【何気ない一言と】





「ウチの隊は他とはなんか違うな」



誰かがそんな事を呟いた。
護廷十三隊。十三もあれば役割や隊長の性格などで様々な特徴と言うのが出るだろう。
わかりやすく言えば、十一番隊は戦闘集団。
しかも最強とまで言ってしまうほど。

戦い=喧嘩。

負けは死ぬと言う事。

それと逆なのが九番隊。
別に最強最弱と言うのではなく、九番隊の隊長が戦いを好まない人なので比較的穏やかだ。
同じように穏やかと言うのか、十一番隊から煙たがられているのは四番隊。
各隊の救護補給を専門とするところだ。
戦闘には向かないために最弱とまで言われてしまっている。


あとは・・・特にこれと言って目立つものはないと思う。
隊長、副隊長が変わっているとか言うのは別として。



それでも誰かが言った“他とは違う”と言うことが頭に残った。



「失礼します!」

雨乾堂。
ここは十三番隊の隊首室。
お池の真ん中に建てられた場所。
これを見たら、まぁ他とは違う?とか思ってしまうが。


朽木ルキアはこの十三番隊に所属している。
ルキアは隊長である浮竹のもとへお茶持っていく。
なんとなく最近の自分の仕事の一つとなっている。

「おぅ朽木か」

浮竹の他に副隊長の海燕もいた。
海燕に軽く頭を下げてから茶の仕度をする。
多分彼もいるだろうと思って、最初から湯飲みは二人分用意していた。

二人は何か難しい話をいているようだったので、なるべく邪魔にならないように静かに行う。

そして、茶を淹れて二人の前に置き下がろうとしたが。

「朽木も少し休んでいけ」

「は、はあ…」

「隊長が良いって言ってんだから、のんびりしとけ」

両方に言われてしまうとルキアも言わざるをえない
かと言ってこの場所でのんびりなどとできないだろう。
とりあえずは、二人から少し離れた場所で正座でもしてみた。

「あ〜?お前、なんでそんなところにいんだよ」

「え、あ、その…」

「海燕、嚇すな」

「嚇してなんかいないっすよ」

「その、お二人の邪魔をしてはいけないと思い…」

ルキアの言葉に浮竹はニコリと笑む。

「邪魔だなんて思わないぞ」

「しかし」

「とにかく気にするな。そうだ、朽木も食べるか?美味いぞ」

普段からここには菓子の類が常備されている。
浮竹自身が食べるためのと、ここへ来たお客さんのために用意してあるということ。
浮竹はルキアの手にポンと饅頭を乗せた。

「隊長〜俺にはくれないんすか?」

「なんだ、欲しいのか?しょうがないな」

海燕に饅頭の入った箱を差し出し、海燕は一つ手に取る。

「へへ、どうも。あ、あともう二つください。都にもあげるんで」

「一つは?」

「俺が都と一緒に食うんですよ」

「じゃあ、今のそれはなんだ?」

「ケチケチしないでくださいよ。これは今ここで朽木と食うものです」

そう言って海燕はパクリと饅頭を頬張る。
ルキアも貰ったものだからと、一口食べる。
食べると甘い餡子が沁みるように口内に広がる。

「どうだ、朽木美味いだろ?」

「はい。美味しいです」

ルキアが控えめにだが笑んだ。
中々笑うことがない部下の姿。
浮竹も海燕も見ることのできたルキアの笑みに少し安堵した。


なんとも不思議な空気。
隊長と副隊長が目の前にいるのに緊張は多少するが穏やかな空気で満ちている。

確かに。

「・・・・他の隊とは違うような・・・・」

「ん?何がだ?」

思わず口走った言葉にルキアはぶんぶんと首を横に振る。
二人は特に追求することもなく流す。

ルキアは急いで饅頭を食べて立ち上がる。

「あ、ありがとうございました。そろそろ私は戻ります!」

「おぅ、お茶ありがとうな」

深々と頭を下げるルキア。
海燕も立ち上がる。

「俺も行きます。また後で書類お持ちしますんで」

「あぁ、すまない」

二人して雨乾堂を出た。
並んで歩く。
ふと、海燕がルキアに訊ねた。

「さっきの…他の隊と違うって何がだ?」

「ひっ!そ、それは…あの……気になさらないでください」

「バーカ。お前のその態度を見れば気になるってもんだ。ほら、吐け」

言うまでしつこく聞かれそうな気がしたので、ルキアはあっさり白状した。
自分も耳にした話で、それとなく頭に残っていた程度。
そして、ふと浮竹と海燕を前にして思ったことを。

「はあ〜そう言うもんか?」

「な、なんとなくです」

「あんま厳しい上下関係じゃないわな」

席官でも気さくに下の者を見てくれる。
でもルキアは朽木家の者と言うだけで多少扱いが違い、それが引っかかってはいるが。

「浮竹隊長のお人柄だと思うのですが」

「まぁ、あの人少し抜けてるところあるしな」

「そ、そんな風には言ってません!」

「あ、でも朽木の言い方だと、俺もそこに含まれるってことだよな?」

「へ…あ、そうですね……」

「おい、その間はなんだ」

海燕は顔をルキアに近づけ軽く睨みつける。
拗ねたように子供みたいに。

「い、いえ!別に」

スッとルキアから離れて海燕は言う。

「前に、隊長のことをおとっつぁんって呼んだ事あったな、俺」

「え゛」

「ちなみに卯ノ花隊長がおっかさん。そんな感じしねぇか?」

「はぁ……」

「十三番隊つー大きな家族みたいな」

家族。
ルキアにとっているようでいないもの。
一昔前なら流魂街で生活した頃一緒にいた友だちがそうだったかもしれない。
今は朽木家の養子となって何不自由なく暮らしてはいるが、あの頃のような思いがない。
なので、今ひとつピンと来ない。

「卯ノ花隊長は四番隊だから少し意味が違うけど、ウチの隊長ってそんな感じするだろ」

「…隊長が父ですか…」

「ピンとこねーか?なら、隊長が親父だったらいいなって思ってみ?それなら少しはわかるだろ」

「隊長が父親だったら……」

悪い気はしない。
浮竹の性格は嫌じゃないし、あの人の性格ならば自分の子どもがいたら可愛がりそうだし。
考えているルキアの顔を見て海燕が改めて問う。

「な?」

「隊長が父だったらいい…かも」

ポツリと呟いた後に思わず急に恥ずかしくなった。

「お前も十三番隊の家族の輪にいるんだからな、その辺ちゃんとわかれよ?」

「は、はい!」

単純に嬉しかった。
じわりと沁みこんでくる、温かい気持ち。
家族がいるようでいない自分。

「だから、たまに隊長のことおとっつぁんって呼んでいいぞ」

「え…それは流石に」

ルキアは微苦笑する。

「隊長は知っても嬉しくないかもしれませんよ?」

子沢山のお父さん。
言われた浮竹は困るだけかもしれないが。

「んなことねーだろ。試しに呼んでみりゃいいじゃねーか」

「…海燕殿にお任せします」

丁寧に断り、ルキアは歩調を速める。

「あ、おい!朽木ぃ!」

「私は次の仕事がありますので、失礼します!」

ニッっと笑ったルキア。
逃げられてしまった感じもするが、海燕は悪い気分はしなかった。

「あんな顔もできるんじゃねーか…ったくよ」

後頭部を軽く掻いてから海燕も次の仕事にと気合を入れた。






06/02/25UP
11/11/20再UP