。 「色々抱えたものがあってよ。少しずつ笑ってくれるようになって、そんなの見りゃ嬉しいものだろ?」 最初はただの赤の他人だったかもしれないが。 と出会って、こいつを俺が引き取ると決めた時、守ってやらねばという気持ちが湧いた。 当然未婚なのだが、俺がこいつの親父だと胸張って言えるようにと。 「可愛いって思うじゃねぇか」 「「………」」 イヅルは軽く頬を指で掻いた。 「でも、結局の所。それじゃあ先輩が君から離れられないってことになりませんか?」 「そうか?」 話の流れでは、にも修兵がいなくちゃダメなんだぞ。っていうのを聞かせるつもりだったのに。 結局修兵にはがいなくちゃダメだ。というように聞こえる。 「の不幸ってのは、案外先輩と出会ったことじゃないんすかー?」 「あ?何を言うんだ、阿散井」 不幸と言うのは聞き捨てならない。 「不幸は言いすぎだよ、阿散井君。だけど、先輩が一人でいられないって理由にはなりますよね」 「んなことねぇよ」 「娘だったらもっと酷いよな、きっと」 「だよね。嫁には出さないとか。俺の嫁にする!とか言うンじゃないかな」 これはあくまで極論だが。 「お前らなぁ」 修兵は頭を乱暴に掻いた。 「いつまでそうしていられるんすかねー?」 「君が死神になったら、先輩の世話ばかりしていられませんよ?」 確かに、いつまでも家事を任せておくわけには行かないだろう。 だからって今すぐに結婚を考えているわけではないし。 「と離れても、一人でなんでもできますか?先輩」 「で、できるに決まっているだろ。それぐらい」 恋次はその言葉を聞いてニヤっと笑った。 「なら決まりっすね!は借りていきます!」 恋次は立ち上がり、台所へ行ってしまう。 「はぁ!?」 「ー!俺んとこ泊まりこいよー」 「あ!ずるいよ。阿散井君。君、僕の所に泊まりにおいでよ」 イヅルも修兵を置いて台所へ行ってしまう。 「お、お前らなー!結局てめぇが楽してぇだけだろうが!!」 修兵が台所に怒鳴り込んでいった。 俺がいなかったら、修兵はどうしていたかって? 別にどうもしないと思う。 きっと今と変わりなく恋次たちといるだろうし。 普通に死神をやっていたんじゃないだろうか? 逆に俺が修兵と出会っていなかったらと言う方が重大だと思う。 家族を虚によって失って、一人でずっと縮こまっていただろう。 死神になるんだ。という家族との約束も果たすことなく、きっと一人で泣き暮らしていたかもしれない。 ううん。それはまだいい方だ。 もしかしたら、その辺で野たれ死んでいたかもしれない。 家族の仇もとれずに…。 俺にとって修兵は、これからを繋いでくれた人。 家族との約束を果たす為に。 修兵っていう新しい家族を得て、新しい目的を見つけられた。 一度修兵に捨てられそうになった時を思い出せば、修兵よりも俺の方が修兵を頼っているのはわかると思うのに。 いつかは俺も大人になって、修兵のとこから離れて行くんだろうな。 その時、修兵のそばには修兵を大事にしてくれる人がいてくれればと思う。 その辺は修兵がどうにかするんだろうけど。 できれば、その人が、俺の大好きな人だったらいいなって思う。 でも、今はまだ。修兵とバカ言いながら暮らして居られればいいな。 「なんてこと、思っても口にしないけどな」 「あん?どうした」 「別にどうもしない。大人なのに、くだらないことでバカやっている修兵たち見て呆れただけだ」 台所でギャーギャー騒いでいる姿は本当みっともなく思えた。 今はそれも済み、のんびり夕飯を食べているのだが。 「俺が思うにー」 は今回もいいデキだと言う厚焼き玉子を一切れ頬張る。 「俺が恋次やイヅルのとこに泊まりに行ったとして」 「さっきの話か?」 「うん」 泊まりにこいと誘われた。それはそれで面白そうだとは思える。 「行くのは別にいいんだけど、その間修兵を一人残すと心配になる」 「はぁ?何言ってんだ、お前までっ!」 「だって、俺のいない間に部屋がぐちゃぐちゃに汚くなっていたら嫌だもん」 「………」 「洗濯とか、掃除とかちゃんとやらなそう」 そっちの意味で心配か。修兵は家事ができない父親として息子の目に映ったことがちょっと切ない。 死神の仕事もあるのだから、完璧にこなして。とまではいかないだろうが。 が不在ならば、やること全てあとにまわして、結果帰ってくるころにはその溜まった山が残されていそうだと。 「…否定できねぇな」 修兵は苦笑する。 「ま。そういうわけだから、しばらくはお父さんのそばにいればいいんだよ」 「なんだよ、それ」 「心配だろ?」 そういわれて馬鹿だなと思いながら。まだ居てもいいんだなと思えてどこか嬉しかった。 チビ息子君で。二人が出会わなかったら。なんて、修兵より息子君の方が重要だよね。
でも、相変わらずの親子ですな。
08/12/03UP
12/07/16再UP
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