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笑ってほしいから。
「なぁ、暇だろ?どこか遊びにでも行かないか?」 「イヤ」 「お、おい」 唖然としている馬超を尻目にはスタスタと歩いていってしまう。 「なんだよ〜」 馬超は吐き捨てるように言うが顔は怒ってはいない。 むしろ楽しんでいるようだ。 「ちゃん。また馬超さん苛めてる」 友だちの頼子がひょっこり顔を出す。 その隣では趙雲が笑っている。 「あのね、苛めてなんかいないって。趙雲さん、あの馬鹿何とかしてください」 「あ、あはは。殿、それはちょっと」 蜀の将軍様を馬鹿呼ばわりできるのは恐らくぐらいだろう。 「ちゃん、お仕事終わったの?終わったら一緒にご飯食べようよ」 「あ、ごめん。この後孔明さんのお供で出かけるから無理」 「そうなの?ちゃん無理は駄目だよ?なんか働きづめなんだもん」 「大丈夫だよ〜そんなに重労働って訳でもないし」 そう言っては二人に手を振ってまたもスタスタと歩いていってしまう。 「むぅ…」 「どうした、頼子?」 「ちゃん、絶対働きすぎ。いつか身体壊しちゃうよ」 「そうか、心配だな」 二人はの後姿を心配そうに見ているのだった。 元々、この世界には頼子が召喚された。 彼女はこの世界で趙雲と共にいることを望んだ。 頼子の親友だったは連れ戻す為にこの世界に来た。 だが、頼子のことを思い、自分だけ元の世界へ帰ろうとした、だが。 が神農の力によって帰る瞬間に、馬超が無理やりこの世界へ引き戻してしまった。 本人曰く 『一目ぼれしたから』 ……だそうだ。 結局残る事になってしまったは、事情を知った孔明夫妻の元で暮らし始めた。 馬超が自分の所へ来れば?と言ったが頑なに拒んだ。 馬超の世話になるものかと意地になってるのだ。 そして、毎日孔明の手伝いをしていると言うわけだ。 それから、数日後。 「殿、城下までお使いに行ってもらえますか?」 孔明が頼子に銭の入った小袋を渡す。 「どこへ行けばの良いのですか?」 「鳳銘堂と言う店へ行って下さい。そこの主人に話はしてありますから」 「鳳銘堂ですか。わかりました」 「時間は気にせず行ってらっしゃい」 「はい」 頼子は孔明の執務室を出る。 城を出てようやく気づく。 「私、その店の場所知らないじゃん…」 面倒だが、戻って孔明に場所を聞こうと踵を返す。 だが、そこに馬超が立っている。 「よっ、どうした。」 「……別に」 「どこか行くのか?暇だから着いて行ってやるよ」 「いいよ」 「いいから、ほら、どこへ行くんだよ。お前場所わからねぇんだろ」 「う……」 の手をとって歩き出す馬超。 確かに場所は知らないので仕方なく馬超に従うことにした。 またそこへ、趙雲と頼子が現れた。 「ちゃん。馬超さんと二人でどこ行くの?」 「孔明さんに頼まれたお使い。二人はどこか行くの?」 「私たちは城下へ遊びに行くだけですよ」 「そうだ!ちゃん一緒に行こう」 「え。だって私はお使いを頼まれただけで…」 「少しぐらい平気だろ?ほら行こうぜ」 「そうしましょう、殿」 どういう訳か、4人で城下に行く事になった。 お使いとは言え、仕事は仕事。 それを気にせず行こうと言う3人を不審に思う。 確か、孔明も時間は気にするなとは言っていたが… 「ちゃん!ほら、見て見て〜可愛いよぉ」 「本当だね」 路上で鳥が売られている。 鳥かごには様々な鳥たちがいる。 「なんか香港でもこんな風景あったなぁ…」 などと呟く。 楽しそうに笑っていると頼子を見て馬超と趙雲もその後ろで満足そうだ。 「ちゃん、あっちにもなんかあるよ〜」 そう言ってを引っ張って行く頼子。 「ちょっと待って、そんなに慌てなくてもさ」 「だって、久しぶりなんだもん。ちゃんとお出かけするの」 頼子は嬉しそうに笑う。 ここへ来る前はよく二人で色々な所に行って遊んだ。 頼子自身、それすらも叶わないかと思ったが、はこうしてここにいる。 また以前のように遊べるかと思った。 だが、は仕事、仕事と全然構ってくれなかった。 だから今がとても楽しい。 だけでなく、大好きな人たちも一緒だから。 「まぁ、そう言えばそうかもね」 最近ムキになって仕事ばかりしていた気がする。 たまには良いかと思いつつも、頼子には趙雲がいるから別に良いのでは? そんな気もする。 当初は二人で過ごす予定だったのだし。 チラリと趙雲の方を見ると本人は馬超と談笑している。 (いいのかなぁ?) そんな考えが趙雲らに伝わったようだ。 「どうかしました?殿」 「え!?あ…いえ…別に」 「腹空いたのか?お前」 「違うって!」 「でも、そろそろ昼食にしても良いかもしれませんね。頼子!」 趙雲が頼子を呼ぶ。 呼ばれた頼子は嬉しそうに駆け寄る。 昼食は頼子が働いていたと言う王華飯店でとることになった。 「この店ってよ、頼子が城から逃げ出した時に来た店だろ?」 「逃げ出した?」 「馬超さん、ちょっと違う」 「あの時の趙雲はよ、すげー情けなかったよな〜伏犧に頼子のお守り取られてベソ掻いてよ」 「そ、そうなの?子龍」 「うわぁ、イメージ変わったなぁ、趙雲さん」 「ベソなんて掻いてませんよ!嘘は言わないで下さいよ馬超殿!」 「聞けよ、。あの頃はさ、この二人の関係に周りは苛々してたんだぜ」 「え〜何それ?すごい興味ある!教えて馬超」 はあまりこの二人の馴れ初めを知らなかった。 頼子が恥ずかしがって教えてくれないからだ。 「ば、馬超殿!」 「馬超さん!」 慌てる二人。 馬超は構わずあーだこーだとに聞かせる。 赤面する趙雲たち。 ちょうど頼んだ食事が来たので話は一度中断するも、その後も様々な話が聞けては楽しかった。 お腹が痛くなるくらいに笑ったし、馬超に対して意地になっていたのに普通に話している。 知らなかったそれぞれを見れて、今日は少し得した気分になる。 食べ終わり店を出る。 また、色々話しながら、あちこち見て回りながらふらふらする。 少し人通りも多くなってきた。 趙雲と頼子は並んで歩き、その少し後ろを馬超とが並んで歩く。 (結構楽しいなぁ〜考えてみるとあまり遊んでなかったし) 思わず笑みを浮かべてしまう。 馬超は表情の硬さの取れたを見て自分も笑った。 そうにさせていたのは自分の所為であるだろうと少し責任を感じていたわけだし。 の前を歩く趙雲と頼子。 仲睦まじい姿に微笑ましく思うも羨ましい気もする。 お姫様な頼子。 側にいてくれる素敵な男性。 (う〜変に考えちゃ駄目だって。楽しい気分が台無しだ) 嫌な気分を吹き飛ばそうと軽く頭を振る。 その時目に付いた『鳳銘堂』と言う文字。 思わず立ち止まってしまう。 馬超は気づかず行ってしまう。 サーッと血の気が引いていく。 孔明から頼まれたお使いの事を思い出す。 『時間は気にせず行ってらっしゃい』 孔明はそうは言ったが、あれからかなりの時間が経っている。 ただ街並みを見て歩くだけならまだしも、間に昼食をとってゆっくりしすぎた。 「…どうしよう。お、怒られちゃうよ…」 慌てて店に飛び込もうかと思うが、後のことを考えたら足が進まない。 があまりに遅いからと孔明が他の者をすでによこしたかも知れない。 人から頼まれた事をちゃんと優先しなかったのがいけないのだ。 は思いっきり反省するも、考えが纏まらない。 なんとなく悔しい。 悔しくて口元が震え、目頭が熱くなる。 「泣いたって駄目だ。お店に行って…孔明さんには謝って…それから…」 堪えていた涙が溢れてしまう。 その時、の肩を思いっきり掴んだ者がいた。 「!急に消えるから驚いたじゃねぇか!」 馬超は怒りを振り向かせる。 けど、は泣いていて。 初めて見たの涙に馬超は焦ってしまう。 「おい、なんだ。なんで泣いてる?」 「ど、どうしよう…お使い…」 は涙が止まらなくてしゃくり上げている。 道のど真ん中でそんな光景が起これば、道行く人は男が女を泣かしたと思うわけで。 馬超に冷たい視線が突き刺さる。 「お、おい。ちょっとこっちこい」 馬超は急いで路地裏へと入る。 なんで泣いているのかこっちが知りたいくらいなのに。 を落ち着かせる為に馬超は優しく抱きしめてやる。 背中を何度か軽く叩いて。 「ご、ごめん」 「いいよ。なんで泣いてた?」 「孔明さんに頼まれたお使いずっと忘れてたから……怒られちゃうよ」 の泣いた理由を聞いて馬超はバツが悪そうな顔をした。 「あ〜あれな…」 「早く戻らないといけないのに…」 馬超は少し考え、の頭を優しく撫でて言った。 「多分、怒らねぇぞ。軍師殿は…」 「な、んで?」 「店に行けばわかるさ」 馬超はの手を引いて鳳銘堂へ向う。 店へ入ると、主人が出てくる。 は馬超の後ろに隠れてしまう。 「すまない。諸葛亮殿の使いできたのだが」 「はい、聞いておりますよ。少々お待ちくださいませ」 主人は店の奥に入る。 数分たって、盆に何かを乗せて戻ってきた。 「はい、お待たせしました。どうぞ召し上がってくださいませ」 「…え?…」 「さぁ、お座りください。立ったままではなんですから」 「ほら、座れよ」 主人と馬超に進められるまま腰掛ける。 主人が持ってきたのは彩り鮮やかな花を模ったお菓子だった。 「当店自慢の一品でございます」 「え、えーと…馬超〜?」 意味がわからず馬超に説明を求める。 「悪いな。諸葛亮殿のお使いってのは嘘だ」 「う、嘘?」 馬超は申し訳なさそうに述べる。 「お前が働きすぎだって、皆心配してよ。息抜きのつもりで外に出したんだ。 俺も頼子も趙雲も知ってたから、あちこちお前を連れて歩いてよ」 「そ、そうなんだ…」 「悪かったよ。騙すような真似してよ。ここの店の菓子評判いいんだぜ。 諸葛亮殿からの日頃の感謝を込めてお前にご馳走するんだと」 「あ、あははは。なんだか、変な感じ」 ようやく落ち着いて笑ったに馬超は安堵する。 別には怒った様子もなかったから余計にだ。 『騙したのね!酷い!』 と言われるぐらい覚悟していたのに。 「ね、馬超は食べないの?美味しいよ」 「いいのか?じゃあ食べる」 が手にしていたモノにパクっとかぶり付く。 いきなり目の前に馬超の綺麗な顔が現れたから驚く。 「美味いな」 さらに笑った顔にこっちが照れてしまう。 「ん?どうした?」 「な、なんでもないよ」 しばらくすると、頼子と趙雲が店内に入ってきた。 「あーずるい!二人で食べて!」 「探しましたよ。急にいなくなるから」 「悪い。小腹が空いたから先に来ちまった」 馬超はが泣いたことなど話すこともなかった。 「ちゃん、美味しい?」 「うん、美味しいよ。ありがとうね、二人とも」 今日は自分の為にしてくれたことに。 「馬超も、ありがとう。今日は楽しかったよ」 そう笑ったを見て馬超たちも満足げに笑った。 ちょっと強引かつ無理な運びだったかもしれないが、が喜んだので良しとしよう。 帰り道… さっきと同じようにの前を趙雲と頼子が並んで歩いている。 の隣には馬超がいる。 時間は気にせずと孔明が言ったが、ゆっくり過ぎるぐらい時間は経った。 すでに夕日が沈み始めている。 「」 「ん?何?」 「今日は楽しかったか?」 「…うん。色々あって楽しかった」 「そうか」 身長差のある二人。 馬超は少し屈んでの耳元で囁いた。 「なら、今度は二人っきりでどこか行こうぜ」 「えっと」 少し目が泳いでしまう。 でも、別に嫌な気はしないから… 「そうだね、楽しみにしてるよ」 と言って駆け出し、頼子たちをも追い越して行った。 「ちゃん?」 残された馬超は意外に素直に返ってきたの答えに嬉しくて笑いが止まらないのだった。 「楽しみね…ならばどこへ連れて行こうか」 その後どこへ行ったかは、と馬超。 二人しか知らないのである。 過去のキリリクでもありました。場所。の続きです。
03/06/01UP
11/12/24再UP
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