ドリーム小説


「え……そうなの?」

「なんだ、知らなかったのか?」

その話を聞いたのは12月14日だった。

「俺はてっきり知っているかと思ったけどな」

「知らなかった…まったくもって初耳」

(うわ。浮竹さん、かわいそうだな……)

一護は目の前で少し呆然としているを見てそう思った。
暖房の効いた温かい喫茶店で二人はいた。
もうすぐクリスマスだということで、仲間たちで集まろうって話をしていたのだ。
もう少しすれば織姫や石田たちも来るだろう。
時間に余裕があったたちは先に喫茶店に入って待っていた。
クリスマスの話をしていたが、そう言えば…と一護が語ったことがにとって大問題となっていた。

「去年、その前はどうしたんだよ」

「…別にどうもしなかった。なんか一護の方が詳しそう」

「俺?…あ、あー確かにルキアから聞いたし、去年は俺も連れて行かれた」

強制連行という形で。

「ほら、やっぱり」

恨めしそうに一護を軽く睨む

「そう言われてもな、俺も驚いているんだけど」

「まったく知らなかったことに?」

「そう」

それは仕方がないと言えるかもしれない。
一昨年はそんな事を考えている知る余裕がなかった。
去年はまったく繋がりすらなかった。
何せ、夏に再会したのだから…二年ぶりに。浮竹と。

「まあ、いいや。今年は知ったわけだから、なんかすればいいだろ」

「なんかって?」

「俺に聞くな。自分で考えろよ」

「えー協力してくれたっていいじゃん。初めてなんだし、わからないもんー」

「なんでもいいとは思うぞ。お前からなんて知ったら浮竹さん喜ぶだろうし」

「そうかなぁ……浮竹さんの好みっていまいちわからないんだけど?」

「俺も知らないっての」

「はあ…誕生日か、浮竹さんの」





【溢れるくらい】





12月21日は浮竹十四郎の誕生日だという。
何回目なのかは知らないが。
としては何かプレゼントはしたいと思うのだが、何を贈ればいいのかわからない。

「毎年、隊長自ら盛り上げていらっしゃるぞ」

こっちにやってきたルキアに改めて聞いてみた。
ここは一護の部屋。
とりあえず、先日のクリスマスについては24日に黒崎家集合が決定となった。

「浮竹さん、誕生日ではしゃぐ人なの?…想像つかないんですけど」

「そう言う意味ではない。前日の20日が日番谷隊長の誕生日でな」

「へぇ、冬獅郎君の誕生日か」

「20日から翌日21日まで続けてお祝いしているのだ」

浮竹は自分よりも日番谷の誕生日ということで動いているようだ。
十三番隊としては浮竹を一番に祝いたいので、翌日は一生懸命に盛り上げ騒ぐらしい。

「なんかそれは想像できる」

十三番隊は浮竹を超が付くほど慕っているから。

「今年もそうなのかな?」

「ん。そうだな…多分そうなりそうだと思うが…」

ルキアが見た限りでは仙太郎や清音が忙しなく動いていたし。
浮竹自身も日番谷の誕生日プレゼントは何がいいかと考えていたようだし。
また今年も合同でやるのだろう、乱菊がちょくちょく十三番隊に来ているのも目撃した。

「確かに去年はすごい騒ぎだったな」

一護は去年の光景を思い出しうんざりした顔をする。
誕生日会をやるのは構わないが、後半になればなるほど酒が入る者たちがいて。
誕生日を祝ってもらっているはずの日番谷のこめかみが怒りでピクピクしていたのが印象的だった。
浮竹は酔ってはいないものの、楽しそうで何よりだとニコニコ笑っているだけだったし。

「浮竹さん、結構喜んでいるみたいだったけどな」

「毎年かなり凝っているからな」

十三番隊のこういう時の結束は固い。
浮竹を喜ばす為ならと苦労は惜しまないようだ。

「ふーん。なんかすごいね」

「他人事みたいに言うな。お前も隊長に何か贈るのだろう?」

「…か、考え中。何を贈ればいいのかわからないもん」

浮竹ならば物に不自由はしていないはずだ。
が用意したものならば浮竹は喜ぶと周りはそう言うが。





数日後、いまだ浮竹への誕生日プレゼントは思いつかずはずっと悩んでいた。
日だけが簡単に過ぎていくので虚しくなってくる。
石田に頼んで何か手作りのモノでも教わろうかと思ったのだが時間が少なすぎた。

「………」

「こらこら。ちゃんと前を向いて歩かないと転ぶぞ」

「え」

目の前に影ができた。そう思ったら浮竹が目の前にいた。

「浮竹さん!」

「やあ。君。何難しい顔をしているんだい?」

死覇装を着ているので義骸ではないようだ。

「今日はどうしたんですか?」

とりあえず、近くの公園へと向かいベンチに腰掛ける。
寒いってこともあってほとんど人影はない。

「ああ。ちょっと君に訊ねたいことがあってね…その〜」

珍しく歯切れが悪い浮竹には首を傾げる。

「浮竹さん?」

「その。今度の木曜日、君は暇か?暇ならまた現世を案内してもらいたいんだ」

「木曜日ですか?その日は…」

木曜日。12月21日。その日は浮竹の誕生日じゃないか。
暇なら現世を案内してくれと言うのはどういうことだろうか?

「案内って、平日だから私は学校がありますよ?」

冬休み直前ということもあって、授業はなく半日で終わるが。

「ん。ああ、深い意味はない。なんとなくだ」

「なんとなく…ですか」

いつもならばすぐに了承してしまうところだが、この日に関しては迷ってしまう。
何せ、浮竹の誕生日。
一護やルキアの話では十三番隊では浮竹のためにとあれやこれやと用意しているらしい。
そんな彼らのことを思うと素直に頷けなかった。だから。

「すみません。私、その日は用事があるんです。別の日なら、土日なら開いていますよ。
それに日曜日は一護たちとクリスマスパーティーしようってことになっていますから」

浮竹もどうかと逆に訊ねる。

「そうか。用があるなら仕方ないな。また今度にしよう。木曜日が良かったんだが」

少し寂しそうな顔をした浮竹に胸がつまる思いがする。
クリスマスパーティーも行けたら顔を出すよと浮竹はそれだけ言って帰ってしまった。





「だからって。なんで俺んちに来るんだよ」

ブスッとした顔で一護に出迎えられた。

「だって……用事あるって言っちゃったもん」

上目で唇を尖らせている
浮竹の誕生日当日。昼間は学校に行っていたものの、夕方近くになって一護の家へと行った。

「浮竹さん。お前と過ごしたかったんじゃないのか?だから今日暇か?って聞いたんだろ」

なんだかんだでに甘いというか優しい一護は部屋にいれてくれた。
もう顔なじみになっている黒崎一家は夕食も一緒に食べようと言ってくれた。

「そうかな?って思ったけど…」

一護に淹れてもらった珈琲を一口飲んでは溜め息をつく。

「ルキアも言ってじゃん。この日の為に十三番隊は一生懸命用意しているって」

「言ったけどよ」

「なんか悪いじゃん。大好きな隊長さん独り占めしたら…いたっ」

ポスンと丸めた雑誌で頭を殴られた。
何をするのだと軽く一護を睨む。

「あのよー普段お前ら会えないんだから別にそんなこと気を使う必要ねーんじゃねーのか?」

「一護…」

「あんま俺のとこに駆け込むなよ」

「嫌ですか?迷惑ですか、黒崎さん」

「嫌とか迷惑なんて思ってねーよ。ただ」

ただ?
一護までも溜め息を吐く。
友だちに頼られるのは悪くない。昔からそうだったし、なんとかしてやろうって気持ちにもなる。
だが、相手がの場合は少し変わってくる。
自分よりも何十倍も経験もある大人だと思っている浮竹が、意外に子どものように拗ねてしまうのだ。
なんでもないよ?俺は気にしていないよ。本当に仲がいいなあ、君たちは。
なんてことを笑顔で言っているのが物凄く怖い。

(滅茶苦茶好きなんだなぁ、のこと。浮竹さんは)

その辺のこともうちょっと気づいてやれよと一護は思う。

「私だって浮竹さんのこと祝ってあげたいって思ったけど」

思ったけどとベッドに置いてあったクッションに顔を埋める。

(結局同じかよ…)

も十分同じ気持ちだと。
確かに嫌いでこんなことをしているわけではないわけだし。

「とりあえず飯食ってくんだろ?その後送っていってやる」





一護に家まで送ってもらい、何をするわけでもなくのんびり部屋で過ごしていた。
ベッドに寝転がりぼーっと。
時刻はすでに22時を回っている。
浮竹にはいつも言われる。

「もっと我がままを言ってくれてもいいんだぞ」

と。その時は頷くのだが実際我がままなど言えないでいる。
その時決まって浮竹は微苦笑している。
でも一護には我がままを言ってしまっているように思えるから。
これはどうなのだろうか?
我がままと言うか甘えとも言えるが。

「やっぱり。一言ぐらい言えば良かったなぁ…おめでとうって」

できれば今日中に。
だが無理だ。今からでは間に合わない。
生きている人間のが尸魂界へ行くには色々準備が必要だから。

「…会いたいなぁ、浮竹さんに」

ごろりと寝返りをうつと声が聞こえた。

「俺も会いたいと思ったのだが」

「浮竹さん!」

スーッと窓が開きカーテンが揺れた。

「夜分遅くにすまない。どうしても今日中に君に会いたくてな」

死覇装姿の浮竹が立っている。宙に。
何も珍しいことではないが、まさかいるとは思わず何度もは瞬きをする。

君」

「は、はい!」

「入ってもいいかな?…その女性の部屋に夜遅くに入るというのは悪いと思うのだが」

と話がしたいから。
は浮竹を招き入れる。
律儀だなと苦笑しながら。死神なのだから壁など関係なく入ることができるのに。
部屋の中に入ったはいいが、どうして良いかわからず浮竹は戸惑う。

「今日。楽しかったですか?浮竹さん。毎年誕生会やるって聞きましたよ」

「楽しかったが…楽しくなかった」

「はい?」

浮竹はギュッとを抱きしめる。

「一番祝って欲しい人が側にいなかったからな」

「浮竹さん…」

「だが、なんとなくわかっていた。君は遠慮したのだろうなと」

浮竹の為に準備をしている隊員たちの為にと。

「だって、十三番隊の人たちは浮竹さんが大好きだから。楽しみにしているのだろうなって」

「まあ、嬉しくは思うけどな」

「大好きな隊長さんを私が独り占めするの申し訳ないし」

もっと独り占めしてくれてもいいのに。浮竹は苦笑する。

「そう言ったら一護にそんな気を使うなって言われましたけど」

「また一護君か。相変わらず君は一護君には本音を話すんだな」

嫉妬してしまうよ。

「あ、えっと……ごめんなさい」

「いいさ。だから、俺のほうが素直になってみようと思った」

だから、来た。
夜遅いが、構わず来てみた。わがままを言いに来た。

「今日は俺の誕生日なんだ」

少し抱く力を強める。

「だから、君から贈り物を貰っていいかい?」

「私があげれるものでなら」

「うん。だったら、我がままが欲しいな。君が俺にもっと我がままを言ってくれると嬉しい」

「そ、それは」

前にもそんな話になった。
二年も間を空けずに会いたかったと。
だから今度はそんな寂しい思いをさせないよう、浮竹がに会いに行くと約束をした。
それだけじゃ足りない。
もっと沢山から色んな物を貰いたい。

「逆じゃダメですか?」

浮竹の胸に顔を埋めながらが言った。

「逆?」

「一つだけ浮竹さんの我がまま聞いてあげます」

長いことそういう風にしてきたから、そんなすぐに自分から我がままなど言えないし。

「なんでもいいのか?」

「はい」

「じゃあ…お正月は一緒に過ごそう」

そんなんで良いのかとは顔をあげる。
浮竹はの額へとそっと口付ける。

「初詣に一緒に行きたい。雑煮を一緒に食いたい。京楽が君に着せたみたいに俺も君に似合う晴れ着を着せてやりたい」

「う、浮竹さん。一つって」

「まだあるぞ。一日何もせずに君とのんびりすごしたい。その時は膝枕をしてもらいたいな」

これで何個目だろうか?

「あとは…と散歩もしよう」

「その口ぶりだと、私はお正月を尸魂界で過ごすってことですか?」

また増えた。

「ああ」

ニッコリ笑う。一つだけと言ったのに。そんな事はお構いなしに。

「一つだけって言ったのに、私」

「俺は我がままだからな。君は当然知っているだろう?」

「そうでした。浮竹さんは我がままでした」

はくすくすと笑った。

「ダメかな?」

我がままだと言ったのに、急に自信がなさそうに訊ねてくる。

「ダメじゃないですよ。私の我がまま聞いてくれますか?」

「ああ」

「私もお正月は浮竹さんとのんびり過ごしたいです。尸魂界に旅行ってことで」

「ああ。決まりだな」

「浮竹さん」

「ん?」

「お誕生日おめでとうございます」

「ありがとう、君」

まだ時間はあるから。
だからもっと我がまま言って欲しい。
君の我がままなんて可愛いものだ。








06/12/21UP
11/11/20再UP