手紙、彼からの。




ドリーム小説
瀞霊廷は少し前の反乱が嘘みたいに穏やかだった。
だが隊長三人が抜けたのは痛く、負担が多くなったが、その隊長不在の隊のことを思えばなんてことなかった。

浮竹も色んな仕事を受け継ぎつつ、これからの為にと行動を起こしている。

「隊長ぉ!!今報告がありました。東京空座町東部に成体の破面が二体現れやしたぁ!」

仙太郎が浮竹に報告に来た。

「そうか…始まっちまったのか……」

尸魂界は藍染たちが直接行動を起こすまでは静観することを決めていた。
だが、思った以上に早くに行動を起こしてきたようだ。
しかも破面の成体が二体も…

あの子は大丈夫だろうか?と脳裏をよぎった。
好戦的でもないから無駄に突っ込むやり方はしないとは思うが。

浮竹はまだある仕事の為にそんな事を考えながら歩いていた。

「浮竹」

「ん?ああ日番谷隊長。どうかしたのかい?」

下から見上げられた面倒臭そうな目。
浮竹と自分とではかなり身長差があり、本人は多少面白くないと思っているようだ。

「この前の資料返しておく」

日番谷から資料を受け取り、中身を確認する。

「確かに受け取った。ああそうだ、日番谷隊長、これをやろう」

袖の下から菓子をとりだし、日番谷の手に無理矢理乗せる浮竹。

「お、お前。毎回、毎回……こんなにいらん」

「いいじゃないか、食べてくれ」

「しかも最近和菓子ばっかじゃねーか…」

最中とか羊羹とか饅頭とか。
日番谷はあからさまに嫌そうな顔をするが、浮竹は気にもせずに菓子を日番谷に持たせる。

「も、もういらねぇ!こんなに食えるか!」

「そうか?それは困った、まだまだあるんだ。どうするか…」

と、本当にどれだけ持っていたのだと呆れてしまうほど菓子を取り出す浮竹。

「食いもしないのに、なんでこんなに持っているんだよ、アンタは」

「うーん。そうだよなぁ…確かに」

そこをちょうど通りかかった六番隊副隊長阿散井恋次。
恋次は二人の隊長に軽く頭を下げて通り過ぎようとしたのだが、浮竹が呼び止める。

「阿散井君」

「は?なんすか?」

笑顔でおいでおいでと手を振る浮竹。
恋次は素直に浮竹の元に。

「君、甘いもの好きなんだってな。良かったら食べてくれ。余ってしょうがないんだ」

手を出せと言われてまたも素直に手を差し出す恋次。
そして先ほどの日番谷と同じようにバラバラと大量の菓子を乗せられる。

「う、浮竹隊長。こ、こんなに…」

「いいんだ。俺一人ではどうも食べた気がしないんだ。他の誰かが食べてくれたほうがよっぽどいい」

それだけ言い残して浮竹はさっさと歩き出した。
お互い両手に乗っかった大量の菓子を見比べてしまう日番谷と恋次。

「なんで、俺まで…」

「だから、お前は甘いものが好きなんだろ」

「はあ」

とりあえず、後で吉良たちに分けようと恋次は思った。



最近和菓子ばっかだ。
日番谷に言われた。
日番谷を見ると菓子を与えたくなる浮竹。
同じシロちゃんだからなんてこの前答えてみたが、すごく厭きられてしまった。
お菓子って類を種類関係なく今まで用意をしていたが、最近は和菓子ばかり用意してしまう。

よく食べたよなぁ、あの時は…

なんて年寄りじみたことを考えてしまう。
きっとその頃の名残なんだろうと自分でもわかる。
でもそう思いながらも、一人でいると食べても楽しくないし、美味しさも感じない。
だから、浮竹自身が食べるのは隊士たちと一緒にぐらいだ。

「浮竹隊長。失礼します」

「朽木か?いいぞ」

ルキアは隊に復帰して以前とは少しばかり雰囲気が変わった。
それはあの旅禍の少年の影響だろうと見てわかる。

「先ほど山本総隊長から直に指令を受けましたので、その報告に参りました」

「朽木にか?」

「はい。私と、六番隊の阿散井副隊長にも」

話はこうだった。
先日空座町に出現した破面は暴れるだけ暴れて姿を消した。
死神代行組の数名が負傷したと聞いてはいたが。

破面との本格戦闘の為に死神代行組と合流せよとのことだった。
死神代行の黒崎一護を一番知っていると言う理由でルキアが選ばれ
そのルキアと一番近しいと言うことで恋次が選ばれたそうだ。

「そうか。それでいつ発つ?」

「準備が済み次第、すぐ。今は阿散井副隊長が他の同行者を探しているところです」

「そうか…大変だろうが、無理はするなよ」

「はい。それでは」

「あ、朽木」

「はい」

「……あ、いやいい。お前たちが発つ時に俺も顔を出すから」

「はい」

ルキアは部屋を出る。
この後、彼女は今度こそ兄にちゃんと報告してから行くだろう。

浮竹はルキアが去った後、少し考えた後筆を取った。



***



教室にいるのは窮屈だった。
5日前、いつも通りの生活だった。
でも、突然の急襲者。
一護に茶渡に織姫が負傷した。
一護は包帯を巻きつつも翌日には学校に来たが、茶渡はいまだ休んだままで、織姫がようやく登校してきた。
は。

は無事と言えば無事だったが、逆にそれが引っかかっていた。

「………」

たまたま、その日は別の場所にいた。
だから、色んなことが起こってもはどうにもできなかった。
戻ってきたら、結果を知らされただけで。

織姫は相変わらず笑って誤魔化していたが、それが居た堪れなく感じる。
一護とも会話することなく。
石田も学校には来ていなかったし、また自分は役立たずだと言う烙印を押されてしまった気分になった。

屋上でフェンスにもたれため息をついてしまう。
ずるずると座り込んで膝を抱える。

「浮竹さん…私、どうしたら……」

このままだと、弱いままで役に立つどころか、足手まといになる気がする。

「おい」

「!!?」

頭上から聞こえた声。
は恐る恐る顔をあげる。

。だよな」

「…あ、あれ。日番谷君だ」

「日番谷“隊長”だ」

「え、え?なんで?」

この学校の制服を着て面倒臭そうに立っている少年の姿には驚く。

「詳しい話はあとで黒崎一護にでも聞け」

そしてズボンの後ろポケットから何かを取り出しに向かって放り投げた。

「…手紙?」

「浮竹からお前にと頼まれた」

「浮竹さんから!?」

「読んでも読まなくてもどっちでもいいとさ」

日番谷はに背を向けるが、は日番谷の制服を掴む。

「な、なんだよ」

「少し。手紙読み終えるまでいて欲しいな…ってダメかな?」

日番谷は面倒臭そうに髪を掻く。
でも、下では揉めに揉めているからいいやと承諾する。

「少しだけだぞ」

日番谷はフェンスに寄りかかる。

「ありがとう」

は浮竹からの手紙を読み始める。



  君。正直、君に文を出すのを悩んだ。
  君は必要としていないような気がしたら。
  でも、空座町に破面が現れた事など知っているから
  その時起きたことは俺の所まで届いているから。
  君はまた悩んでいなきゃいいけどと思った。
   
  君。
  君は君でできることをすればいいんだ。
  無茶はしないとあの日約束したよな。
  うっかりこっちで再会なんてことは、俺は嫌だぞ。
  そんなのは嬉しくない。

  君は朽木と遊園地と言う場所へ行こうと約束し
  たのだってな。朽木が教えてくれた。
  正直、ずるいな、朽木とばかりと思ったが。
  俺にも一緒に行こうと、朽木が言ってくれた。
  その約束はぜひ果たしたい。
  
  その時まで、君。頑張れ。
  今の俺にはすぐに駆けつけると断言できない。
  君の無事を祈るしかない。

  君だけじゃない、一護君たちもだ。
  君たちとはまた会えると俺は思っている。
  だから、その時までな。

  我慢するな、泣きたい時はちゃんと泣くこと。
  そしてすっきりさせて前を向くこと。
  の前でなら泣けるだろ?
  他の男の前と言うのは…俺が嫌だから。
  
  また一緒にタイヤキでも食べよう。
  も一緒にな。


                   浮竹十四郎



なんとなく、浮竹がどんな顔でこの手紙を書いていたのか思い浮かんだ。
は浮竹にはなんでもお見通しなんだと苦笑しながらも
目頭が熱くなり視界がぼやけてしまう。

「浮竹さん、ごめんなさい…言われたこと守れ、そうに、ないです」

は手紙を胸に抱いて泣き出した。
突然のことに日番谷はギョッとする。

「お、おい。なんで急に泣くんだよ。しかもなんか、守れそうにないとか」

「う、浮竹さん以外の男の人の前で…泣いちゃうから…だって、浮竹さん優しすぎるから」

「はあ?」

日番谷には意味がわからない。
とりあえず、目の前の少女が泣いた原因は浮竹からの手紙らしいが。

「よくわかんねーけど。浮竹には黙っといてやる。そうすりゃわかんねーだろ」

「日番谷君も優しすぎるよぉ」

「日番谷“隊長”だ」

日番谷は当初現世に行くつもりはなかった
なのに、よくわからないまま仕方なく同行してくれと頼まれた。
これも副隊長の松本が行きたいと駄々をこねた所為だ。
出発する直前に、申し訳なさそうに浮竹から手渡された手紙。
他の人には内密にと言われて。

「自分の部下に頼めばいいだろ」

「そうなんだが〜まあいいじゃないか。頼むよ日番谷隊長」

「…しょうがねーな」

君には読んでも読まなくてもいい、必要なければ捨ててくれても構わないと言ってくれ」

「ああ」

実際、に手紙を渡した時、途中までしか伝えなかった。
なんとなく、捨ててもいいなんて言いづらかった。
浮竹が日番谷に手紙を渡した時、珍しく寂しそうな顔をしていたから。

「本当は自分が行きたいんだろうな…」

日番谷は浮竹とこの少女の間に何かあったとかは知らない。
ただ、浮竹がこの少女を匿っていたとか、気にかけているらしいという話は聞いた。
それ以上のことを浮竹は話さないし、聞こうとも思わない。
関係ないことだ。

「とりあえず、一つだけわかった」

「?」

ようやく涙が収まりかけたは日番谷を見た。

「和菓子ばっか俺に食わせるのはお前の所為だな」

「は?和菓子?」

もういいだろ。と日番谷はを残して屋上から消えた。
は一人になって空を見上げる。

「浮竹さんの心配性」

さっきまで薄暗い思いだったのに、手紙一つで少し気が晴れた。

「だから、浮竹さんに甘えちゃうじゃないですか」

目の前に浮竹がいたら笑って「別にいいぞ」って言いそうだ。
は空に向かって笑顔で呟いた。

「浮竹さんも無理はしちゃダメですよ。私はもう大丈夫ですから」








浮竹さんからの手紙。ルキア達が現世に来た頃ですな。
06/05/22
12/05/05再UP