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小さくて大きな来訪者。
「今日も色々あったなぁ。でもすっきりしたかな」 独り言のように見えてしまうが、はリードに繋いだ愛犬佐助に向かって言っていた。 それともう一匹。 一般人には姿が見えていない白い秋田犬に向かって。 佐助はてくてく歩いているが、の言葉にわずかに反応したのはだ。 「浮竹さんから手紙をもらえるとは思わなかったよ。返事とか書きたいけど、どうやって届けて貰おうかな」 昼間、学校で珍しい人と出会った。 これから起るであろう戦闘に向けて尸魂界からの来た増援。 見知った死神たちだった。 彼ら全員とは顔をあわせていないのだが、うち一人。 屋上にいたのもとへ十番隊隊長日番谷冬獅郎が姿を現したのだ。 宛だという浮竹からの手紙を彼は届けてくれた。 浮竹から貰う初めての手紙。 初めて見た彼の文字。 文面から溢れる浮竹の言葉に涙が出てしまった。 泣くことすらできずに悩み続けていたに優しい言葉、彼らしい言葉を投げかけてくれた。 おかげでスッと泣くことができた。 他の男の前で泣くなよ?なんて書かれていたが、日番谷を前にして泣いてしまった。 このことは日番谷も内緒にしておくなんてぶっきら棒ながらに言ってくれた。 「やっぱり日番谷君に頼むのが一番かな〜」 嫌々ながらに引き受けてくれそうな感じがするし。 「ま。とりあえず。その手紙を書かないとね…ってあれー日番谷君と乱菊さん」 「あらっじゃないの〜そういえば学校では会わなかったわね〜」 ひらりひらりと笑顔で手を振って前方から歩いてきたのは日番谷と十番隊副隊長松本乱菊だった。 日番谷もたちの学校の制服を着ていたが、乱菊も着ていたことに唖然としてしまった。 日番谷を見たとき以上の衝撃だった。 ミニスカートに豊満な胸を強調させた着方。 「ら、乱菊さん。その格好……」 ちょっと不味くないですか?年齢的にと口にしそうになったが飲み込んだ。 女性に年齢の話は禁句だろう。死神たちが気にするかは不明だが。 本人が惜しげもなく胸元をさらけ出しているのをみると気に入っているのか自信があるのだろう。 「あ、えっと。どこに行っていたんですか?」 「一護んちに色々説明しにね。アンタにもしなくちゃいけないだろうけど。とりあえず一護にでも聞いてよ」 昼間日番谷も同じことを言っていた。 意外に面倒臭がりなのだろうか? 「へぇ。それでこれからどちらに?」 「あたしは織姫んちに泊めてもらおうと思って」 「織姫んちに…泊まる?日帰りじゃないんですね」 「当たり前じゃなーい」 当たり前と言われても。正直冷や汗が出てくる。 「日番谷君も織姫んちに行くんだ。まああの子一人暮らしですしね」 「ですって隊長。やっぱり一緒に行きましょうよ〜」 「誰が行くか」 そういい日番谷は別方向へ歩き出す。 「しょうがないわね、隊長も素直じゃなくて」 乱菊は呼びとめもせずにに別れを告げて織姫の家に向かってしまった。 乱菊にしてみればそのうち来るだろうって思ったのだろう。 だがは行ってしまった乱菊を見て、これでいいのかと悩み日番谷を追いかけた。 「日番谷君!」 「ああ?」 呼び止めたことを面倒臭そうに反応する日番谷。 日番谷君と呼ばれることが嫌なだけかもしれない。 「行く所ないなら、うちおいでよ。泊まる部屋あるし。夜遅くにふらふらしていると補導対象になっちゃうし」 見た目小学生で制服を着ていれば。 「あのな」 「それに手紙のお礼とかしたいから」 「あれは別に礼を言われるほどじゃねぇ」 「でもいいから。ご飯とかないと困るでしょ?」 「あ、おい!」 日番谷の背中を押し自宅へと足を向けるように仕向ける。 「勝手に決めるな。お前だって困るだろうが」 「困らないよ。だって私が行こうって言っているんだし」 「じゃなくて。お前の両親とか」 「ああ。大丈夫じゃない?」 寧ろ喜ぶ気がする。 気にしないとそのまま前進する。逃がさないように日番谷の手に佐助を繋いだリードを握らせて。 *** 「ってなわけで。日番谷君困っているんだ。当分ウチに居てもいいよね?」 は帰宅後両親、祖父に日番谷を紹介した。 嘘も方便というのかそれらしい理由を述べて日番谷滞在を説明した。 1。日番谷はアメリカで生活をしていた帰国子女だ。 2。天才で高校まで飛び級だ。 3。期間限定、向こうからの留学生としてきた。 4。下宿予定だった場所が手違いで入れなくなったために宿無し。 だから家にご案内しました。 こんなんで誰が信用するんだと日番谷は思ったが、祖父も両親もあっさり頷いた。 「大変だったね。余っている部屋あるからいくらでも使うといい」 「あ。今夜使う布団、乾燥機掛けておくわ」 「気が向いたらウチの道場にも顔を出すといい」 それぞれ暢気すぎる反応に眩暈を起こしそうになった。 日番谷だけでなくも信じきった家族に少々良心が痛む。 「とりあえず。寝床確保ってことでいいんじゃない?」 忙しなく動く家族を見て苦笑を漏らしながらも日番谷にニッと笑いかけた。 *** 「大丈夫?」 「…食いすぎた。どんどん皿に食い物を乗せられて断る隙もねえ」 「うち、男の子いないから。だから嬉しいんだよ」 飼っていた犬たちを息子代わりにしてしまうような人たちだから。 「明日でもいいから、道場で手合わせしてほしいな。勿論鬼道はなしよ?斬魄刀の使用も禁止だけど」 夕食後縁側から外に出た。 の家族は日番谷を気に入ったのかアレも食べなさい、これも食べなさい。大きくなれないわよ。 などと色々世話を焼く。 少々度が過ぎないか、日番谷がキレてしまわないかと心配になったが大丈夫のようだった。 縁側に腰掛け日番谷は隣で大人しく寝ているにそっと触れてみる。 霊体である今のには動物特有の温かみを感じない。 ほぼ実体でいたのは尸魂界にいたからなのと、が力を解放した時のみだ。 「あ。そうだ。昼間はありがとう」 「なにが」 佐助の腹を撫でながらが言った。 「浮竹さんからの手紙」 「別に。頼まれただけだ」 「返事どうしようかなって思っているんだけど」 どうしようとはなんだ?書きたければ書けばいいではないか。 「届けて欲しいのか?」 「うーん…微妙」 当初は返事を書かねばと考えていたのだが。なんとなくその気が起きない。 「なんだそりゃ」 「色々忙しいでしょ。浮竹さんも日番谷君も。日番谷君こっちに出張だし」 色々とすごい人たちの引率だし。 小さいながらに大変だね、隊長はとしみじみと頷いてしまう。 「同情されてんのか、俺は…」 胡坐を掻いてその膝の上に肘を突く日番谷。 「ま。日中は大変だろうけど。夜はうちでのんびりしてくださいな」 ニコニコっとは笑う。 日番谷はガシガシと頭を掻く。 「は」 「ん?」 「甘いものが好きなのか?」 「私は別に好きってほどじゃないなあ。なんで?」 佐助をひょいと抱いて日番谷に向ける。なんで?とと佐助が首を傾げる。 「お前じゃないなら誰だ、いったい」 こっちはいい迷惑なんだよとブツブツ呟く日番谷。 「なんのことだか、さっぱりなのですがー?…あ、昼間も似たようなこと言っていたよね」 和菓子ばっかりなのはお前の所為だ。だとか。 「浮竹がよく菓子をよこすんだが」 「あ〜浮竹さんらしいね」 両手一杯に抱えている姿が目に浮かぶ。 「最近和菓子ばっかよこしやがる」 一人で食うには多すぎる量で。 「それはきっと私というより、の所為かな」 と呼ばれてふっと顔をあげた。 「こいつの?」 「は和菓子大好きでね。尸魂界で浮竹さんのお世話になっている時、色々貰ってさ」 味を占めてしまったんだとは微苦笑する。 生前はそんなに与えたこともなかったのにと。 「しょうがないな。浮竹の奴」 「浮竹さん元気?」 「ああ」 「体弱いって聞いていたから、倒れでもしたら大変だなって」 ただでさえ、今尸魂界では多忙を極めているというのに。 浮竹自身も忙しすぎるとはいえ、無理はしないでいてほしい。 「お前、浮竹のこと好きなんだな」 「はあっ!?な、何突然日番谷君!」 「浮竹もそうみてえだし。別に俺には関係ないが」 「う、う…うぅ……」 恥ずかしさでいっぱいになる。 実際、そうなのだが、改めて言われてしまうと言葉に詰まる。 二人のことを知っているのは京楽だけのはずだから。 「で、できれば他の人には内密にしてください」 「別に言うことはねーけど。なんでだ?」 「まあ色々と。色々あるんだよ。浮竹さんの迷惑にもなるし」 なるか?あの男の迷惑などと。 「それにほら!今はア…アランカル?それをなんとかしなきゃならないんだしさ」 恋愛とかは今は置いといて。 は佐助を放し、日番谷の隣に腰を下ろした。 「浮竹さんが元気ならば今はいいよ。浮竹さんって自分のことより人のことばっかり心配する人なんだもん」 造反、処罰覚悟でルキアを救おうとした。 旅禍であるたちへ手を貸してくれた。 「優しい人なんだもん」 そう言うの横顔もとても優しいものだった。 「惚気を聞いているのか、俺は…」 「の、惚気じゃないよ、別に」 真っ赤になって日番谷に抗議する。 そんなの隣で惚気など聞く気にはならないのにとぼやく日番谷。 傍から見れば中の良い兄妹に見えなくもない。 しばらく我が家も賑やかになりそうだ。などと暢気に考えてしまうのだった。 ほのぼのとした雰囲気の夜なのに。 襲撃者が来るのはこの少し後…。 まぁ、この話では織姫の家ではなく彼女の家にってことで。
07/03/17
12/05/05再UP
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