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場所。
いつ頃だっただろうか、ソレに気づいたのは… 気づいたのは私だけ。 でも誰も気づいていない。 「それって、私自身で確かめろってこと?」 『そうだ、期限は1週間。1週間後の深夜12時に迎えにこよう』 そう言って、ソイツは消えた。 ソイツに出会ったのはいつもの学校帰り。 私の疑問にソイツは自分の目で確認しろと言った。 だから、来た。 ここに… 「だからってーーーーー落とすな!!ーーーー神農のバカーーーー!!」 私ってばいきなりのピンチです! ソイツ=神農にこの世界へ転送って言うのか、運ばれました。 ただ、場所が場所で、空中ですよ、空中! なら、どうなるって? 落ちるんだってばよーーーー!! 「うぎゃーーーーーー!」 は運良く湖らしきところに落ちた。 しかし、痛い… 水しぶきが辺りに飛び散る。 「………」 ふら〜っと立ち上がる。 あまりの出来事に声も出ないようだ。 だが、一部始終を見ていた者がいた。 「…なんだよ」 「あ?」 は声のするほうを見ると、金色の派手な鎧姿の男は全身ずぶ濡れでいる。 「………」 どうやらが湖に落ちた時の水しぶきがかかったらしい。 でも、はいまだ頭が働かないようである。 男はぼけっと立ち尽くしているの元へ近づいてくる。 男はを抱き上げた。 だが少〜し違う。 普通ならお姫様抱っこ、現状は荷物を肩に乗せている感じ。 そして歩き出す。 「…!?」 ようやくも気がついた様子。 「ぐわーー!何よーー」 「煩い、騒ぐな」 「下ろせーー!人を荷物みたいに〜」 「あーうるせー」 そう言うも男はを下ろそうとはせずさっさと歩く。 遠くから女性の喚く声が趙雲と頼子の耳に入る。 「な、なんだ?」 「さぁ?」 頭に?マークを載せてしまう。 段々声は大きく、近づいてくる。 「ば、馬超殿!」 二人は慌てて駆け寄る。 なにせ、馬超が嫌がる少女を担いでいるからだ。 「あ?どうした、二人とも」 「どうしたじゃないって、馬超さん人攫いは良くないよ?」 「アホ、誰がだ。コイツは…」 馬超が言う前にが声をあげる。 「頼子ー!」 自分の名前を呼ばれ頼子は馬超の背後に回る。 「ちゃん!」 頼子は驚いた、見れば少女は自分がいた世界での親友ではないか。 まさかその彼女にここで再会するとは。 思わず、涙が溢れてくる。 「ちゃん、なんで?」 「頼子、どうした?」 趙雲は涙を流す頼子の肩に手を置く。 「あ、あのね」 「落ち着いて」 「うん…」 趙雲と頼子の様子には少し眉を顰める。 「ちょっと!どうでも良いけどそろそろ下ろしてってば!」 「あ、馬超さん。その子私の友達なんです」 「そうか、ま、でもこのままじゃ下ろせねぇよ」 馬超はそう言ってスタスタ歩き出した。 「え?え!ちょっとーーー」 の声がこだましていくのであった。 はデカイ屋敷に連れて行かれた。 そこはどうやら馬超の屋敷らしい。 「ほれ、風呂に入って着替えろ。風邪引くから」 馬超はてきぱきと毛巾やら着替えを渡す。 とりあえず、は言われたとおり、冷えた身体を温めることにした。 デカイ屋敷だけあって、風呂もでかい。 は驚きつつもゆったりと湯に浸かった。 「ふぅ…けど、案外簡単に見つけたな」 はさっきのことを思い出す。 親友の頼子は見知らぬ男と何か繋がっているかのように思えた。 が気づいたソレは親友の頼子のこと。 頼子はある日忽然と姿を消した。 だが、不思議な事に何の騒ぎもなく毎日は過ぎて行った。 誰も頼子のことを気にしない。 クラスの友だち、担任、それだけでなく頼子の両親も。 それは気にしないのではなく、知らないという事。 『羽山頼子』という人物が存在しないのだ。 は延々と考えるが当然答えなど浮かぶわけないのだ。 すると、の前に一人の老人が現れた。 老人の名は神農。 神農が頼子を三国時代へと飛ばしたと言う。 そこで、は頼子を連れ戻すためにここへ来たのだ。 「さぁて、どうしようかな…」 は貸してもらった服を着て馬超の元へ行く。 馬超も鎧ではなく普段着でいる。 (思いっきり濡れてたしなぁ) 自分の所為なので少しバツが悪く感じる。 「あの、ありがとうございました。それと、ご迷惑をおかけしました」 は馬超に頭を下げた。 「別に気にしてない」 「はぁ…」 「お前、頼子の知り合いだってな」 「はい、あの…頼子に会いたいのですが」 「じゃあ城に連れて行ってやる」 馬超はあっさり承諾した。 城に着くまでの間、馬超からここでの頼子のことを色々聞いた。 頼子と一緒にいた男は頼子の恋人だという。 (連れ戻しに着たのに、彼氏がいるとは…どうしようかな) は頼子のここでの生活の事など考えていなかった。 とりあえず、他に人間には自分が来た理由は言わないようにすることにした。 案内された場所で、頼子が先に待っていた。 頼子の恋人、趙雲も一緒に。 「ちゃん!」 の姿を見るなり、頼子は駆け寄りに抱きつく。 「頼子、久しぶり…かな?」 「うん、またちゃんに会えるなんて思わなかったよ」 「そう…」 に会えた感動でか、すごくはしゃぐ頼子に対して、はイマイチの反応である。 自身は頼子に会えて嬉しいのだが、神農との話をどう切り出してよいか分からない。 「ちゃん?」 「あ、なんでもないよ」 は笑って誤魔化す。 「あのね、ちゃん。紹介するね、蜀の五虎大将の趙子龍将軍」 頼子の紹介に仕方に馬超が口を挟む。 「頼子、そんな堅苦しい言い方はよせって。頼子の男だ、アイツは」 「ば、馬超さん!」 「本当の事だろが」 趙雲は笑ってに手を差し出す。 「趙子龍です、どうぞよろしく」 「どうも…です」 も手を出し握手をする。 「ちゃん、どうやってここに来たの?」 「え?えっとね…」 「コイツは空から落ちてきたんだよ。ぼけっとしていたから俺が拾った」 「「拾った?」」 「とりあえず、コイツは俺が世話してやるよ」 馬超はそう言って、を連れて行く。 「ちょっと!私はまだ頼子に話があるってのーー!」 先ほどみたいに喚くだった。 「私もちゃんとゆっくり話がしたかったのに。馬超さんってば」 「気にいったのではないか?」 「馬超さんがちゃんを?」 「前に気の強い女性が好みだと言っていたから」 「そんな話してたの?子龍は」 「向こうが言ってただけだよ」 「ふーん」 「あれ、頼子?」 ぷいっと頬を膨らませて行ってしまう頼子を急いで追いかける趙雲だった。 が来てからすでに5日が経つ。 運が良いのか悪いのか、神農の仲間という伏犧や女禍とは顔を合わすことがなかった。 どうやら今はいないらしい。 なので、本当の事情を知っているのはただ一人。 いつ話を切り出そうかと悩むだが上手くいかず時間だけが過ぎる。 それと言うもの… 「、これ頼むな…あ、関羽殿の所だからな」 (この野郎空) の事を世話してやると言っておきながら逆に小間使いをさせているのだ。 「、姜維の所から頼んでおいた書簡とって来い」 (ムカツク!) 無言で執務室を出るが、その反面勢いよく扉を閉める。 「なんで私がアイツのパシリなのよ!」 最初のうちは馬超の屋敷においてもらったり、迷惑を掛けたと思ったから素直に 雑用をこなしていた。 だが、雑用は日々増えていく。 「全然、私の用件が済まないっての!」 ふと庭を見ると、趙雲と頼子の姿が映る。 仲睦まじく、楽しそうな二人。 頼子はここではお姫様扱いで隣には素敵な男性。 他のものからも慕われている。 あんな姿を見ると、たった一言なのに『帰ろう』って言えない。 (私は何しに来たんだろう…) 頼子は長くここにいる所為か違和感なく生活をしている。 だが、たった5日しかいない自分には『慣れない』の一言である。 TVはない、携帯も使えない、電気もガスもない。 何よりも現代人のにとって文化の、生活のレベルの違いに耐えられない。 「…ポテチ食べたい…コーラ飲みたい…今週のワンピ見てない…新作のゲーム早くプレイしたい…あ、もうすぐ期末テストあるし…はぁ」 愚痴ばっかり出てしまう。 「ちゃん!」 頼子がの姿を見つけ手を振る。 だが、苛々が溜まっているには笑って答える余裕がなくなり何も言わずに歩き出す。 (帰る、絶対帰る!もうこんな世界ヤダ!) 馬超の用件も済ますことなくは城を出る。 「やってられっか!今すぐ帰るっての!」 とりあえず、一番最初に着いた場所、あの湖に行って見る。 たまりに溜まった鬱憤を晴らすかのように、は大声を出す。 「神農ー!私、帰りたいから元に戻せーー!」 しかし反応はない。 「くそじじぃ!出て来いっての!」 … …… ……… やはり反応はない。 「」 名前を呼ばれ振り向くと馬超と趙雲がいた。 「お前な、用事すっぽかして何してんだよ」 「………」 「殿。どうかしたのですか?頼子が沈んでしまって…」 「………」 二人に聞かれるもは黙っている。 「だんまりかよ…ほら、行くぞ」 馬超はの腕を掴むがはそれを振り払う。 「おい」 は馬超ではなく趙雲を見る。 「趙雲さん、貴方に話があります」 「私にですか?」 「はい、率直に言います」 趙雲はの視線から敵意みたいなものを感じた。 それは馬超も思ったらしく黙ってを見る。 「貴方は、頼子が何処から来たのかって事も知っているのですよね?」 「えぇ、頼子からすべて聞きました」 「私は頼子を連れ戻しに着ました」 「!!」 「頼子にはまだ話していません。と言うより話せない… 貴方と一緒にいる頼子は幸せそうだから。けれど、明日には答えを出さなくてならない。 私が強引にでも頼子を連れて帰ると言ったら、貴方はどうしますか?」 の問いに趙雲は悩む事無く即答する。 「阻止しますよ」 「へぇ……」 「貴女が頼子の大切な友人だとしても」 趙雲は真剣な眼差しでを見据えるが、ふっと穏やかに笑った。 「ですが、頼子がそれを望むなら私には止める事などできませんよ。 貴女と再会した時の頼子は本当に嬉しそうで、貴女との思い出話などを楽しそうにするのです。時折、家族の話をする時に寂しそうに笑うのです」 「趙雲、お前……」 「元の世界に帰ることが頼子にとって一番良いのではないかと思うのですよ…」 「そうですか。なら、私は頼子にちゃんと話します」 趙雲から目を逸らしはそう言った。 自分はバカなことを聞いたのではないかと。 でも、笑った。 お互い、頼子のことばっかり心配していることに。 結論は出た、の中では。 その晩、は頼子にすべて話した。 「明日の深夜12時に神農が迎えに来る。帰るならその時が最後だと思う」 「ちゃん…」 「最初はアンタを連れ戻す事しか考えていなかったけどさ。今は違うよ。頼子の好きにしなよ」 「私は…」 「今は聞かない。本当に帰る気があるなら湖に一人でおいで。待ってるからさ… でも、嫌なら、無視して寝ちゃってよ。私のことも見送りになんか来なくていいからさ」 はそう言って立ち上がる。 部屋を出る際に一言言った。 「趙雲さんはさ、頼子の自由にって言ってたけどさ。やっぱりアンタには傍にいて欲しいって思ってるよ」 それはもう、頼子にはここに残れと言っているかのようだった。 「じゃあね…」 最後の晩、は馬超の屋敷には戻らず、趙雲に用意してもらった客室で寝た。 馬超の事は嫌いではなかったが、もう帰る事を決意したは余計な思い出は作りたくなかったのだ。 残り時間はあとわずか。 は誰にも会わずに一日を過ごした。 そして予定時間である少し前に湖へと着いた。 月がとっても綺麗でしばらく座って眺めていた。 「ま、来るわけないってね」 は立ち上がって伸びをする。 すると背後に人の気配がする。 「、俺にも黙って帰るつもりなのか?」 馬超が立っているが、は振り返らずに答える。 「薄情かもしれないけどね」 「俺が帰るなって言ったらどうする?」 「帰るよ」 即答するに馬超は苦笑する。 「酷いな」 「だって、私はこっちの生活にあわないもん。電化製品がないと生きてけないのさ」 (…俺は道具以下かよ…) 「馬超のこと、嫌いじゃないよ。短い間だったけどありがとね」 「…初めて名を呼んでくれたな…」 「そうだっけ?」 「いつもアンタ呼ばわりだったろ」 「そうかもね…そろそろ時間だ」 絶対に振り返ろうとしない。 ただ淡々と答えるだけだ。 「ちゃん」 は驚いて振り向いた。 きっと来ないだろうと思っていた頼子の声がしたのだから。 頼子だけでなく趙雲も一緒にいる。 「ちゃん、私、ここに残るけど…ちゃんとちゃんとお別れできないのは嫌だから」 「頼子…」 「頼子は私が守り通します」 趙雲がそう言って頼子の肩に手を置く。 二人が幸せそうに笑うのを見ても笑った。 「頼子が元気で過ごせるならそれでいいよ…あ」 時間が来たようで、月から光が降りてくる。 どうやらこの光の中に入れば良いらしい。 「じゃあね、頼子。趙雲さんも馬超も元気でね」 は光の中に入ろうとする。 だが、馬超が頼子の腕を掴んだ。 「馬超?」 「帰るなよ」 「さっきも言ったじゃん。ここでは私、生きてけないって」 「そんなことないだろ?頼子はちゃんと暮らしてる」 光は段々薄くなっていく。 馬超をじっと見つめるに、馬超は仕方なく手を離す。 「元気でな」 「馬超もね」 光へと足を踏み入れる。 の姿が薄れていく。 「「あ」」 もう消えてしまうといった時に、馬超はをこちら側に引っ張った。 同時に光は消えてしまった。 「子龍…」 「頼子…」 事の成り行きを見ていた二人はどう答えて良いか分からない。 「ば、ば、馬超!」 「へへっ実力行使」 「ざけんなーーーー!!」 は力いっぱい叫んだ。 とは逆に馬超は嬉しそうにを抱きしめる。 「私のこと苛めて楽しいっての!人の嫌がることするな〜」 「好きな奴を苛めたくなるって心理だろうな」 「どこがだ!」 「なんだ、信じないのか?お前に一目惚れなんだぜ、」 「だ、誰がだーー!神農!私は帰る気満々だってば〜」 の声は空しく闇夜に消えていった。 残された頼子と趙雲は二人のやり取りに深くため息をつくが、どこか嬉しそうである。 「ちゃんとずっと一緒にいられるみたいだね」 「殿には悪いが、楽しめそうだな」 「そうだね」 その後、城ではより一層騒がしく、かつ笑いが絶えない様になった。 小恋の番外編であり馬超編です。
03/01/03UP
11/12/24再UP
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