ドリーム小説
あれからどのくらい経ったかなあ。
覚えてる?君は。

ずっと、ずーーーっと好きだったよ。
だって。





「君だから。」





草鹿やちるは駆けていた。
向かう場所は真央霊術院。
自分の休みとそこに通う者の休みが珍しく重なった。
まあ学生である向こうは普通にいつも通りの休みだったわけだが。

それでも前々から楽しみにしていたこの日。
久しぶりに会えるのだから。

ただ。
相手とは約束はしていない。





ー今日の予定は?」

寮の食堂。
オレンジ色の髪の青年が声をかけてきた。
青年は入学時からの友だちだ。
親友と呼んでも可笑しくない。
その青年が朝食を持って自分の前に座った。

「ん?特にない…」

「ないって。親父さんから帰って来いって煩いくらいに言われてるじゃねーか」

「面倒くせー誰が帰るか」

もう構ってもらう年でもない。
それどころか距離を置きたいと思っているのに。

「それで、こっちが煩く言われるんだけどよ…」

「あーしょうがないね、顔見知りだったお前が悪い」

「おいおい」

「お前は?暇なら今日付き合わね?」

どうせお互い暇人だろうし。
合同練習とでもと誘う。
彼との手合わせは中々面白いし。

「あぁ、いいぞ。買った方が昼飯奢り」

「じゃあ、鬼道は遠慮なく使わせてもらうか」

「うっ、剣のみで勘弁しろよ」

「ははっ考えておくな」

とりあえずは食べてからだ。
今日の予定はいつもの休みと変わらないようだ。





「まだかな〜まだかな〜」

やちるが寮の前で中を伺っていた。
呼び出せば済むことだが、ここは驚かせたいと言う気持ちが強いために外にいるのだ。

出てきたら、どうやって驚かせようか?
普通に挨拶でもいいんだけど。

「あ、来たかも!」

ずっと忘れはしない彼の霊圧。
探査能力は無能だと言われたやちるだが、彼の霊圧だけはわかるようになった。
他の人と違って心地良さを感じる。

それを本人に言ったら、変な顔をされたが。

「場所どうする?」

「一々申請すんの面倒だから裏山かどっかでいいんじゃね?」

「あ、俺に鬼道使わせないようにしてるだろ」

「さぁな」

軽く笑われてしまい顔を歪めてしまう。

ー!」

来た!と思ってやちるは咄嗟に飛び出した。

「やちる。どうした?」

相手の反応は淡白なものだった。

「え…それだけ?」

「それだけって?」

「「………」」

どうやら自分は期待しすぎたようだ。
いや、夢を見すぎた?
やちるは唇を突き出して上目で相手を見る。

「なんだよ、その顔。意味わかんね」

冷めすぎている態度にも腹がたつが、それが彼の性格なのでしょうがないとも思える。

「おい、

「あ?」

「手合わせはまた今度にしようぜ。俺は急に用事を思い出した」

「は?なんだよ、さっきは一日暇だって」

「だから急にだよ」

ヒラヒラと手を振って去ってしまう友だち。
ポツンと残された二人。
急に予定が狂ったことで面白くないが仕方ない。

「なんか知らねーけど、暇になった。少し付き合えよ、やちる」

「うん!」

やちるに笑顔が戻った。
どこに行くとかは決めてないけど、歩き出す。
隣に並んで歩くなんて久しぶりだ。

「久しぶりだよね」

「そうだっけ?」

「そうだよー前はいっぱい一緒に遊んだのに」

「って言うかさ。忙しいのはやちるの方だろ?十一番隊の副隊長」

「だってぇ…あ、さっき、いっちーと出かける予定だったの?」

彼の方に顔を向ける。

「ん?あぁ。昼飯かけた手合わせでもしようかって」

「ふーん。仲いいね」

「あ?今の会話でどうして仲が良いって思えるんだよ」

可笑しな奴だとくすくすと笑う。

「だって、いつも一緒にいるよね」

「付き合いやすいし、色々知ってるからな、あいつ」

「ふーん」

時間にすれば自分の方が長い付き合いなのに、あの青年との方が内容の濃い時間を過ごしているように思えた。
昔はいつも一緒だったのに。
変わったことはまだある。

身長だ。

前は並んでも少ししか変わらなかった身長。
今では頭一つ分差がある。
会うたびにどんどん引き離されていく気がする。

は大きくなったよね」

「なに。急に…」

「身長!昔は変わらなかったよ」

「そうかぁ?昔から俺の方が背は高かった気がするけどな」

「でも差は少しだった」

「いやぁ〜違う気がするな」

「もーシロちゃんもすっごく大きくなっちゃったし」

「あー冬獅郎かぁ。最近会ってねーな。元気ならいいけど、会いたいかも」

「………」

やちるに会った時にそんな自分に対してはそんな言葉一度も言わなかったのに。
ちょっと面白くない。
いや、先ほどから面白くないこと続きだ。

「ねーはまだ卒業しないの?」

「お前、さっきから話変えてばっかだよな」

「いいから、答えてよ。の成績ならもう護廷十三隊に入れるでしょ?」

「簡単に言うな」

「えーだって、いっちーと一緒にどこの隊に入れるかなんか皆燃えてるよ」

「………」

すごく嫌な顔をされた。
別に自分がそうしたわけじゃないのに。

「あのさ…参考までに聞くけど、が希望する隊は?」

「俺のこと知らない隊」

義父の所為か昔から死神の知り合いは多い。
しかも上位の者と。
それの所為で特別視されたり、勝手に変な目で見られたりするのが嫌なのだ、彼は。

「そんな隊限られてるじゃない…つまんない」

十一番隊って言って欲しかったのになぁ。
そうすればいつも一緒にいられるのに。
きっと剣ちゃんだって喜んでくれるのに。

「でも、希望は希望であって、実際は入れるかもわからねーし、今からそんなの考えてもな」

決めるのは上の人。
自分の実力によるものだ。

「って言うかさ。俺きっちり6年通うつもりだからまだまだ先だぞ」

「えーなんで!」

「楽しいから」

「でも優秀な成績の人って飛びで卒業できるよ」

「あー成績優秀者はな」

は優秀じゃないの?」

「さぁ?」

「ずるいー教えてよ」

やちるはの袖を軽く引っ張る。
は、振りほどきはしないが止まらず歩いている。

「さぁてと。何すっかな〜」

ー」

「やちる、昼飯何が食いたい?」

さっきまでは自分の方が話をポンポン変えてしまったが、今度は彼の方が変えてしまう。
もうこの話はしないようだ。

が作ったコロッケ!」

「無理。作れる場所ねーし」

「じゃあ、家に帰ればいいよ。修ちゃんも喜ぶし」

「ぜってー嫌」

「えーそれじゃあコロッケ食べられないよ」

「諦めろ」

歩く速度が速くなる。
でも掴んだ袖は離さない。
離すつもりはない。

「早く決めねーと、俺が勝手に決めちまうぞ〜?」

「えー待ってよ」

「あ、お好み焼きが急に食べたくなった。だからお好み焼き食べよ」

「えーやだ!匂いがつくから」

「でも決めた。行くぞ、やちる」

「他のにしようよ、お好み焼き以外で」

歯に青のりつけでもしたら凄く恥ずかしい。
そこら辺もう少し気遣って欲しいのだが?

「じゃあ焼きそば」

「それじゃあ同じだから、嫌ー」

「いいじゃねーか。俺特製のお好み焼き食わせてやるからさ。いいだろ?コロッケの代わり」

ニッて笑う姿は昔と変わらなかった。
いっぱいいっぱい変わった気がした。
離れていく一方だと思った。

でも根元は変わっていなくて嬉しくて安堵した。

やっぱり、好きだ。そういうところ。

「しょうがないから、お好み焼きで我慢してあげる」

「そりゃどーも。んじゃ走るぞ!店が混む前に行かねば」

「えー」

突然走り出した。
思わず足がからまりそうになる。
掴んでいた袖が離れそうになるが、変わりに手が伸びてきた。

「いつから、そんなに鈍臭くなった?」

「鈍臭くないもん」

「あ、そう」

くすくすと笑いながらもしっかり手を繋いでくれる。

「なぁ、やちる」

「なーに」

「今度来るときはちゃんと前もって言えよな」

「え、あ、うん。遊びに行ってもいいの?嫌がらない?」

「別に。今日はたまたま会えたからいいけど、すれ違う場合もあるし」

無駄足踏むの嫌だろ?と少しぶっきらぼうに言う。

「うん。次からはそうするね」

やっぱり、好きだ。そういうところ。
だって、それは

「君だから。」









青年息子君初の話でした。
やちるとの話なので、パパや彼女はあまり関係ないですねw
06/02/04UP
12/07/16再UP